2017年もあと少しとなり、もうすぐ2018年になる。2017年も色々なイベントがあり、良いことも良くないこともあった。経済を主とした今年の出来事を振り返り、来年の準備を進めよう。

1月 トランプ氏が米大統領に就任

2017年,回顧
(画像=Evan El-Amin/Shutterstock.com、PIXTA、任天堂Webサイトより)

1月19日、東芝の原子力発電事業での損失が7,000億円に膨らむ可能性があることがわかった。原発事故対策およびテロ対策によるアメリカの原発コスト増と、シェール革命により天然ガス価格が下落し、原発電力の価格競争力低下などが原因となった。

1月20日にはドナルド・トランプ氏が米の第45代大統領に就任。トランプ大統領の米国第一主義の政策期待から、25日にはNYダウが史上初の2万ドルを突破。また、大統領がドル高への警戒感を示し、為替は先月末の1ドル116円台から1月末の1ドル112円台へと円高が進行した。

2月 プレミアムフライデー開始

2月24日、経済産業省、経団連、業界団体などが協力して推進している「プレミアムフライデー」が始まった。月末の金曜日は午後3時頃など早めに退社し、買い物や遊びなどにお金を使ってもらうことで、消費拡大に繋げる狙いがあるようだ。

2月26日、圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の茨城県内の区間(境古河インターチェンジ−つくば中央インターチェンジ間)28.5kmが開通した。これで、東名高速道路や東関東自動車道など、都心から延びる6つの主要な高速道路が繋がった。今まで首都高を経由していた車が圏央道へ分散されるほか、成田空港のアクセス改善による観光客増加も期待される。

3月 大ヒット商品Nintendo Switch発売

3月3日にNintendo Switchが発売された。任天堂の据え置き型機としてWii U以来4年半ぶりの新型だ。Nintendo Switchは2017年を代表するヒット商品となり、品薄状態が続く。このため任天堂の株価は2017年後半に向け上昇傾向が継続する。

3月29日、東芝傘下の米原子力大手WH(ウエスチングハウス)など2社が、米連邦破産法の適用を申請したと発表された。2社の負債は計98億ドル(約1兆900億円)となり、東芝の連結最終損益(2017年3月期)が最大で1兆100億円の赤字となる可能性が報じられた。

同じ3月29日、英国のメイ首相は、EU(欧州連合)離脱を正式通知した。英国のEU離脱は2016年6月の国民投票で決定されたものであり、離脱通知後、原則2年間の離脱交渉に入る。メイ首相は「これは歴史的な瞬間であり、後戻りすることはない」と語った。

4月 地政学リスクに伴うドル円の上昇と日経平均株価の下落

朝鮮半島の軍事的な緊張の高まりから、4月中旬に円相場は一時1ドル108円台まで上昇。その後、地政学リスクの後退から4月後半には1ドル111円台まで戻した。

日経平均株価は、同じく地政学リスクの影響で4月中旬にかけて下落し、4月14日には月間安値1万8335円63銭を記録。その後、仏大統領選に伴う欧州政治リスクや地政学リスクの後退により上昇に転じ、4月後半には1万9000円台を回復した。

主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、4月14日、15日に行われ、タックスヘイブン(租税回避地)対策強化を盛り込んだ声明を採択。

2016年度の貿易収支が6年ぶりの黒字となったことが、4月20日、財務省から発表された。東日本大震災があった2010年度以来、原子力発電所の停止により火力発電所の燃料輸入が増え、赤字が続いていた。2016年度は、中国向けの液晶デバイスなどの輸出増により、アジアへの輸出額が過去最高となった。

5月 改正個人情報保護法の全面施行

5月10日、トヨタ自動車が発表した2017年3月期連結決算は、売上高が2.8%減、営業利益が30.1%減となり、5年ぶりの減収減益となった。前年に比べ円高による要因が大きいという。

5月30日には「改正個人情報保護法」が全面施行された。この改正で、個人が特定できないようデータを加工することで、本人の同意なしに個人情報を取引できることが認められた。企業が蓄積したビッグデータの更なる活用と新規サービス創出が期待される。

6月 エアバッグのタカタが経営破綻

6月23日、東芝が8月に東証1部から2部へ降格することを発表した。債務超過が確実となったためだ。東芝の東証2部降格は1949年の1部上場以来初めてになる。更に、2018年3月末までに債務超過を解消できなければ、上場廃止になることも伝えられた。

6月29日、エアバッグの異常破裂により多数の死傷者を出し、世界中で大規模なリコールを発生させることになったタカタが経営破綻した。そのリコールに対し、国内の各自動車会社の引当金総額は1兆3309億円(東京商工リサーチ(TSR)調べ)もの巨額になった。

7月 日本とEU、EPA大枠合意

7月4日と28日、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、日本海の排他的経済水域(EEZ)に落下。地政学リスクが再び高まったことと、森友・加計問題などにより安倍政権の支持率が急落するなどにより、日本株の買いは慎重な姿勢がみられた。しかし、日銀によるETF(上場投資信託)の買いにより、日経平均株価は大きく下落することなく20,000円を挟んだ小幅な値動きとなった。

7月6日、日本とEU(欧州連合)はEPA(経済連携協定)の締結で大枠合意した。これで、EUから輸入されるチーズやワイン、パスタなどの関税が削減または撤廃され、日本から輸出される自動車や食品の関税撤廃などが進められる。EPA発行時期は2019年を目指している。

8月 ホンダの小型ビジネスジェット機出荷数が世界一に

8月21日、ホンダが2017年上期(1〜6月)の小型ビジネスジェット機出荷数が世界一になったと発表。この期間の出荷数は、前年同期にくらべ2.4倍となる24機であった。燃費の良さや室内の広さなどが好評だという。最大7人乗りのホンダジェットの価格は490万ドル(約5億4千万円)である。

国際情勢は、北朝鮮とアメリカの軍事衝突の懸念が高まったことと、米トランプ政権混迷の警戒も重なり、日経平均株価は下落した。8月29日には北朝鮮によるミサイルが発射され北海道上空を通過し、Jアラートが鳴った。

9月 北朝鮮情勢懸念が悪化、続くJアラート

9月上旬は、北朝鮮情勢悪化の懸念から、日経平均株価が一時1万9000円台前半まで下落。9月15日には北朝鮮が先月に続き2回目となる北海道上空を横断するミサイルを発射。前回に続きJアラートによる警報があった。その後、警戒感が薄まり、月後半には日経平均株価が2万円を突破した。

9月28日、トヨタ自動車は、マツダ、デンソーと共同で電気自動車(EV)の技術開発会社を設立した。欧米の自動車メーカーや日産自動車に比べ遅れていたEVの開発を推進する。更に他の自動車会社の参加も呼び掛けており、EVシフトの準備を進めている。

日産自動車は、無資格者による完成車検査を行っていることを国土交通省から指摘された。9月29日、日産はこの問題について国土交通省で会見した。

10月 日経平均が史上最長の16連騰、スマートスピーカー続々

10月5日にLINEの「Clova WAVE」、10月6日にGoogleの「Google Home」が発売され、11月にはAmazonの「Echo」発売が予定されるなど、スマートスピーカーが続々登場した。スマートスピーカーは、家電の音声による操作や、音楽をストリーミングサービスで流すことができる機器であり、日本はアメリカなど比べ普及が遅れていた。2017年は日本のスマートスピーカー元年と言えるかもしれない。

神戸製鋼の製品データ改ざん問題が発覚し、10月8日に会見が開かれた。アルミ・銅などの検査データ改ざんにより、航空機、自動車、鉄道、電機などの業界に営業があり、国際的な問題となった。

日産自動車は、無資格者による完成車検査を国土交通省から指摘された後も継続していたことが発覚し、国内向け全車両を一時出荷停止すると10月19日に発表した。更に、スバルも無資格者による完成車検査を行っていたこと及びリコールを27日に発表した。

10月22日の衆院選選挙では自民党が大勝。金融緩和や財政出動の継続が好感され、日経平均が史上最長となる16連騰を記録。日経平均株価は22,000円を上回り約21年ぶりの高値となった。

11月 日経平均株価は25年10カ月ぶりの高値

11月の株式市場は、ソニーなどの業績好調な電気株や精密株に買いが集まった。日経平均株価は11月7日の終値で、バブル崩壊後の1992年1月以来、25年10カ月ぶりの高値2万2937円60銭を記録するなど、2万2000円以上を維持した。

10月の神戸製鋼の製品データ改ざん問題に続き、三菱マテリアルは、子会社の三菱電線工業と三菱伸銅による一部製品の検査データ改ざんを11月23日に発表した。問題の製品は258社に出荷され、航空機、自動車、電力機器などに採用されているという。

更に11月28日には、東レ子会社での品質データ改ざんが発表された。タイヤコードや自動車用ホース・ベルト用コードに使われる東レハイブリッドコード(THC)の検査データを書き換える不正があった。

12月 ビットコインはバブルなのか?

12月に入り、ビットコインはバブルとも言える高騰を見せた。2017年初に11万円前後だったビットコインが、12月8日には200万円を超え、この1年で約20倍となった。11日には、米CBOEグローバル・マーケッツでビットコイン先物取引がスタートするなど、ビットコイン取引が加熱している。

12月14日、公道で運転席のドライバーなしに乗用車を走らせる「無人自動運転」の実証実験が愛知県で始まった。日本にて公道の無人自動運転の実験は初となる。3次元地図のデータをもとに、カメラやセンサーなどで走行箇所を把握し、自動運転を行った。危険な場合は、助手席の補助者が停止できるほか、遠隔での緊急停止も可能となる。

12月15日からは、三井住友銀行、りそな銀行など37の金融機関が韓国の大手銀行2行とブロックチェーン技術を活用した「送金実験」をスタート。実現すれば、コストを30%近く減らし、海外送金が即日完了するという。海外送金の手数料コスト削減と送金日数の短縮は、個人と法人共にメリットが大きく、早期実現に期待したい。

このように1年の出来事を振り返ると、改めて考えることがあるだろう。自分のビジネスや資産運用についても1年を振り返り、来年へと活かしていきたい。(松本雄一、ビジネス・金融アドバイザー)