米国の消費者1649人を対象に実施した調査から、5人に2人が家計簿でお金の管理をしているが、貯蓄法やお金に対する考え方は年齢層によってかなりの差があることが分かった。 緊急支出の際、中高年層(35歳以上) は「貯金をくずす」と答えたが、若年層(18〜34歳)は「もち物を売ってお金を作る」と答えている。また若年層の7割が金融リテラシーサービスなどオンラインでお金の知識を積んでいるにも関わらず、投資や銀行に預けるよりも「布団の下など家の中にお金を隠す」という古典的なへそくり手段を、2割が実践している点も興味深い。
調査は米国消費者信用協会(NFCC) が2017年3月、ワシントン州のシアトル、スポケーンおよびオレゴン州のポートランドで暮らす、18歳以上の成人から収集したアンケート結果に基づきまとめたもの。
家計簿と貯蓄は別もの?老後の貯蓄、貯蓄口座の利用が減少
家計簿をつけている割合は過去10年あまり変動がなく、46%と日本とほぼ同じ水準(マイナビ2016年9月18日記事参照 )。「家計簿をつけていないし、毎月いくら使っているか分からない」のは14%で、こちらも過去10年ほぼ同じ割合だ。
しかし貯蓄となると話は別のようで、「昨年と同じぐらい貯蓄している(54%)」と答えた消費者は4ポイント減。「老後のため以外の貯蓄をしている(68%)」「貯蓄口座を利用している(65%)」消費者も各1ポイント減った。
貯蓄法として401kプランの人気が高いが(34%)、「布団の下や額の裏に隠している」といった古典的なへそくり法(12%)も根強い。対照的に投資やミューチュアルファンドの利用(26%)は昨年から6ポイント、IRA(26%)も3ポイント減という結果だ。
これには年代による貯蓄傾向の差が影響しているものかと思われる。401kプランを利用して老後の貯蓄をしている割合は中高年層(35%)の方が若年層(27%)より高く、布団の下にお金を隠している割合は、若年層(19%)の方が中高年層(10%)よりはるかに高い。
また若年層の42%が「昨年よりもっと貯蓄している」と答えているが、中高年層で老後のため以外の貯蓄もしている割合は70%にもおよぶ。年齢や所得差などの影響で貯蓄金額や目標が異なるのは不思議ではないが、中高年層の方が短期、長期を問わず、投資や貯蓄にお金を回す経済的な余裕があるということだ。
クレジットカード支払い延滞率、若年層は中高年層の2倍
「400ドルの急な出費をどのように捻出するか」という質問でも、年代の価値観や思想の差が顕著に表れる。過半数(57%)が「貯蓄から支払う」と答えたが、若年層が「所有物を売ってお金をつくる」と答えた割合は全体の2倍以上(24% )だった。
普段財布に入れている金額は平均25ドル。3分の2以上が1〜99ドルをもち歩いている。しかし若年層の4人に1人以上、中高年層の10人に1人が「もち歩くのはカードだけ」と答えており、米国で加速するキャッシュレスを反映している。
しかしキャッシュレスとともにクレジットカード負債も急増しており、「毎月負債を返済している」割合は39%(前年比4ポイント増)。5人に1人が2500ドル以上のカード負債をかかえている。
過去1年間で「新しいクレジットカードの申し込みをした」若年層は11%と、中高年層(6%)の2倍以上。「支払い遅れ」も2倍(11%)、「払えなかったことがある」は3倍(12%)、「最低支払額以下しか返せなかったことがある(13%)」は4倍にもおよぶ。クレジットカード以外の支払い(公共料金、家賃、融資など)でも、若年層の延滞率は28%と中高年層より8ポイント高い。
4人に1人が「困ったら家族や友人にお金を借りる」
このように「経済的な窮地におちった場合、どうするか」という質問に対し、25%が「家族や友人に相談する・借りる」と答えている。調査を行ったNFCCのような非営利消費者信用協会に相談しない理由は、「外部の支援がなくても解決できると思うから」という。借金を申し込まれる側にとっては、100%同意できる答えではないだろう。
負債の延滞率が高いにも関わらず—あるいは延滞率が高いためか、金融リテラシーについては若年層の方が強い興味を示しており、74%がオンラインで何らかの金融リテラシーサービス(お金の管理情報サイトなど)を経験している。中高年層の利用率は46%だ。
実際の金融リテラシー効果はどれほどのものなのか。92%が「前回大きな買い物(住宅、車など)をした際、正しい選択をした自信がある」と答えており、75%が滞納なく支払いを続けている、または完了した。この結果を見る限り、総体的にはそれなりの効果を上げているようだ。
近年米国で問題になっている、消費者金融が非常に高い金利で給料を担保に提供する短期小口融資「ペイデイローン」や、そのほかの高利融資についても47%が認識しており、9%が「実際に利用したことがある」と回答した。「急にまとまったお金が必要になった(49%)」「毎月の支払いに必要だった(41%)」「ほかの借金返済のため(30%)」「ほかに借りれるところがなかった(21%)」などが、利用した理由である。
残念ながらこの調査では回答者の所得や職業、家族構成といった背景が明らかにされていないため、あくまで大まかな「お財布事情」である。しかし人それぞれ、お金との付き合い方が異なる点は興味深い。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)