資産づくりに欠かせないのが「投資」です。金融商品などへの投資と比較して安定した資産を増やしやすい不動産投資では、「物件探し」や「銀行探し」など各ポイントにおいて「正しい行動」が必要となります。不動産を活用した、40歳からの資産づくりのノウハウを学んでいきましょう。

(本記事は、洲浜 拓志氏の著書『貯蓄800万円「安心老後」』=ぱる出版、2018年1月11日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

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貯蓄800万円「安心老後」
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不動産による将来の資産づくり

不動産投資を平たくいうと、「現金という自己資本」と、「借金という他人資本」で、「収益不動産」を買って家賃収入を得ることです。

毎月の安定収入が、不動産投資の最大のメリットです。

そして、不動産投資の成功のカギは「キャッシュフロー」です。

キャッシュフローをコインに例えて説明します。

賃料から諸経費を引いたものが純賃料で、これはコインの表側です。毎月のローン返済が、コインの裏側です。

この表と裏が一体となって、初めてキャッシュフローが生まれます。

このキャッシュというメリットを目当てに、とにかく借金して買い増しすればよいと考えているリスク知らずの投資家が多いのが最近の実情です。

メリットとリスクを学んで、正しい不動産投資の認識を身に付けることが成功へのカギです。

不動産投資の意味

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(画像=PIXTA)

不動産投資には、資産形成としての意味があります。不動産投資を、他の資産形成として金融商品と比較してみましょう。

まずは株式です。例えば、上場されている株式を購入します。

株の価値は、企業の収益力や資産背景、事業の成長性、ライバル他社や置かれている市場成長性などの総合的な評価によって決まります。

株式投資はハイリスクハイリターンです。投資した資本が何倍にもなることもありますが、倒産してしまえばただの紙切れになってしまいます。

次に、外貨預金です。これも元本の保証はありません。ハイリターンではありますが、為替変動のリスクがあり、ハイリスクな商品です。毎日、国内外の政治や経済の情勢を把握し、為替の変動について常にチェックしなければなりません。

では、円預金はどうかというと、取引銀行別に1000万円までならば元本は保証されますが、金利があまりに低く、全く魅力がありません。

そこで、不動産投資を見てみましょう。不動産は現物の資産であるため、市場のショックに強く、元本がなくなったり紙切れになったりすることはありません。

収益不動産は、長期間にわたり安定的な収益を獲得できます。一方、空室リスク、賃料低下リスク、修繕費の発生や地震のリスクなどもあります。しかし、これらのリスクは、学び、実践して経験を積むことにより、限定的なものにすることができます。

また、不動産投資は、借入を行うことにより、自己資金の何倍もの投資が可能になります。これを「レバレッジが利く」といいますが、テコの原理のように、自分の資本よりも大きな投資ができることが大きなメリットです。

他の金融商品には、このような借入をして投資できるものはありません。このように見てみると、収益不動産による不動産投資は、他の金融商品や投資商品よりも優れた魅力があるといえそうです。ですから、不動産投資を金融商品として、利回りのみでとらえる投資家も多いのです。

不動産投資の正しい行動

優良な収益物件を探す場合の行動面についてお話しします。物件探しと目利き、そして銀行探しが重要となります。

会社員の場合、通常、収益不動産の売り情報はインターネットのサイトで入手できます。このサービスはここ10年くらいで相当普及しました。

私が物件探しをしたのも、会社員によく知られている「楽待」というサイトがきっかけでした。

毎日インターネットのサイトで情報を入手し、気になる物件があれば、メールを送ってその仲介会社の担当者とアポを取ります。そして、主に週末に現地を内覧します。

この時に、一緒に行動する不動産会社の担当者がカギです。不動産投資の経験のない若い担当者では信頼できません。

実際にお客様に何件も売った実績があり、自身も不動産投資の経験や知識のある優秀な担当者と親密になることが重要です。

そのような担当者や情報ルートを複数確保していくことで、安定的に情報が入手できるようになります。

インターネットには出せない、お得物件などの情報も入るので、情報源としては最も重要です。

私の場合も、インターネットに出ていない売り土地の情報をきっかけにアパート新築による不動産投資を始めることができました。

いい情報は出てこない?

