新宿区議会が12月11日、民泊に関して区の独自のルールを定めた「新宿区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例」を可決した。民泊が全国的に解禁される2018年6月15日の民泊法(正式名称:住宅宿泊事業法)施行を控え、東京都内だけではなく、京都・北海道の自治体にも上乗せ規制制定の動きが広がっている。

民泊法が施行された背景

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(画像=PIXTA)

旅館・ホテルなどの専用施設ではなく、一般住宅で宿泊サービスを提供する民泊は世界的な拡がりを見せており、日本でも外国人観光客を中心に利用が進んでいる。こうした民泊ブームを支えているのが仲介サイトであり、外資系最大手のAirbnb(エアビーアンドビー)は5万件以上の宿泊先情報を擁している。

一方で法的な整備は遅れたままであり、このまま無秩序に民泊が拡がると、地域住民とのトラブルやごみ・景観など周辺環境の悪化が懸念され、すでに周辺住民からの苦情が自治体に寄せられている。

加えてインバウントによる訪日観光客急増による既存宿泊施設の需給関係逼迫への対応や、より安価なサービスを求める長期滞在型の外国人観光客のニーズ充足といった課題に応えるためには、良質な民泊施設の提供が急務となっていた。

こうした状況を受け、民泊法は、2017年3月10日に閣議決定され、国会審議を経て6月9日に成立した。その後10月には、施行令・施行規則などが定められ、細かいルールも明らかになった。

民泊法の規制内容

民泊法のポイントをまとめると以下のとおりである。

1.民泊の宿泊上限を年間180日とする
2.民泊業者だけでなく、仲介業者・管理業者も規制の対象としている
3.家主が同居していない場合には管理業者への委託を義務付ける
4.自治体は、生活環境の悪化が懸念されるときには、条例で営業地域・期間を規制できる

民泊法の成立を受け、自治体の中には条例制定の動きも出てきた。ここでは12月に成立した新宿区を例に、具体的な内容を紹介する。

新宿区ルールは平日営業の制限などが中心

「新宿区ルール」では、住宅専用地域での平日営業を規制し、月曜から木曜までは住宅宿泊事業を営むことができないとされている。住宅専用地域には、都市計画法で定める第1種・第2種低層住居専用地域だけでなく、第1種・第2種中高層住居専用地域も含まれる。

仮に敷地が、商業地域など複数の用途地域を跨ぐ場合でも、敷地の50%超が住宅専用地域に当たれば規制を受ける。その他事業者には、苦情が発生した場合の対応に関する3年間の記録保存、廃棄物の適正処理・生活環境悪化防止が義務付けられる。さらに周辺の住民には、「この家で民泊事業を営む予定である」旨を周知しなければならない。

新宿区より厳しい条例制定の提案も

条例制定の動きは新宿区以外にも拡がっているが、規制レベルはさまざまだ。中野区・横浜市などは、新宿区と同じように住宅地での平日営業を制限する。国家戦略特区として民泊を先行して受け入れた大田区は、一方でホテルや旅館が営業できない住宅地域や工業地での民泊営業を全面禁止した。

規制は平日規制やエリア規制だけではない。京都市が来年2月に議会提出をめざしている条例案には、家主が同居していない空き家に対する厳しい規制が盛り込まれている。具体的には住居専用地域にある空き家には、1月・2月の影響しか認めない。

京都市が条例制定を急ぐ背景には、無秩序な民泊の広がりに対する強い警戒感がある。京都市では旅館業法の許可を得ていないモグリの民泊営業がはびこり、ゴミや騒音に関する苦情が3000件近く寄せられ、もはや見過ごせない状況にある。一方で、家主が同居している住居や町家は、上乗せ規制の対象外として、硬軟両面の対応をとっている。

2016年度には外国人観光客が2000万人を超えた。2017年度も順調に伸びており、2020年度4000万人も視野に入ってきた。一方で観光客の受入れの成否は民泊が鍵を握っており、条例を含めた法的規制のもと健全な育成が進むか、今後の動向が注目される。(ZUU online 編集部)