「2020年の米国大統領選に出馬する可能性がある」と報じられている著名人と、実現の可能性を検証してみた。SNSで世界を変え、自らの力で巨額の財を築いたFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ氏や、米国を代表するTV司会者兼女性実業家オプラ・ウィンフリー氏、一流レスラーと俳優のふたつの顔を併せもつドウェイン・ジョンソン氏などだ。
これらの著名人が実際に立候補するかどうか、その噂の信ぴょう性はさておき、芸能人が政治家に転身するケースは珍しくない。米国で最も有名な例ではロナルド・レーガン第40代大統領や、カリフォルニア州知事を務めたアーノルド・シュワルツェネッガー氏だろう。
マーク・ザッカーバーグ(Facebook CEO)——オバマ前大統領の最高顧問雇用で下準備中?支持率はトランプ氏と互角
ザッカーバーグ氏の名が、次期大統領候補として浮上したのは2017年夏頃だ。「ザッカーバーグ夫妻が民主党の世論調査員ジョエル・ベネンソン氏を雇用した」という、ポリティコの報道が火種 となった。
ベネンソン氏はオバマ前大統領の最高顧問や、前米国大統領選で対立候補だったヒラリー・クリントン氏のチーフ戦略家を務めた人物である。雇用の目的は、夫妻が設立した慈善活動団体「チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ」の調査指揮とされているが、出馬の下準備との見方も強い。ザッカーバーグ氏には出馬に必要な名声や資金も備わっており、昨年からは全米各地を訪問するツアーを開始するなど、政治的な意図が感じられなくもない。実現すれば、セオドア・ルーズヴェルト第26代米国大統領の記録(就任時42歳)を塗り替える、米国史上最年少の大統領が誕生することとなる。
それでは実際にザッカーバーグ氏が出馬したと仮定して、当選する可能性はどれほどなのか。世論調査企業パブリック・ポリシー・ポーリングが2017年7月に実施した調査では、「ザッカーバーグ氏とドナルド・トランプ氏、どちらが大統領としてふさわしいか」という問題で、両者の支持率は各40%と互角であることが分かっている(残り20%は「分からない」と回答)。さらに29%が「ザッカーバーグ氏を支持率しない」と答え、「支持する(24%)」を上回った。
可能性のある対立候補として挙げられていた上院議員、バーニー・サンダース氏(支持率52%)やエリザベス・ウォーレン氏(49%)よりはるかに低い。将来的な立候補を視野にいれているのであれば、まだまだ根回しが必要だろう。
オプラ・ウィンフリー(司会者・実業家)——米国初の女性大統領誕生?全米圧巻のスピーチ
米国の人気テレビ番組「オプラ・ウィンフリー・ショー」の司会者として有名なウィンフリー氏。女性実業家としての評価も高い。次期大統領候補の可能性が本格化したきっかけは、2018年1月に開催された第75回ゴールデングローブ授賞式での熱烈なスピーチだ。
黒人女性として初めてセシル・B・デミル賞(生涯功労賞)を受賞したウィンフリー氏は、自らの体験を通して性犯罪や性的暴力に立ち向かった黒人女性リーシー・テイラー氏を称え、被害者への連帯感を示すスピーチを壇上で行なった。
このスピーチが参加者だけではなく全米から大喝采を受け、ウィンフリー氏の名が次期大統領候補としてメディアをにぎわすこととなる。
ウィンフリー氏は過去に出馬の可能性をきっぱりと否定していたが、自国だけではなく世界の情勢は刻々と変化している。考えが変わったとしても不思議ではない。実際スピーチの中で「(女性にとって)新しい日が始まろうとしている」と、出馬をにおわせるフレーズを投げかけている(BBCより )。
ウィンフリー氏は国民からの支持率も高く、選挙資金集めに苦労することもないだろう。おりしも米国では、「女性の自由解放」を求める運動が活発化している。
ドウェイン・ジョンソン(俳優・プロレスラー)——「騒がず、冷静に」が理想の大統領像?
「世界一稼ぐ俳優」としても名高いジョンソン氏の政界進出については、過去数年ことあるごとに話題にのぼっていた。
例えば2012年、映画情報サイト「ムービーフォン(moviefone)」のインタビュー で、政界進出の野望を示唆している。「今はエンターテイメントという手段で世界に影響をあたえる」と本来の職業への熱意を示すかたわら、「いずれ準備が整えば、政治を通じて世界に影響をあたえたい」「米国人なので米国大統領になれる」などとコメントしていた。
2017年にもGQ誌で「大統領に立候補するために、俳優を辞める可能性」について 「イエス」と答えている。大統領に必要な要素は「騒がず、冷静に」と地に足のついた考えを示していることから、トランプ氏とは正反対の大統領像が想像できる。また前選挙戦では両候補からの支援を断るなど、民主党・共和党のどちらにも属していない点が興味深い。
ベン・アフレック(俳優)——「立候補するアイデアは好きだが、選挙運動には幻滅」
前回の大統領選後、ニューヨークタイムズ紙 の取材で、「立候補するアイデアには興味がある」と発言。トランプ氏の勝利で「自分も立候補する資格があると分かった」などと皮肉をいいながら、選挙運動については「電話やカクテルパーティーで人と話すだけで、絶え間なく金が舞い込んでくる」と幻滅をあらわにしている。政治への関心が勝つか、選挙活動への嫌気が勝つか—といったところだろうか。
同じく俳優ではウィル・スミス氏やロン・パールマン氏、シンガーではカニエ・ウェスト氏、ケイティ—・ペリー氏、コメディアンではクリス・ロック氏やロザンヌ・バー氏などの出馬の可能性が報じられているが、いずれも信憑性は薄そうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)