決算なんて、見ても意味なし?
皆様の中には、こんな体験をされたことがある方も多いのではないでしょうか。
「決算短信で増収増益になっているのに、翌日株価が大きく下落した」
「減収減益で業績が苦しいと解説されているのに、株価は上昇した」
「新聞の朝刊で最高益更新!となっているのにその日の株価が下落した」
このような体験をされると、「決算分析なんて意味がないのではないか」とお考えになっても無理はないかもしれません。何を隠そう筆者も学生時代に自分が投資をしていた時に、同じような経験をして「企業決算なんて見ても無駄じゃないか!」などと考えていました。ただ、現在はそれはあまりにももったいないことであると考えています。企業の決算発表にはいくつかの見るべきポイントがあります。そのポイントを押さえると、株価が面白いように決算に反応して動いていることがわかります。本日はそのポイントの1つである、「業績は3ヶ月に分解して見る」を改めてご紹介します。
決算発表翌日の株価はどう反応した?
普段のレポートとは少し趣向を変えて、まずは皆様に簡単にクイズにお答えいただきたいと思います。以下では12月以降に決算を発表した比較的知名度が高いと考えられる10の銘柄について、決算短信の冒頭の一部をご覧いただきます。その10の銘柄の決算発表の翌営業日の株価が「①上がった」「②下がった」のどちらになったのかを予想してみてください。
いかがだったでしょうか。もちろんこの情報だけでは判断できない、というご意見もおありかと思いますがまずは気軽にお答えいただければと思います。答えは以下のとおりです。
減収減益だったしまむら <8227> が下落し、増収増益だった高島屋 <8233> やJフロントリテイリング <3086> 、ABCマート <2670> 、良品計画 <7453> が上昇といったところは正解された方が多いのではないでしょうか。一方で、増収増益のはずのハイデイ日高 <7611> 、リソー教育 <4714> 、ウエルシアホールディングス <3141> が揃って大きく下落し、減益とはいえ10%近い増収のコスモス薬品 <3349> が12%近く下落しているというのはなかなか予想が難しいかもしれません。そして前年同期比のデータが空欄のディップ <2379> は4%超上昇しています。
このように決算短信の企業の発表とその後の株価の変動にギャップがある1つの要因として、企業の決算短信の発表はすべて「累計値」で行われているということがあげられます。上記でご紹介した銘柄はコスモス薬品以外の9銘柄は第3四半期の決算発表です。具体的には3月―11月の9ヶ月分の業績の累計値が発表されています(コスモス薬品は第2四半期なので6月―11月の6ヶ月分)。当然ながら3月-8月の6ヶ月の業績は既に発表済みなので、今回の決算発表でわかった新たな情報は9-11月の3ヶ月についてのみなのですが、企業の短信での発表からはそれがわからないのです。少しレポートの本論からはそれますが、米国の上場企業は累計値と3ヶ月業績の両方を並べて発表します。日本の決算短信もそのように形式を変えてくれれば投資家にとっての利便性が広がると思うのですが・・・
投資家の皆様の利便性向上のために、筆者が開発した「マネックス銘柄スカウター」には3ヶ月に分解した業績を掲載しています。先ほどの10銘柄について3ヶ月に分解した業績を見ていきましょう。
以上のように累計値と直近3ヶ月の業績を比較すると、別の姿が見えてくる場合があります。直近3ヶ月の業績が増益だった6社のうち、5社は翌日に株価が上昇しました。増益だったにも関わらず、翌営業日に株価が下落したのはウエルシアホールディングスのみです。ウエルシアホールディングスの場合増収増益ではあるものの、営業利益の増益率が第1四半期や第2四半期に比べて鈍っており、そのあたりが株価下落の要因かもしれません。売上の伸びはむしろ増えていることから、営業利益の伸び鈍化は一時的な要因によるものかもしれない・・といった仮説を立てることができます。そして決算説明資料などを確認し、増益率鈍化の要因を調べていくと投資判断に役立つ可能性がありそうです。
一方で直近3ヶ月が減益だった4社はすべての銘柄が翌営業日に株価が下落しています。累計値では増収増益だったハイデイ日高やリソー教育も直近3ヶ月は減益です。これらの銘柄は足元の業績悪化が嫌気されて株価が下落した可能性がありそうです。このように、決算短信で発表される累計値のみ見ていてはなかなかわからないことも3ヶ月に分解してみることで初めてわかります。
ぜひ保有されている銘柄や気になっている銘柄の決算発表が行われたら、直近3ヶ月の業績をチェックする癖をつけていただきたいと思います。最後に「マネックス銘柄スカウター」で3ヶ月の業績を確認する方法をご紹介します。
マネックス銘柄スカウターで3ヶ月業績をチェックする方法
① マネックス証券にログインして気になる銘柄の株価画面にアクセスし、「決算」をクリック
②「銘柄スカウター」が起動するので、「財務分析」ページで「四半期業績」を確認する
益嶋 裕
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部マネージャー
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