アメリカ、イギリスの対中政策を比べると、とても対照的である。トランプ大統領は18日、大統領就任後初となる国家安全戦略を発表した。全文は68ページで、“国土安全の保護”、“アメリカの繁栄の促進”、“実力を以て平和を維持する”、“アメリカの影響力を引き上げる”といった項目から構成されている。アメリカ第一主義を強調するような内容であった。

アメリカは“競争が充満する世界”に直面しており、ロシアや中国などは貿易、外交、安全などの領域においてアメリカの競争者となっているとしている。その上で、軍事、戦略的核兵器、宇宙開発、ネットワーク、情報などの各方面において競争力を強化し、アメリカの世界全体への影響力を引き上げると強調している。

中国側、米中関係は双方に利益

中国,日中関係
(画像=Thinkstock/GettyImages)

一方、こうした内容に対して、中国外交部の華春瑩報道官は以下のように答えている。

中国は開放改革以来、発展を続けているが、これは世界各国との協力による勝利であり、お互いに利益があったことは国際社会のコンセンサスとなっている。米中経済貿易関係は本質的にウインウインの関係である。2016年の米中貿易額は5500億ドル、投資額(双方向)は2000億ドルを超えている。米中経済貿易はアメリカに対し、直接、間接的に260万人の就業をもたらしている。2015年の中国におけるアメリカ企業の利益は362億ドルに達している。

10月に開かれた共産党大会において、中国は引き続き高水準の貿易、投資の自由化、簡易化を進めると発表した。これによって米中経済貿易関係は一層、平衡状態に向けて進展し、ウインウインの方向に向かって健全に発展するだろう。それによって、米中両国やその人民は共に利益を得られるだろう。また、これは国際社会の共通した期待でもあるだろう……。

突き詰めて考えれば、トランプ政権は誰を優先して政治を行っているかという点がポイントである。中国側が言うように、中国との貿易や投資で利益を得ているアメリカの企業、金融機関、或いはそれらの従業員、中国製品を評価する消費者はたくさんいる。

ただし、収益機会を奪われた企業、職を奪われた従業員、米中両国の親密化で利益を得られない軍事関連産業なども存在する。トランプ政権を支える組織、支持する有権者の層が変わるかどうか、もっと端的に言えば金融機関、消費者の政治的発言力が強まるかどうかによって、米中関係は大きく変化するだろう。

中英関係は黄金時代へ

一方、第9次中英経済財政対話が16日、北京で開催された。中国側の代表である馬凱副首相は次のように発言している。

「エネルギー産業における提携を深め、インフラ設備建設での提携をしっかりと推し進め、貿易投資における提携を深め、新産業、イノベーションに関して相互協力を行い、“中国製造業2025”とイギリスの産業政策を接合し、“一帯一路”フレームワークの下で実務的な提携を強化し、第三市場での提携を模索し、金融サービス業務での提携を緩やかに推し進め、共同で人民元の国際化を推し進め、国際事務協調を強化し、世界経済の持続的回復を促進する。中英関係の“黄金時代”に不断に新しい内容が注入され、中英戦略パートナー関係が新たなステージに上がるよう努力する」

イギリス側の代表であるハモンド財務大臣は、「10月に開かれた共産党大会(十九大)は中国の未来の発展を決定付ける壮大な計画であり、イギリスは“一帯一路”の提唱を支持し、中国と共に一歩進んでチャンスをしっかりと捉え、各領域での実務協力を深め、英中関係の“黄金時代”実現に向けて邁進したい」などと発言している。

資本市場に関する話題をまとめると、双方は人民元の国際化を更に一歩進めること、双方の資本移動ルートの拡大を引き続き進め、ロンドン市場を利用し、人民元の使用や、中国企業がロンドンにおいて資金調達することを支持した。

双方は“上海・ロンドン・ストックコネクト”に関する関連操作の制度や導入計画に関する研究、準備活動が進展したことを歓迎。更に一歩進んで両地域の条件に合った上場企業が預託証券方式で双方の市場に上場すること、両市場の互換取引を実現することなどに関する研究を深めることで同意した。

また、中英監督管理機構が“上海・ロンドン・ストックコネクト”のフレームワークの下で、国境を越えて監督管理執行法、会計原則、審査監督管理を作り上げることを歓迎。“上海・ロンドン・ストックコネクト”始動のタイムテーブルを適切な時期に発表できるように、準備活動を加速させることに同意した……。

イギリスはアメリカとは対照的に、中国を競争者ではなく、経済発展のパートナーとみなしている。経済面における米中関係は非常に密接であるが、政治面でその発展にブレーキが掛けられるようだと、その間隙を縫って、イギリスが中国の発展を最大限に活用することになりそうだ。イギリスと同様にアジアインフラ投資銀行(AIIB)に出資しているといった点からもわかるように、フランス、ドイツも中国を競争者ではなく、パートナーと見なそうとしている。

アメリカが“アメリカ第一主義”を唱えれば唱えるほど、アメリカの孤立が進むことになりそうだ。

田代尚機(たしろ・なおき)
TS・チャイナ・リサーチ 代表取締役
大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。One Tap BUY にアメリカ株情報を提供中。HP:http://china-research.co.jp/