テクノロジー分野の中でも金融、医療、メディア関連への投資が最も活発化しており、特にIT系企業以外の大企業500社をフォーチュンがまとめた「非IT系フォーチュン500」によるAI(人工知能)スタートアップへの投資は、2013〜2016年にかけて4倍に増えている 。 ゴールドマン・サックス、シティグループ、ウォルトディズニー・カンパニーなど、「未来のユニコーンに最も投資している国際大手10社」を見てみよう。ランキングはCBインサイツが今年8月に発表した報告書に基づいたもの。

10位 ブラックロック——Uber、ドロップボックスなどユニコーン育成に貢献

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

Uber、中国版Uberと称されることの多い滴滴出行、オンライン・ストレージサービスのドロップボックスなど、ユニコーン育成環境に大きく貢献している。

ドモには2015年、2016年、2017年と3年連続で出資という気合の入り方だ。ローン債権の販売スキャンダルでCEO辞任騒ぎとなったレンディングクラブが2014年に実施したプライベートエクイティラウンドにも参加していた。小中企業向けP2P融資ファンディングサークルにも2015年に投資している。

2008〜2017年7月にかけてのスタートアップ投資は39件。代替投資のアイキャピタル・ネットワークやスケーラブル・キャピタルの資金調達ラウンドではリード投資企業を務めた。

9位 モルガン・スタンレー——テスラ、Uber、Twitterなど「大物スタートアップ」狙い?

モルガン・スタンレーがこれまで投資した中国の小米科技、ビッグデータソリューションのネクシディア(Nexidia)、即時融資のアファーム(Affirm)のほか、ドロップボックス、フリップカート、ドモ(Domo)などがユニコーンに成長。

2009年にはTwitter、2015年には衆案保険、2016年にはテスラやAirbnb、Uberにも投資している。インドの非銀行系金融サービス、ファイブスター・ビジネスファイナンスなどスタートアップにも投資しているが、どことなく大物狙いという印象を受ける。

8位 JPモルガン・チェース——GS、シティと並ぶテクノロジー投資大手

金融機関の中では、ゴールドマン・サックスやシティグループと並んでテクノロジーへの投資が活発なJPモルガン・チェース。光ファイバー・インターネット接続サービスのオンサイト・アクセスやビジネス向けデジタル決済の「ビル・コム」、オンラインP2P自動車販売サービスのオート1グループ、移民が自国の家族に簡単・低コストで送金できる「ワールドレミット」などに投資している。

これまでにAR(拡張現実)とモバイルコンピューティングの融合を試みるマジックリープ、コマースクラウドサービスのAppダイレクト、サイバーセキュリティー関連のイルミオ(Illumio)がユニコーンに成長した。

投資部門JPモルガン・インベストメントを通じて、ドロップボックスなどに投資している。

7位 アンセム——医療テックに投資するかたわら、テクノロジー施設も設立

米国の医療保険大手アンセム(Anthem) は医療テックの買収に積極的だ。買収企業はルメノス(Lumenos)、シグナ(Cigna)、アメリカズ・ファーストチョイスなど主に医療・保険分野だが、資金調達ラウンドでは医療テックに投資している。患者と医師がビデオで会話できるサービスを提供するアメリカン・ウェルや、医療ウェアラブルデバイスのムバブル(Movable)などだ。

今年10月には米国の商業不動産企業ポートマン・ホールディングスと提携し、アトランタにテクノロジー研究・開発施設の設立も発表したことから(ビジネスワイヤーより )、今後医療テック関連の投資や買収が増える可能性は高い。着工は2018年で2年以内の完成を予定している。

6位 タイムワーナー——長期投資戦略 気にいったスタートアップには何度も投資

ライバル大手同様、自社の投資部門タイムワーナー・インベストメンツを通し、アーリーステージからミッドステージのスタータップに投資している。

2000年にeBayの子会社商品・サービス比較サイト「ディールタイム・コム 」に投資。この調達ラウンドは野村インターナショナルがリードし、バンクオブアメリカやUBS、AOLも参加した。2017年12月までに合計件のスタートアップ投資を行っているが、目をつけたスタートアップに何度か投資するという戦略を好むようだ。

例えばカリフォルニアのクラウドスターには2011年、2012年2013年と3年連続で、ビッグバング・ネットワークには2002年に2回と2003年、2004年、ニューヨークのシムルメディアには2010〜2013年に合計4回投資している。各スタートアップの成長を長期的に観察・支援する堅実な投資といった印象を受ける。

最近では動画配信プラットフォームの「ベムバ(Vemba)」の資金調達ラウンドシリーズAを先導したほか、スマートボックスや動画ストリーミングサービスをひとつのリモコンで操作できるデバイス「カーボ(Caavo)」 の資金調達ラウンドシリーズBなどに参加している。

5位 アメリカン・エクスプレス——テクノロジー・スタートアップへの関心はクレジットカード産業No.1

テクノロジー関連スタートアップへの投資では、マスターカードやVISAを抜いて4位となったアメリカン・エクスプレス。

戦略投資部門アメリカン・エクスプレス・ベンチャーズ を立ち上げ、次世代決済市場をリードするストライプ のほか、データ管理・インテリジェンスのエニグマ、 モバイル決済のアイゼトル(iZettle )、小中事業向け保険「ネクスト・インシュアランス」、 国際ID検証サービスのトゥルリオ—(trulioo)、AIマーケティングプラットフォームのパーサド—(Persado )、インド初のオールインワン決済アプリ「タプゾ(tapzo)」など、30社以上に投資している。

4位 ウォルトディズニー・カンパニー——インターネット、メディア関連のスタートアップに関心大

世界最大のエンターテインメント企業のひとつウォルトディズニーは、エンターテインメント関連の企業を精力的に買収するかたわら、スタートアップが開発するインターネットおよびメディア関連の先端テクノロジーにも大いに関心を示している。

2000年に重要書類をインターネットで安全に送信するサービス、エンクリプティクス(Encryptix) のベンチャーラウンド に、三菱モーターズなどとともに参加。2009年に動画配信サービスのHulu、2016年にマーケティングクラウドサービスのHYP3R、新興デジタルメディア「ヴァイスメディア」など、2017年9月の時点で16件の資金調達ラウンドで出資している。

買収件数は1995年〜2017年12月の時点で26件。1995年に米国の民間放送ネットワークABCを買収して以来、1999年にポータルサイト「インフォシーク」、2006年にインドの児童向けチャンネル「ハンガマTV」、2017年12月には競合企業21世紀フォックス524億ドルで買収した。

3位 シティグループ——CVCの先駆け テスラなど上場企業からユニコーン、期待の新星まで

1999年という非常に早い時期にニューヨークの外部アカウンティングサービス、バーチャルグロースに投資したのを機に、カンサス州レネックサのeコマース用分析アプリのデジタル・アーキオロジー、世界最大規模のフリーランスウェブサイト「アップワーク」、ロンドンのモバイルサービス、モバイルウェイなどに次々と投資。

その一方でテスラ、ゼロックスといった上場企業から、UberやAirbnbなどのユニコーン(時価総額10億ドル以上で非上場の企業)、ビッグデータ・機械学習による株式市場分析プラットフォーム「ケンショー(Kensho)」、金融機関向け分散型台帳技術を開発するアクソニ(Axoni)といった話題のスタートアップ、そしてブロックチェーンベンチャー企業R3にも投資している。

2位 ゼネラル・エレクトリック——スタートアップとの提携に積極的

ベンチャー投資部門、GEベンチャーズを通してのスタートアップ投資が盛んなゼネラル・エレクトリック。「イノベーションとはコラボレーションである」というスローガンをかかげているだけあって、早期段階からスタートアップとの提携に着目。2013年から2017年12月にかけて150件近いCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)に挑んできた。

最近では今年カリフォルニアで設立されたばかりの医療テック、ドローブリッジ・ヘルスのシードラウンドを先導。ドローブリッジ・ヘルス は医療機関がモバイルデバイスから血液検査を行える技術を提供している。ほかにもエンタープライズ系ビックデープラットフォームのエクアルム(Equalum )のシリーズAラウンド、スマホセキュリティーアプリのモカナ(Mocana)のシリーズFラウンドなどのリード投資企業を務めている。

1位 ゴールドマン・サックス——未来のユニコーン育成に最も貢献

第2四半期のトレーディング収入が17%減ったにも関わらず、融資および投資による収益は4.65億ドル増えたゴールドマン・サックス(ブルームバーグより )。同行は投資の詳細については公表していないものの、「プライベートエクイティの好調ぶりが貢献した」とコメントしている。2015年11月に発表した報告書 では、プライベートエクイティの投資総額188億ドルのうち19%をテクノロジー、メディア、テレコムが占めていると明らかにしている。

2014年にカード決済のスクウェア、2015年に音楽ストリーミングサービスのスポティファイ、2016年に配車アプリのUberなど、「ゴールドマン=大物スタートアップへの投資」で話題が先行しがちだが、シードステージ・スタートアップへの投資にも 熱心だ。

2016年は次世代データ視覚化・分析システムを提供するズームデータ、ビジネス向けSNS管理・分析プラットフォームのスプラウトソーシャル、S3アプリ対応のクラウドストレージ、クラウディアン 、オープンソース動画プラットフォームのカルチュラ (Kaltura)、金融機関向け分散型台帳技術を開発するアクソニ(Axoni)などの資金調達ラウンドに参加。

2017年もその勢いは衰えず、モバイルデバイスで名刺交換ができるアプリケーションのサンサン(SanSan)、 DNAクリーニングサービスを含む医療テックのカウンシル(Counsyl)、 カナダのルートデータセンター(ROOT Data Center)、香港を拠点とするアジア最大規模の旅行予約プラットフォーム、クロック(Klook) など、分野や国・地域を問わず精力的にスタートアップに出資している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)