ドル円予想レンジ111.00-113.50

“「山」、「川」”-。これは歌舞伎の最高傑作、「仮名手本忠臣蔵」でも有名な赤穂浪士・四十七士による吉良上野介邸討ち入りの際の合言葉だ。一糸乱れぬ行動は元禄15年12月14日午前4時頃に始まったとされる。

一方、2017年、東京時間12月14日午前4時、米連邦準備理事会(FRB)は米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し6カ月ぶりの利上げを決定。来年2月に退任するイエレン議長は記者会見で「我々は完全雇用に極めて近接している」と事実上、雇用情勢の健全性を宣言し矜持を示した。しかし同日のドルは対主要通貨前日終値比で全面安となっている。

「イエレン最後の利上げ」に反対票あり

今回のFOMCに市場が望んだ合言葉は、“「2018年と2019年の利上げ回数」、「それぞれ3回ずつ」”だったのかもしれない。しかしそれは想定範囲内での織り込み事項だ。そこで筆者が注視したのは、FOMC委員9名の内、利上げ賛成票は7名であったことだ。今回の政策決定に2人(シカゴ地区連銀エバンズ総裁/ミネアポリス地区連銀カシュカリ総裁)が反対票を投じたのである。推測だが、①10月の個 人消費支出(PCE)低迷、②11月米雇用統計での賃金性向停滞、③FOMC発表前(22時半)の11月米消費者物価指数コア前月比不調、などで利上げ賛成に躊躇したのではないか。

事実、イエレン議長自身も「インフレを起こす要因に対する我々の理解は不完全で、注視していく」と述べており、物価が上がりにくい状況が続いていることを、一時的だとしながらも低迷は認めているのだ。反対票の2名は来年FOMCを退任予定だが、次期議長に指名されたパウエルFRB理事が、現在の「緩やかな利上げ」路線を受け継ぐ姿勢を示していることを再留意したい。

トランプ減税による経済押し上げ効果を見込む一方で、成長率は非常に大きくは伸びない、としたイエレン見解も踏襲するなら、今後FOMC内部の趨勢がハト派主流となる可能性も否めないのではないか。次回パウエル体制での3/21FOMCに対し、シカゴFEDウオッチでの利上げ確率は50.7%(12/15時点)。市場との合言葉に齟齬が強まるようだと“利上げ≒ドル高“の式は当面、正解を得られないだろう。

12/18週のドル円

上値焦点は12/14高値112.90。超えれば日足雲上限113.16-55、12/13高値113.585、12/12高値113.76意識。下値焦点は12/6安値111.98、200日線・週足ボリンジャー中心線推移の111.60圏、12/1安値111.40・11/29安値111.375を推考。最終橋頭堡は日足雲下限111.03。

為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト