世界最大規模のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートが楽天と提携し、年内に米国内店舗で電子書籍端末とカタログ販売を開始、第3四半期に日本での食料品ネット通販強化に乗りだす意向を明らかにした。

同社は消費者の購買意欲をあおる意図で、複数のサイトでクチコミを共有する「シンジケートレビュー」を採用しているほか、Google、Uberなど、IT企業の協力のもとテクノロジーの導入を進めることで、巨大化するAmazonに対抗している。

ウォルマートが楽天と提携する狙い

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(画像=ウォルマートWebサイトより)

2017年8月、それまでオンライン販売に専念していたAmazonが食料品チェーンのWhole Foods買収を完了させた。 米国内に5000以上の店舗をもつ ウォルマートのような路面小売業者にとっても、深刻な脅威となりかねない。

ウォルマートはこの挑戦を受け、日本最大のeコマース楽天と提携を結び、国内における電子書籍販売強化のほか、日本での食料品ネット通販事業を強化する意向を明らかにしている。米国内店舗での電子書籍端末とカタログの販売開始は年内、日本での食料品ネット通販てこ入れは第3四半期の予定だ。

同社はAmazon対抗策としてテクノロジー企業との提携も進めている。昨年はGoogleと提携し、「Google Home」から音声で商品を注文できるサービスの開始を発表し、宅配サービスの拡大を狙い、Uberとも提携している(ブルームバーグ2018年1月26日付記事 )。

電子書籍販売に関しては、ウォルマートというよりもAmazonと楽天の一騎打ちという印象を受けなくもない。米国における電子書籍市場シェアの83%をAmazonが占めているというが、楽天Koboの利用者は世界中で3000万人を超えている。どちらに勝敗が上がるのか、非常に興味深い戦いとなりそうだ。

注文プロセスをデジタル化 ミレニアル世代の人気を勝ち取ったドミノピザ

Amazonの脅威を感じている路面小売・飲食業者はウォルマートだけではない。ドミノピザは注文プロセスにテクノロジーを採用することで、2000年代初期~中期の売上低迷期を乗り越えた。

2014年には音声で注文できるモバイルアプリサービス「ドム(Dom)」を開始。翌年には携帯ショートメッセージやTweeterから絵文字を使って注文できるサービスも提供。ミレニアル世代でドミノ人気を加速させた。

また総合POS(販売時点情報管理)システム「ポーズ(PULSE)」も導入し、運営コストの大幅削減に成功している(ハーバード・ビジネススクール2016年11月18日付記事 )。

「高品質で低価格な商品」はコストコが優勢 Amazonは利便性で勝負?

Whole Foods買収に辺り、Amazon国際消費者部門のジェフ・ウィルク氏は、「高品質で知られるWhole Foodsの評判を落とすことなく、低価格を実現する」と宣言している。「高品質な優良ブランド商品を低価格で販売」を看板にしていた卸売チェーン、コストコにとっては、けっして歓迎すべき動きではないはずだ。

しかし現時点では、Amazonがコストコから激安タイトルを奪った形跡はない。昨年11月にAmazonとコストコで同じ38種類の商品を購入し、価格差を調べたLendeduの報告書 によると、コストコの商品の方が平均56.48%安かったという。特にAmazonが本腰をいれている食料品は95.82%、飲料品は120.15%高いとの結果だ。

コストコが品質を下げることなく低価格を維持できれば、今のところAmazonに王座をうばわれることはなさそうだ。しかしACSIファンズのディレクター、ジョン・ブレクマン氏は「コストコは価格で勝負しているが、Amazonは利便性で勝負している」と指摘している。つまり消費者の最優先事項が価格から利便性に移行した場合、Amazonとコストコの立場が逆転する可能性も考えれるということだ(フォーブス誌2017年12月6日付記事 )。

複数のサイトでクチコミを共有する「シンジケートレビュー」で対抗

Amazonの強さは、消費者の生の声を聞ける口コミクチコミの多さにも起因する。 米国の2017年第3四半期の小売販売は8.4%がネットショッピングだったが(米国商務省2017年11月17日付報告書) 、消費者の55%がネットショッピングする際、Amazonを一番最初にチェックするそうだ。これらの消費者が商品とともに、ほかの消費者からの評判を調べているのは間違いない。ネットショッピングにおいて、実際に商品やサービスを体験した消費者によるクチコミが、どれほど購入の決め手になるかは周知の事実である。

CGM(消費者育成メディア)ソリューションを提供するターン・トゥ・ネットワークス(Turn To Networks)のジョージ・エーバーシュタットCEOは、「フィードバックの内容に関わらず、クチコミの多い商品やサービスほど売上が高い」と語っている。口コミクチコミが多いほど、「沢山の消費者に使われた商品」という安心感につながる人間心理だろうか。

そこでウォルマートを含む小売業者間で、複数のサイトでクチコミを共有する「シンジケートレビュー」の利用が活発化している。

ターン・トゥ・ネットワークスやバザー・ヴォイス(BazaarVoice)、パワー・レビューズ(PowerReviews)などの企業は、ネットショッピング利用者にeメールでクチコミの投稿を促進するソフトウェアを提供している。投稿された口クチコミは販売元のブランドや小売店だけではなく、同じブランドや商品を販売するほかの小売店でも共有される(USATODAY 2017 年12月17日付記事 )。

こうすることでクチコミ王国Amazonに対抗する土台作りができるというわけだ。Amazonの多角化経営が勢いを増す中、その脅威は様々な分野に押し寄せている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)