ドル円予想レンジ110.60-112.80
「本年は、『実行の一年』であります。昨年の総選挙でお約束した政策を一つひとつ実行に移してまいります」-。これは平成30年1月1日の安倍首相年頭所感における一節だ。
では、昨年の総選挙で約束した政策の実行とは何か。安倍首相が総裁を務める自由民主党の第48回衆議院議員選挙(平成29年度)・自民党政権公約2017では『この国を、守り抜く。』とし、“アベノミクスの加速で景気回復・デフレ脱却を実現します”と掲げている。
「正常化」を囃した円買い仕掛け
1/9の東京外為市場は円全面高となった。日本銀行が同日午前10時10分の「オペレーション(公開市場操作)」で超長期国債の購入額を減らしたことで、量的金融緩和縮小(テーパリング)、正常化の萌芽、と解釈された。しかし、日銀がオペの減額を公表し、円高方向に動き出したのは午前10時15分過ぎ頃からである。
本当に“オペ減額≒日銀が正常化に舵切り”と見て円買い仕掛けがなされたのか。筆者は単に「大義名分の口実」に使われた、と読んでいる。つまり、①米長期金利の上昇鈍化への苛立ち、②昨年末以来の1ドル113円台抜け難度の高さ、③米連休(1/13-15)控えてのポジション縮小、が実際のところではないか。
なぜなら、“オペ減額≒日銀が正常化に舵切り”、と見る向きは極めて少数である筈だからだ。日銀のオペ減額は今に始まったことではなく、政策の軸足が国債の「買い入れ量」から「金利」に変更されているのは周知。事実、2016年9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入の際に長期債年間増加額「目標」80兆円は「目途」に修正され、現ペースは年50-60兆円程度となっている。
シカゴIMM通貨先物市場を見ると、投機筋の円売り(ドル買い)ポジションは高水準で継続しており、調整のタイミングを探していたフシもありそうだ。他主要中銀の金融政策正常化の動きから、「次は日銀」との疑心暗鬼を伝播させた格好である。
前出の安倍首相年頭所感を鑑みれば、円高回帰を甘受するとは到底思えない。1/15日銀支店長会議では、今回の動きに黒田総裁も眉を顰め(まゆをひそめ)、現策の継続を強調するのではないか。
過度な円高読みには無理がある、と筆者は推考している。
1/15週のドル円
上値焦点は200日線推移の111.70近傍、1/11高値111.88。日足一目均衡表雲の帯(112.55-66)を越えれば1/10高値112.80視野。下値焦点は11/27-28安値圏110.925-825。割れたら北朝鮮がミサイルを発射した9/15安値109.535(早朝)後の上昇から戻り安値(同日21時頃)となる110.60を意識。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト