2009年に発行が開始されたビットコインは仮想通貨の代表格として長く「1強時代」を築いてきた。仮想通貨全体の流通量の90%以上を占めていた時期も続いたが、しかし現在においては既にシェアは50%を割っている。台頭しつつあるのが「イーサリアム」「リップル」などのオルトコイン(アルトコイン)だ。

オルトコインとは何なのか?

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(画像=Webサイトより)

オルトコインとは英語で「Altcoin」と書く。これは「Alternative Coin(オルタナティブ・コイン)」の略語で直訳すると「代替通貨」という意味だ。仮想通貨業界ではビットコイン以外の仮想通貨を総称して「オルトコイン」と呼ぶ(※日本語表記では「アルトコイン」と書いている場合もある)。

仮想通貨は既に1000〜1500種類が存在すると言われている。つまり種類数で言えば、圧倒的にオルトコインの方が多いということになる。代表的なオルトコインは、イーサリアム(ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)、カルダノ(ADA)、ライトコイン(LTC)、ネム(XEM)などだ。

では現在、ビットコインとオルトコインの市場規模はどのようなバランスになっているのか。この記事では仮想通貨・暗号通貨の市場規模を掲載しているCoinMarketCapのデータを基に検証していきたい。

市場規模1兆円以上のオルトコインは7種類

市場規模のデータは2018年1月22日時点のもので、桁数が多いので数字は100億円未満を四捨五入した。ちなみにビットコインの市場規模は21兆6400億円で、全仮想通貨の中で首位となっている。

市場規模で見た場合、オルトコインの中でトップはイーサリアムだ。イーサリアムの市場規模は11兆3900億円でビットコインの半分以上となっている。イーサリアムは仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)でよく使われており、急速にその流通量を伸ばしてきた経緯がある。

仮想通貨全体の市場規模において第3位はリップルで5兆9600億円。その後は、4位はビットコインキャッシュで3兆3100億円、5位はカルダノで1兆7200億円、6位はライトコインで1兆1700億円、7位がネムで1兆700億円となっている。市場規模で1兆円を超えているオルトコインは6種類、ビットコインを加えた仮想通貨全体では7種類ということだ。

市場規模1000億円以上のオルトコインも乱立

市場規模が1兆円未満であるものの、1000億円は超えるオルトコインについても触れておく。円やドルなどの通貨に比べて、仮想通貨は値動きや取引量の変化が激しい。現在は「2軍」扱いのオルトコインが今後、イーサリアムやリップルなどが在籍する「1軍」に昇格する可能性は十分にある。

市場規模が1000億円以上1兆円未満のオルトコインは18種類ある。下記に羅列していく。市場規模の金額のうしろの丸カッコ内は、仮想通貨市場全体における順位を表す。

市場規模が大きい順に羅列すると、
ネオ(NEO)が9400億円(8位)
ステラ(XLM)が9200億円(9位)
イオタ(MIOTA)が8500億円(10位)
ダッシュ(DASH)が7200億円(11位)
モネロ(XMR)が5900億円(12位)
ビットコインゴールド(BTG)が4000億円(13位)
クアンタム(QTUM)が3500億円(14位)
イーサリアム・クラシック(ETC)が3400億円(15位)

18種類の中で市場規模が3000億円を割っているのは、
リスク(LSK)が2900億円(16位)
ヴェチェーン(VEN)が2600億円(17位)
ライブロックス(XRB)が2500億円(18位)
ジーキャッシュ(ZEC)が1700億円(19位)
ヴァージ(XVG)が1700億円(20位)
シアコイン(SC)が1500億円(21位)
ストラティス(STRAT)が1400億円(22位)
バイトコイン(BCN)が1400億円(23位)
スチーム(STEEM)が1200億円(24位)
ビットシェアーズ(BTS)が1000億円(25位)
だ。

仮想通貨投資を考える上でも、イーサリアムなどの1軍部隊はもちろん、この将来1軍に昇格する可能性がある2軍の仮想通貨の動向についても注視していきたいところだ。

オルトコイン市場規模1位のイーサリアム

ではここからはオルトコインの“1軍”と“2軍”の面々について、それぞれ詳しく紹介していきたい。

まずオルトコインで市場規模第1位のイーサリアム。イーサリアムは2014年7月に誕生した仮想通貨で、取引の契約内容や取引条件なども仮想通貨の取引台帳である「ブロックチェーン」に紐付けてられていることが特徴の一つだ。この形態は「スマートコントラクト」と呼ばれる。イーサリアムが仮想通貨を使った資金調達手段であるICOでもよく利用されている理由の一つでもある。

「イーサリアム」という名前が付く仮想通貨には、「イーサリアムクラシック」もある。イーサリアムの市場規模21兆6400億円に対して、イーサリアムクラシックの市場規模は仮想通貨全体で15位の3400億円となっており、60倍ほどの差がある。

実はイーサリアムは2016年7月、「イーサリアム」と「イーサリアムクラシック」に分裂している。このきっかけがThe DAO事件というイーサリアムの盗難事件。この事件ではハッカーによってイーサリアムが日本円にして50億円ほど盗まれた。この後の対応をめぐってイーサリアムの開発陣の中で意見が割れ、イーサリアムは結果的に2つに分裂することになった。

「イーサリアム」と「イーサリアムクラシック」は全く別の仮想通貨である。そして、こういった分裂をしたのはイーサリアムクラシックだけではない。ビットコインもイーサリアムのように分裂を起こしている。詳しくは後述するが、市場規模4位の「ビットコインキャッシュ」もビットコインの分裂によって誕生した仮想通貨だ。

銀行間送金への活用も期待のリップル

イーサリアムに続いて市場規模が3位となっているのがリップルだ。

仮想通貨では通常、中央銀行のような中央集権的な管理組織は持たないが、リップルの場合はアメリカのリップル社が発行主体である。またリップルは仮想通貨取引の処理速度がほかの仮想通貨に比べて格段に早いとされる。そのため取引開始から決済完了までに時間が短く、銀行間の送金などへの活用も期待されている。

この期待感の高まりには理由がある。この米リップル社の技術を使って、既に日本と韓国の金融機関の間で送金実験が始まっているからだ。日本からは、りそな銀行や三井住友銀行などが参加している。この送金実験では仮想通貨は利用せず、米リップル社のブロックチェーン技術を使って行われているが、将来的には仮想通貨の活用を視野に入れているという。

リップルの市場規模はイーサリアムと拮抗している。オルトコインの中では2強と言っていいだろう。

ビットコインから分裂して誕生した仮想通貨

仮想通貨市場で4番目の市場規模を誇っているのが、ビットコインキャッシュだ。このビットコインキャッシュが、前述したようにビットコインの分裂によって生まれた仮想通貨の一つである。ビットコインはこれまでに3度の分裂を繰り返している。その最初が2017年8月で、これによって誕生したのがビットコインキャッシュとなる。その後は2017年10月、そして11月にも分裂は繰り返された。

ビットコインキャッシュの誕生の背景には、ビットコイン取引が急増したことによる取引処理システムの改善が必要になったことと、ビットコインを採掘(マイニング)する採掘業者(マイナー)の思惑があった。ここで少し、この採掘についても触れたい。

採掘とは、仮想通貨の取引を承認し、その報酬として新たに発行された仮想通貨を得る行為を指す。仮想通貨では保有者が行った取引はマイナーによって承認され、初めて完了する。1回の取引につき1回の承認行為が必要になるが、その承認権は難解な数学のパズルをいち早く解いたマイナーに与えられる。つまり、マイナーはその競争に参加しても、その競争に勝たなければこの承認権が与えられず、タダ働きになってしまうわけだ。

ビットコイン分裂の背景に採掘業者の思惑

この採掘ビジネスは世界的にその規模を広げ、マイナーは飛躍的に増えた。そのため、承認機会というのは相対的に減った。そこでマイナーは、ビットコインが分裂したら新たな仮想通貨が生まれ、売上機会が増えるということに目をつけた。マイナーの思惑が分裂という結果に結びついたわけだ。

ビットコインがビットコインキャッシュに分裂を起こした際、仮想通貨の取引所はビットコインの保有者に対し、従来のビットコインの保有量に応じたビットコインキャッシュをユーザーに付与した。ビットコインの時価総額とビットコインキャッシュの時価総額の合計が従来の時価総額と相違ないように付与したので、この分裂によって全体の市場規模が増えたということはない。

しかし、ビットコインもビットコインキャッシュも走り出しは同価値だったが、その後は大きくその価値の差を広げている。

第3世代の仮想通貨カルダノとは?

市場規模で第5位となっているのがカルダノ。このカルダノは「第3世代の仮想通貨」という触れ込みで2017年9月に誕生した仮想通貨である。

カルダノは、これまで過去に発生した仮想通貨の諸課題をクリアすることを目指し、学術論文や学会発表を経て設計された仮想通貨だ。このことを目標に据えてカルダノ財団が2015年2月に設立され、2016年9月にカルダノの開発がスタート。稼働実験などを経て、2017年9月に仮想通貨カルダノの発行が始まった。

カルダノは自身の仮想通貨を「第3世代」を呼んでいる。カルダノの言う第1世代とは仮想通貨の黎明期に発行が開始されたビットコイン、第2世代とはスマートコントラクトなどの仕組みが実装されたイーサリアムなど。第3世代の仮想通貨とは、第1世代と第2世代の仮想通貨における技術的課題や知見を解決・集約した仮想通貨のことを指している。

カルダノは2017年9月のリリース後、すぐに仮想通貨取引所に上場し、市場取引が開始された。上場直後にカルダノの価値は40倍ほどに急騰し、仮想通貨業界でも大きな話題となった。

立ち位置が揺らぐライトコイン

続いて仮想通貨の市場規模で第6位に位置しているライトコインだ。

ライトコインの歴史は仮想通貨の中でも古い方に分類される。ビットコインが誕生したのが2009年1月、ライトコインの誕生は2011年10月だ。ライトコインの特徴は、ビットコインの構造的欠点とも言える箇所の修正を目的の一つに据え、開発・発行されたことにある。

具体的にはビットコインより取引の承認時間が短くなることや、そのことに関連して送金手数料も安くなることを目指して開発が進んだ。実際にその目的はライトコインのシステムに反映される形として達成され、注目を集めていた。しかし近年、ライトコインのその立ち位置が揺らぎつつある。それはなぜか。

ビットコインからの分裂で誕生したビットコインキャッシュの存在がその理由の根っこにある。ビットコインキャッシュは取引手数料を安く抑えられるようにシステムが設計されており、実質的にライトコインと競合する仮想通貨となった。さらに「ビットコイン」という名前を冠することからブランド力も強く、マーケティング的な観点から見ても優位性があった。

2018年1月時点で、ライトコインの市場規模はビットコインキャッシュの3分の1ほどにとどまっている。

「平等性」を重視した仮想通貨ネム

市場規模が1兆円を超える仮想通貨の中で最後にランクインしているのがネムだ。

このネムは日本人も開発に関わっていることもあり、日本国内でも人気が高い。また、ほかの仮想通貨とは異なる大きな特徴と持っている。それが通称POI(Proof of Importance)と呼ばれる「報酬システム」が導入されていることだ。ネムは「平等」をキーワードの一つに開発された仮想通貨で、この平等性をPOIというシステムの導入によって仮想通貨ネムに備えた。

このPOIによって説明したいと思うが、その前にこれまで記事の中でも紹介してきた採掘(マイニング)について思い出してほしい。採掘とは、ビットコインなどの仮想通貨の取引を「承認」することを指した。この承認行為を行うには難解なパズルを最初に解く必要があり、世界中で採掘業者(マイナー)が競争を繰り広げていることも説明してきた。

そしてこの競争に勝つためにはマイニング専用に最適化されたハイスペックのコンピュータを大量に用意する必要があり、電力も大量に必要とする。このことから、より資本力を持つ主体がマイニングビジネスにおいては優位に立つことができ、実質的に個人が参入する余地が残らなかった。

つまり、資本力が大きいほど、マイニングビジネスでも優位性を持つということだ。しかしネムはこの状態を不平等だとし、別な報酬形態を導入することを目指した。この報酬形態がPOIと呼ばれるものだ。

POIの場合はまず、ネムという仮想通貨の保有量や使用量などを含めて、ネム保有者のネムに対する「貢献度」を数値化する。そしてこの貢献度に応じて、取引の承認行為に対する「報酬」が得られやすい仕組みを構築している。

ネムでは保有者自らが承認行為を行うこともできるが、この承認行為を第三者に委任することもできる。そのためネムは、「持っているだけで仮想通貨が新たに得られる仮想通貨」などとも言われている。

日本生まれの仮想通貨にも注目が集まる

ここまで市場規模が日本円で1兆円以上のオルトコインについて説明してきた。それぞれの仮想通貨の市場規模は日々変動が激しい。そのため、市場規模の順位の変動も今後も頻繁に起きると考えておくべきである。新たな仮想通貨の誕生も頻繁なため、今まで聞いたこともなかったオルトコインが台頭するケースも今後も起きるだろう。

最後に、日本生まれの仮想通貨の市場規模についても説明しておく。日本の仮想通貨として最も有名な仮想通貨がモナコイン(MONA)だ。日本の掲示板サイト「2ちゃんねる」のユーザーによって開発された仮想通貨として知られ、2014年1月に発行が開始されている。日本国内ではモナコインでの支払いに対応した店舗も少しずつ増えてきている。そのほか、サクラコイン(SKR)やビットゼニー(ZNY)といった日本発の仮想通貨もある。

仮想通貨市場は今後も拡大を続けると思われ、仮想通貨事業への参入に積極的な姿勢を示している日本の企業も多い。ビットコインの1強時代から多様な仮想通貨が台頭する時代を迎える中、より広い視野で情報を集めていくことの重要性が一層増していると言えるだろう。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)