不動産のオーナーが収益不動産を売却する理由は、不動産が老朽化して空き家が増えた、相続税の支払いのため、利益をいったん確保させるため、資産の買い替えのためなど、色々あります。これを理解して、売り側の仲介会社が情報を預かり対外交渉することになります。

そして、買う側のあなたは、その売却する理由を確認することが重要です。

売却価格はなぜその金額なのか?いつまでに売らなければならないのか?銀行の担保はいくら付いているのか?相続税の支払い期限は?その売主の決算の利益確定時期はいつなのか、などなど。

このような項目を仲介者会社に確認できれば理想的です。

そして、売る側の情報の根っこを捕まえると、不確かな情報に振り回されずに済みます。

売り側の業者の立場からいえば、必ず買える資金のあるお客様に売った方が確実にお金になります。

ですから、お金のあるところに情報が集まり、お金持ちはますますお金持ちになっていくわけです。

さらに、本当にいい情報は市場に出る前に資金力のある不動産業者が買っていくことがしばしばあります。

つまり、売側の不動産業者は常にオーナー側についているので、自分が買える物件が出てきた際には自社で購入できる立場にいるのです。

このようにして、情報が表に出ないで決まってしまうケースもあるわけですが、大丈夫です。世の中にはまだまださばき切れないほどの情報があります。

特にビルも所有者も高齢化し、取り壊したり相続税のために手放したりする場面が相当増えてくるのは事実です。

日頃から、休まず、焦らず、不動産仲介業者との交流を深めておくべきでしょう。

そして、あなた自身も年収を上げ、資金力を付けるべきです。

そうすれば、銀行も味方になってくれて、物件を購入できるようになります。

そうなれば、さらに優良物件情報が回ってくるようなプラスの循環になっていきます。

銀行探し

物件情報を入手して、投資する価値のある不動産を見つけたら、次に資金調達が必要となります。

他の金融商品と異なり、不動産投資ではこの資金調達が成否の分かれ目となります。

銀行には公共性、健全性、成長性、収益性、流動性の5原則があります。そして、銀行の資金規模や営業エリア、方針などによって融資姿勢は異なります。

そもそもアパートローンは長期の担保付きの融資です。無担保ローンよりも金額が大きく、担保付きなので、住宅ローンと同様に銀行にとってメリットの高い商品です。

しかし、住宅ローンと異なるのは、事業性のローンである点です。つまり、不動産市況などによって業績が左右されるリスクがあるため、銀行は融資姿勢が積極的になる場面もあれば、消極的になる場面もあります。

最近、特にリーマンショック直後の不動産の不景気や震災があり、日本から外国人が帰国してしまう時期がありました。この時期は不動産の取引が消極的になり、同時に銀行の融資姿勢も消極的になりました。

その後、アベノミクスの目玉である金融政策による、日銀のゼロ金利やマイナス金利のおかげで、銀行に資金があふれました。

一般企業への融資を強化するにも、国内企業は設備投資に消極的で、資金需要が乏しく、結果、銀行は不動産に関する融資で業績を伸ばしてきました。この構図は昭和60年代~平成初期のバブルの時とよく似ています。

東京オリンピックの発表もあり、特に都心部の地価は上昇基調を維持しています。

このような流れで、各銀行は個人のアパートローンをはじめとする不動産担保融資の新規貸金を増強し続けてきました。しかし、このような状態はいずれ飽和状態となり、長く続かないでしょう。

銀行が融資することによって参加者が増えるため、不動産の価格が吊り上がる傾向になります。

そして高くなった不動産市場を見て、売主はそれまでよりもさらに高く売ろうとします。このような流れで、収益不動産の価格が高騰してしまい、高すぎて投資メリットの少ない不動産が市場に売れ残る状況となっています。

銀行自体も、新規貸金に占める不動産業貸金への比率や、総貸金残高に占める不動産担保貸金の残高を、貸金の種類が一部に偏らないようにバランス感覚で管理しています。(ポートフォリオ管理などといわれます)。

不動産関係の融資が一定程度行きすぎると、振り子が反対に振れるように、融資に消極的になるというのが一般的な銀行の傾向です。

すでに一部の銀行では、不動産融資の積極的な姿勢が終わり始めています。

購入したら、管理会社が重要

不動産投資では、あなたは買ったアパートのオーナーとして、運営業務にあたることになります。

収益不動産の管理や運営業務は多岐にわたり、専門性や柔軟性、そして交渉力なども求められます。

そこで、強い味方になってくれるのが不動産の管理会社です。

所有不動産が1棟だけで、自分で管理できる場合は別ですが、大変な業務となるので、通常は管理会社に委託します。管理会社の役目はまず、建物の管理です。

緊急の修繕や、設備の不具合によるメンテナンスなど、建物の維持管理に詳しいと安心です。

次に、入居者の管理があります。入居者の募集から、毎月の家賃管理を行い、退出する時には立ち会って、原状回復作業を行います。

管理会社の手数料は、家賃の回収を含む場合は家賃の5%、含まない場合は家賃の3%というのがおおよその相場です。

また、空室となった場合に入居募集をするのも管理会社の役目です。

しかし、顧客を付けることが不得意な管理会社もあります。そのような場合には、「客付け業者」として地元で入居させるのが強い業者とタッグを組んで、空室を埋めてくれます。この場合、埋まる可能性は高まりますが、客付け業者への手数料が通常の家賃の2~3倍になることもあるので、要注意です。空室よりもましと判断すればやった方が良いのですが。

(私も、新築4年目に学生が6名一気に退出した際に、この方法で手数料を多く払いました。おかげで空室は埋まりましたが。)

管理会社は、決して大手の不動産業者が良いとは限りません。

転勤の多い大手不動産業者では、いい加減な対応をされることもよくあります。

逆に地場の不動産業者であれば、地元の風評が命取りになりますので、通常は手を抜くようなことはしません。

大手の不動産会社の看板を掲げていても、地元の不動産業者がフランチャイズ契約をしている場合もあります。

地元の八百屋や酒屋が大手コンビニの看板を掲げているような場合と似ています。管理会社とは、建物管理契約を必ず交わすべきです。

修繕のコストや、トラブルのリスクなどが発生した際に、家主、借主、管理会社のいずれがどのような取り決めで負担するのか。

このあたりが明確でないと心配で任せられません。

通常は契約書の後ろに別表で一覧表があり、修繕などの費用について、オーナー負担、入居者負担、管理会社負担など、わかりやすく表示してあるはずです。

もし管理会社に不安を感じたら、遠慮なく管理会社の切り替えの検討を進めます。

売買の際に管理会社の指定が条件となっていることも多いのですが、契約内容などをよくチェックして、家主に不利な内容や、あいまいな内容になっていないか、見ておくとよいでしょう。

40歳、2000万円の自己資金で不動産投資スタート

収益不動産の購入で銀行を利用する時、法人と会社員では何が違うでしょうか?

まず法人の場合、不動産会社だけでなく一般企業も、業績の安定のために収益不動産を買うことがあります。

そして銀行を利用する場合は、通常の一般的な融資となります。業績を分析されて、年齢別の資産形成返済能力や担保力を審査されます。

一方、会社員が収益不動産を購入する場合、銀行の「アパートローン」を利用することになります。

個人の給料や勤務先、年齢、資産背景を総合的に見て審査します。ここで問題があります。

法人には寿命はありませんが、会社員には定年という寿命がある点です。そもそも、会社員が不動産投資をするのは、リタイア後の年金では生活が成り立たないという不安を解決するためです。

そしてそのためには、現役時代に資金を作ったりローンを利用したりすることが必要です。

リタイアしてからでは資産を作ったりローンを利用したりするのはまず無理です。

では、老後に備えて現役のどの段階で、どのように資産形成の準備をすればよいのでしょうか?

健全な不動産投資で備える方法は?

将来の老後資金を賄うための標準的な投資モデルは、40代で自己資金2000万円を用意して不動産投資を始めるという設定です。

そして、「標準的な投資モデル」として、次のような不動産投資を想定します。

価格が6500万円の新築木造2階建てアパートを購入。

・自己資金2000万円
・ローン4500万円(期間30年、金利1.5%、毎月返済額16万円)
・家賃収入6・5万円×6室=39万円
・諸費用(管理会社への管理手数料、火災保険料、固定資産税・都市計画税、修繕費、入居者を募集するための広告料など)5万円

不動産投資の最終的な成果は、税金を別にすると、純賃料(1)からローン返済額(2)を引いたものです。これがキャッシュフローです。

コインに例えると、純賃料はキャッシュフローというコインの表です。115この場合、コインの表(=純賃料(1))は賃料39万円諸費用5万円=34万円。

コインの裏(=返済額(2))は16万円。キャッシュフローは(1)(2)=18万円/月で、年間216万円となります。この場合、ローン返済後のネット利回りは216万円÷6500万円≒3%となります(この3%を実質利回りまたはネット利回りといいます)。

アパートは何棟あればよい?

既述の「標準的な投資モデル」では、6500万円のアパートで毎月18万円のキャッシュが得られます。

老後の生活資金の最低水準の場合の不足額である毎月10万円は十分賄えることになります。

また、2棟あれば36万円ですから、ゆとりある水準の場合の不足額23万円も賄えることになります。

もし、リタイアするまでに3棟持てれば、18万円×3棟=54万円となります。

現金ベースで年間612万円程度になるので、安定した夫婦の老後の生活が期待できます。

実は、1棟目を買うよりも2棟目、2棟目よりも3棟目を購入する方がより簡単になります。

どういうことなのか説明します。

40代で購入した1棟目の賃料の年間合計は(18万円×12ヵ月=)216万円です。これを10年間保有すれば自己資金2000万円が用意できるので、次の2棟目を購入できます。

そして3棟目は、同様の物件とすれば(216万円×2棟=)年間432万円ですから、半分の5年で自己資金2000万円が用意できます。

つまり、最初に2000万円の自己資金を用意して、安全な条件で不動産投資を始めれば、2棟目以降の投資に必要な資金がもっと楽に調達できるということです。

自己資金500万円での資産形成プラン資産形成プラン

標準的な不動産投資の成功パターンは、最初に自己資金2000万円が必要という前提でした。

それでは、自己資金が40歳で500万円しかない人はどうしたらよいのでしょうか?

大丈夫です。自己資金2000万円を作るロードマップに従って、スタートを切ればよいのです。

40歳で自己資金500万円

自己資金が500万円ならば、毎年200万円程度の貯金をすればよいのです。

夏と冬のボーナスで各50万円、それと毎月8.3万円の定額積立預金をすれば作れます。

40歳から始めれば、8年目で自己資金2100万円が貯まります。

そして9年目に、自己資金2000万円を使って上述の標準的な収益不動産(6500万円、年間ネット収益216万円)の1棟目を購入します。

1棟目は毎年216万円のキャッシュを生みます。

これと毎年の積立預金200万円があれば、合計416万円ですから、もう5年(54歳)で自己資金2000万円が用意できます。

つまり2棟目を買うことが可能になります。

このように、40歳で500万円しかなくても、毎月の積立預金で自己資金を作れば40代で1棟目が買えますし、1棟目の収入と積立預金のダブル収入により、50代で2棟目も可能なのです。

以上、自己資金500万円でも不動産投資は準備できます。これが高齢になるほど、自己資金を作るための時間が足りなくなってしまいます。ですから、不動産投資の検討は早いに越したことはないと考えられます。

不動産投資の成功のポイントを整理すると、次の通りです。

・収益不動産は借入を利用して大きく投資できる、魅力ある投資商品である。
・不動産投資は「不動産賃貸事業」であり、プロとしての自覚を持つべき。
・キャッシュフローはコインの表(純賃料)と裏(ローン返済額)から構成される。
・「ざっくり検証」によって、投資の良し悪しを判断できる。
・新築・中古、アパート・マンション、都心・地方などは、1つのモノサシ「ざっくり検証」で判断できる。
・物件を探す際は、インターネットの専門サイトと信頼の置けるプロの仲介業者が大事。
・自己資金が2000万円あり40代なら、有利な不動産投資で成功できる。
・自己資金が500万円でも、定期積立預金などで成功できる道筋は見いだせる。

洲浜拓志(すはま・たくし)
洲浜不動産鑑定士事務所代表。株式会社財務部代表取締役。昭和39年島根県生まれ。京都大学農学部卒業。昭和63年メガバンクに入行し、500社以上の中小企業向け融資に取り組む。金融経験(三井住友銀行と東京スター銀行)22年と、不動業界での経験(リノベーション、不動産鑑定、投資コンサルティング)を生かして、財務と不動産の専門家として独立。セミナー講師「不動産ドクター」(登録商標)として、「不動産投資」「相続」「空き家」などの課題の解決方法などを公開。自らの不動産投資及び大家業の経験から再現性のある投資手法を確立し、不動産投資家や大家さんのサポート業務も行う。最近は中小企業の財務部門の受け皿として、(株)財務部を設立。資金調達や財務改善などの経営コンサルティングも行っている。