金融に少し詳しい方なら、イェスパー・コール氏の名前をお聞きになったことがある方は多いのではないだろうか。JPモルガンやメリルリンチで調査部長などを歴任し、テレビ東京のワールドビジネスサテライトにも出演している。現在は、ETFに特化した運用会社であるウィズダムツリージャパンのCEOに就任している。

そのコール氏は、昨年12月、2018年に起こるかもしれない10大サプライズを発表した。その中でも、今回は、「1ドル150円になる」「トヨタがテスラを買収」の2点に絞り、その中身を見ていこうと思う。

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(画像=ZUU online編集部)

1ドル150円

コール氏は、2018年は日米の金融政策の違いが顕著になり、ドル円レートは大きく円安に振れるかもしれないと述べている。段階的な利上げが見込まれる米国のFRBと、ゼロ金利政策を堅持する日本の日銀によって、金利差が広がり、ドル円レートに波及するというのだ。

アメリカ議会は、トランプ大統領の減税政策と今年11月の中間選挙に向けて、大規模な連邦予算の積み増し案の上程の最終調整に入った。今後2年間で3千億ドル(約33兆円)という大規模なもので、国防費や老朽化した社会的インフラの再整備に充てる、という内容だ。

トランプ政権は、減税やインフラ投資を公約に掲げており、財政赤字の拡大懸念は、元からの懸念材料だった。今までは、公的支出の拡大が経済を刺激するという見方がマーケットでは支配的だったため、NYダウも上昇の一途をたどってきたが、FRB議長が雇用を最重要視するイエレン氏から、金融理論に偏らない現実派のパウエル氏にバトンタッチされ、景気や物価の判断を上方修正し、出口戦略の加速化が進むのではないかという観測が浮上している。

2018年2月時点では、為替は円高に振れているものの、「中央銀行には逆らうな」という相場格言もある。今後、日米の中央銀行の姿勢の違いが鮮明になるのであれば、今は絶好のドルの仕込み時なのかもしれない。

トヨタがテスラを買収

ご存知イーロン・マスク氏が率いる、テスラモーターズがトヨタに買収されるのでは?というのがコール氏の予想の一つだ。イーロン・マスク氏は、宇宙開発にも多額の投資を行い、先行投資が嵩み、赤字補てんと新たな設備投資には、増資と社債発行で切り抜けてきた。それとは別に全額前金で新型ロードスターの予約金が約2800万円、EVトラックが約2200万円と発表され、これを先行投資のお金として活用するようだ。

このようにベンチャー企業によくある資金調達の問題に直面しているテスラだが、アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアック氏が「イーロン・マスクやテスラの言うことは何も信じない」と発言したと報じられている。これは、今まで過去に「2016年末までにアメリカで全自動運転カーを実現させる」と発言したにも関わらず、イスラエルのセンサーメーカーとの関係を決裂させるなど、言行不一致を批判している。ロードマップが予定通りいかず、その結果積みあがった仕掛り在庫や増大する損失引当金などで赤字経営が続き、業界の中では、いずれかは身売りするのでは、との見方も広がっている。

一方のトヨタだが、2017年末に2025年頃までにすべての車種を電動車にするという次世代戦略を明らかにした。この電動車には、HV(ハイブリッド車)やFCV(燃料電池車)も含まれるが、進むべき方向性として、EV(電気自動車)を強く意識した計画だ。このように、テスラがいよいよ資金繰りに窮した時、トヨタが電気自動車の覇権を握るべく、救いの手を差し伸べることは、大いにあり得ることだ。

びっくり予想の範囲内ではあるものの…

2018年コール氏のこの2つの予想はどうなるだろうか?びっくりというくらいなので、ありふれた予想とはかけ離れた内容だが、未来のことは誰もわからない。読者の皆さんも想像力をフル回転して、考えてみてはいかがだろうか。

マネーデザイン代表取締役社長 中村伸一
学習院大学卒業後、KPMG、スタンダードチャータード銀行、日興シティグループ証券、メリルリンチ証券など外資系金融機関で勤務後、2014年独立し、FP会社を設立。不動産、生命保険、資産運用(IFA)を中心に個人、法人顧客に対し事業展開している。日本人の金融リテラシーの向上が日本経済の発展につながると信じ、マネーに関する情報を積極的に発信。