将来への見通しが不透明といわれている昨今ですが、老後の生活に漠然とした不安を抱えている人も多いでしょう。その不安を解消するためにまず必要なことは、具体的な数字を使ってシミュレーションしてみることです。今回はリタイア後の生活費がどれだけ必要で、どれだけ足りないのか、不足を埋めるにはどうすればいいのか、その考え方を紹介します。

60歳以上世帯の生活費は平均どれくらい?

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(写真=PIXTA)

老後に必要なお金を計算するために、まず支出がどれくらいかかるのかを考えましょう。そこから年金などによる収入を差し引けば、必要な金額が分かります。

公益財団法人生命保険文化センターの「平成28年度生活保障に関する調査(速報版)」によると、夫婦二人が老後に最低限必要な生活費は月22万円、ゆとりある生活にするために必要な上乗せ額は月12.8万円となっています。

一方、総務省「家計調査」2017年7月~9月期によると、1世帯あたりの1ヵ月における支出額は世帯主が60歳~69歳の場合で25万3,165円、70歳以上の場合で20万474円でした。これらデータを見る限り、多くの家計では、ゆとりある生活水準の消費はしていない(できていない?)ようです。

ここからは、最低限必要な生活費を月22万円、余裕ある生活をするために必要な生活費を月35万円として計算していきます。ただ、あくまでも一般的な数値であり、それぞれの事情によって変わることにご注意ください。例えば、住居は持ち家か、子どもと同居するか、住む地域はどこか、などの条件によって違いが出てくるでしょう。もっと細かい支出内容について知りたい人は、上記調査結果をご覧ください。

老後の収入を加味した想定費用

最低限必要な生活費の月22万円を全て事前に準備する必要はありません。年金制度があるからです。厚生労働省発表の「平成29年度の年金額改定について」によると、2017年に支給開始された公的年金の月額は、国民年金のみで64,941円(一人分)、夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な厚生年金が221,277円(夫婦二人分)とのことです。

では、年金を受け取るとして、同い年の夫婦二人が70歳から80歳までの10年間に必要な生活費を計算してみます。
<国民年金のみの場合>
・ 最低限の生活
(22万円 − 6.5万円×2人)×12ヵ月×10年=1,080万円
・ 余裕のある生活
(35万円 − 6.5万円×2人)×12ヵ月×10年=2,640万円

<厚生年金の場合>
・ 最低限の生活
(22万円 − 22万円)×12ヵ月×10年=0円
・ 余裕のある生活
(35万円 − 22万円)×12ヵ月×10年=1,560万円

さらに、急な病気や災害など、万が一のための預貯金もいくらかは必要でしょう。従って、上記は少なめに見積もった場合の計算ということになります。また、平均寿命は年々伸びているので、今の若い世代の人々はもっと多くのお金が必要になる可能性があります。仮に夫婦二人90歳まで生きた場合、必要な金額は単純計算で上記の2倍になります。つまり、余裕のある生活をしたいと思えば、国民年金のみの場合で5,280万円、厚生年金の場合で3,120万円を用意しておく必要があります。

時間を味方につけて「お金を働かせる」発想を

仮に、リタイア時に貯めておきたい金額が3,000万円だとして、手に入れるにはどうしたらいいでしょうか。勤務先や勤続年数によっては退職金がもらえる可能性もありますが、働き方や経済のあり方が変わっていく中で、退職金に過度の期待は禁物です。

老後の備えは早くからしておくに越したことはありません。そのため今のうちから自分でしっかり計画を立て、毎月一定額を積立投資していくのがお勧めです。自分が働くのと同時に、お金にも働いてもらうのです。老後の備えは、時間を味方につけて、今のうちから「お金を働かせる」発想が重要です。 (提供:マネーLife Style


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