BMW、ダイムラー、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ボルボなど、国際大手自動車メーカーによるAutoTech(オートテック)への投資が拡大中だ。「自動運転技術」や「先進運転支援システム(ADAS)」に代表されるAutoTechとは、自動車運転の安全性や走行性の向上を目指す先端技術を指す。

各社の投資戦略は大手企業との提携からスタートアップの買収、資金調達ラウンドへの参加まで様々で、分野もAI(人工知能)からライドシェアまで広範囲におよぶ。CBインサイツの調査によると、2017年1月~11月にかけてのAutoTechへの投資は、前年のほぼ3倍に匹敵する39.9億ドルに達している。

大手自動車メーカー間で加熱するAutoTech投資の特徴や、スタートアップの顔ぶれを見てみよう。

GM――AV技術スタートアップを10億ドルで買収

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

GMはライバル自動車メーカー同様、次世代自動車開発からライドシェアまで、自動車産業の未来を見据えた手堅いAutoTech投資に重点を置いている。

2016年3月に自動運転技術スタートアップ、クルーズ・オートメーション(Cruise Automation)の買収を発表。最終的な買収金額は10億ドルという大型買収となった(クランチベース より)。

2013年にカリフォルニアで設立されたクルーズ・オートメーションは、GMの傘下に入る以前にも、Yコンビネータ(Y combinator)やスパーク・キャピタルといったベンチャーキャピタルから、総額1880万ドルを調達した期待の新星だ。

GMは新生クルーズ・オートメーションにさらに1400万ドルを投じ、開発施設用に1100人を新規雇用 するなどAV開発に大いなる意気込みを見せているが、具体的な完成時期については明確にしていない。メアリー・バッラ会長兼CEO は昨年12月、「自社が世界で初めて完全AVの量産を実現する企業になる」とリンクトイン(LinkedIn)の投稿 で宣言している。

ロイターが事情に詳しい関係者から入手した情報 によると、ライドシェア企業リフト(Lyft)と提携し、2018年からAVの開発・試験に本腰を入れる可能性が高い。GMは開発プロジェクトの一環として、2016年にリフトの株の9%を5億ドルで買収している。リフトが保有する膨大な道路関連データが、AV開発に役立つと見込んでの動きである。

投資部門GMベンチャーズ( Ventures)を通し、EVバスメーカーのプロテラ(Proterra)、HD地図技術やAV用ソフトウェアを開発するアッシャー(Ushr)など、AIスタートアップへの投資にも積極的だ。

ライドシェア分野にも参入しており、Uberの競合スタートアップ、サイドカー・テクノロジー(SideCar Technologies)の知財や人材を2016年に5億ドルで買収。独自のカーシェアリング・サービス「メイヴェン(Maven)」を開始した。同年、北京のカーシェアリング・スタートアップ、Yi Wei Xing にも投資している。

フォード・モーターズ――Goole、Uberの技術者によるロボティクス・スタートアップに投資

フォードのAutoTech投資戦略からは、GMを上回る堅実さが感じられる。すでにある一定の実績を築いたスタートアップと提携するなど、低リスクで効率的な戦略を用いている。

今年2月、今後5年間にわたり、ペンシルバニア州のAIスタートアップ、アーゴ(Argo) AIに10億ドルを投資すると発表 。アーゴのロボティクス技術をベースに、2021年までに独自の完全AVをレベル4(高度自動運転)にまで進展させる予定だ。レベル4とは高速道路での走行や天候など特定の状況下のみ、加速・操舵・制動といった操作が自動化され、ドライバーが運転に全く関与しない状態を指す。

アーゴはGoogleやUberのAV開発チームでハードウェア開発ディレクターを務めたブライアン・セールスキー氏 や、UberでAV開発を手掛けていたピーター・ランダー氏などが2017年に立ち上げた。

2016年にもイスラエルのSAIPSを買収している 。SAIPSは主に機械学習技術をベースにしたアルゴリズムエンジンの設計や開発を専門とするスタートアップだ。フォードはSAIPSの技術を、AVの異常検索や検出オブジェクトの追跡に利用する意向を示している。具体的にはAV上のセンサーから読み込んだデータを、SAIPSの技術が仮想ドライバーシステム向けに変換する(テッククランチより )。

投資部門によるスタートアップへの投資はそれほど活発ではない。フォード・ベンチャーキャピタル・グループ(Ford Venture Capital Group)を通した出資先は2005年、ナビゲーション・ソフトウエアおよびサービス企業デ・カータ(deCarta)のみ 。デ・カータは2015年Uberに買収されている。

ボルボ――3億ドルを投じてUberとAV共同開発、独自のAVソフト開発も

AutoTech投資では比較的控えめという印象を受けるが、独自のペースと方針で着実に成果を上げている。

2010年にフォードの傘下から離脱したのを機に次世代自動車開発に乗り出している。2016年にはUberとのAV共同開発プロジェクトに3億ドル を投資。スウェーデンの自動車安全システム企業オートリブ(Autoliv) や、カリフォルニアの半導体メーカー、ナビディア(Nvidia)とも提携関係を結んでいる。ナビディアは主にAIのプロセッサユニットの設計を手掛けており、今年5月にソフトバンクが株の40%(40億ドル相当)を取得 した。

ボルボはナビディアのAI 車載コンピューティング ・プラットフォーム「Drive PX」をベースに、独自のAVソフトウェアを開発中だ。

ハカン・サミュエルソン.CEOは昨年7月のブルームバーグのインタビューで 、「高速道路を走れる完全AVを2021年までに完成させたい」と野望を語っている。価格帯は1万ドル前後を予定している。

BMW――インテルなど大手テクノロジー企業と提携、スタートアップへの投資も拡大

AV開発に向け、スタートアップの買収に精力的なライバルメーカーとは対照的に、BMWは組織内にAV部門を開設し、インテル(Intel)やモービルアイ(Mobileye)といった大手テクノロジー企業と提携関係を結び、完全自動運転車の共同開発を行うという戦略を打ちだしている。製造時期は2021年が目標。

モービルアイは本社をオランダに置き、衝突防止補助システムなどの技術開発をイスラエルで行っているスタートアップだ。2017年3月、インテルに150億ドルで買収された。

この共同開発グループは2016年に設立され 、翌年にはGMからスピンオフした自動車部品企業デルファイ・オートモーティブ(Delphi Automotive) 、ドイツのタイヤメーカーであるコンチネンタル、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が新たに加わった。 BMWがAVに投資している金額は明らかではないが、2011年に立ち上げた投資部門BMWアイ・ベンチャーズ( i VENTURES) を通し、オートテックへの投資にも積極性を見せている。今年7月には、AI安全運転支援デバイスを開発するナウト(NAUTO)のシリーズB資金調達ラウンドに参加。ソフトバンクとグレイロック・パートナーズが主頭出資企業となったこのラウンドで、ナウトはBMW、トヨタ、GMベンチャーズなどから総額1.6億ドルを獲得した。

ほかにも次世代自動車融資・レンタルのフェア(Fair)、 カーシェアリング・アプリのスクープ・テクノロジーズ(Scoop Technologies)、自動車修理工場の仲介プラットフォームを提供するカーロビー(Caroobi )など、数えあげると切りがない。

BMWアイ・ベンチャーズの投資規模は年々拡大し、2016年には5倍に匹敵する5億ドルに達している。優秀なスタートアップを確保する手段として、オフィスをニューヨークからシリコンバレーに移転させるという気合の入りようだ。

ダイムラー――世界最大の世界最大の新エネルギー車市場、中国に注力

ダイムラーのAutoTech投資は、欧米からアジアまで、次世代自動車開発からEV電池生産、ライドシェア・サービスまで広範囲にわたる点が特徴だ。特に世界最大の世界最大の新エネルギー車市場である中国に力を入れることで、同国の自動車市場発展を狙うと同時に、自社の新エネルギー車開発も促進する意図が見える。

またライバルのように独自のベンチャーキャピタル子会社を所有する代わりに、直接あるいは間接的に活発な投資を行っている。

中国関連の投資としては、大手自動車メーカー、北京汽車(BAICモーター・コーポレーション)との提携関係が知られている。ダイムラーは今年5月、北京汽車との戦略的提携 関係を強化し、中国のAVインフラ構築に向けて7.3億ドルの投資を行うと発表(ロイターより )した。2005年に共同設立した北京メルセデスの製造設備更新や新エネルギー車の生産、EV用電池の工場建設にあてる。さらには北京汽車の子会社、北汽新能源のEV開発に出資するという計画だ。

今年7月にはAV用ソフトウェアを開発している北京のAIスタートアップ、モメンタAI(Momenta.ai)の資金調達シリーズBに参加 。NIO キャピタルなどとともに総額4600万ドルを投じた。「5分で充電が完了するEVバッテリー」を開発するイスラエルのスタートアップ、ストアドット(StoreDot)の資金調達ラウンドでも筆頭出資企業を務め、総額6000万ドルの獲得に成功している。

ライドシェアや配車サービス関連の投資先は、「中東のUber」と称されるドバイ発のライドシェア、カリーム(Careem) 、ハイヤー予約アプリのブラックレーン(Blacklane)、株の60%を取得している タクシー配車サービスのハイロ(Hailo)など。カリームには日本の楽天も出資している。

2012年から出資していたドイツの配車アプリ「マイタクシー(My Taxi)」を2014年買収。2016年には英国のヘイロー合併し、欧州最大規模の配車サービスとなった。今年2月にはギリシャのタクシービート(Taxibeat)を傘下に引き入れるなど、さらなる拡大を続けている。

投資範囲は欧州だけにとどまらず、今年9月にはニューヨークでライドシェア・サービスを展開するヴィア・トランスポーテーション(Via Transportation)に2.5億ドルを投資。この資金調達ラウンドには、著名投資家集団が立ち上げた「ラ・メイゾン・カンパニー」も参加した。

ロボティクス技術を活用した自動宅配サービスにも強い関心を示している。1月にはカリフォルニアのスターシップ・テクノロジーズ(Starship Technologies )のシードラウンドで筆頭投資企業を務め、 ロボティクスやIoT(モノのインターネット)分野への投資を専門とするVC、グリシンロボティクス(Grishin Robotics)や、新興テクノロジーVC、シャスタベンチャーズ(Shasta Ventures)などとともに総額1720万ドルを投資した。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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