中国ネット通販最大手の阿里巴巴(アリババ)は1月上旬、「2017年阿里巴巴知識産権保護年度報告」を発表した。偽物対策のレポートである。ニュースサイト「今日頭条」の記事から、その内容とネット民の反応を見ていくことにしよう。

なお同社の通販サイトは、B2Cの「天猫」とC2Cの「淘宝」に大別される。偽ブランド、偽物が問題となるのは、小企業や個人の出店する「淘宝」の方である。

24万店を強制閉鎖

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(画像=SL Chen / Shutterstock.com)

2015年、翌年に杭州G20サミットを控えていたころ、阿里巴巴グループの総帥・馬雲は「中国の偽物には、本物よりいいものがある」と言い放ち、欧米諸国の反発を買った。すでにふた昔前のことに感じるほど、時代の動きは早い。そして中国人に過去を懐かしむ風流はなく、過去のことはおくびにも出さない。

分析には、グループのクラウドコンピューティング会社「阿里雲」の“強大”な計算能力を利用したという。それによると、97%の偽物商品は、アップロードされるとただちに“封殺”された。根本的に売買が成立する前に立ち切っている。商売の流れに載せていないと強調する。

また各方面のさまざまな助力を得て、この1年で偽商品をアップした疑いある24万の淘宝店舗を強制的に閉鎖した。その識別には最新技術を投入しているという。

知的所有権と処罰

知的所有権の侵害に対しても処理能力は強化された。侵害の訴えは、その95%にあたる案件を、24時間以内に処理している。最も早かった案件は、1時間2分15秒であった。

こうした努力を積み重ねた結果、今では偽物の疑いのある商品は、取引1万回あたり1.49回の割合に過ぎない。また典型的な偽物摘発で勝訴した案件は、「人民法院十大民事行政案件」に入選し、人民の“教科書”となっている。

さらに全国23省の地方政府と連携し、偽物を作らせない、売らせない、取組みを行った。その結果、1606人を逮捕、摘発した商品は1328種、金額は43憶元にのぼった。阿里巴巴の偽物取締まり体制は、空前の高まりを見せた。もし偽物犯罪団が他の通販サイトへ移った場合には、収集したブラック情報を提供する。

ごく最近も淘宝サイト上で、偽の豆乳ミキサーが摘発された。訴えを受理した後、すみやかに返品処理を行った。そして「淘宝サイト上で、偽物被害に会った人はいますか。阿里巴巴を信頼して下さい。飲酒運転が一掃されたたように、我々は偽物を一掃します。偽物商品に隠れ場所はないのです」と格調高く宣言して結ばれている。

ネットユーザーは否定的

ネットユーザーの反応を見てみよう。否定的な見解が多い。

  • 淘宝の営業許可は不要だ。偽物は名前変えて、継続するだけだ。
  • 馬雲よ、私はもう売るつもりはないが、ロレックスの偽時計を58元で売ったことがあるぞ。
  • Tom Fordの口紅は99%偽物である。
  • 中国の偽物はなくならない。
  • 淘宝から淘汰された偽物商は、京東(ネット通販2位)など他のサイトに流れるだけだ。

一方肯定する意見もある。

  • 私は馬雲を支持する。
  • ネットショッピング歴10年だが、偽物に遭遇したことはないぞ。
  • 明らかに偽物とわかる商品は、今の淘宝にはないような気がする。

阿里巴巴の言い分を素直に受け入れる向きは少ないようだ。阿里巴巴と民衆の見解には距離がある。偽物と知っていて購入した経験を持つ人もたくさんいるからだ。当面、化かし合いを続けながら、偽物を減らしていけばよい、というスタンスだろうか。化かし合いは最も中国人の得意とするフィールドである。そこではみな生き生きとする。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)