プロ直伝の「自然治癒力」強化法

井本邦昭,内臓の疲れ
(画像=The 21 online)

病気でもないのに「なんとなく内臓の調子が悪い」──そう感じる人も多いのではないだろうか。「その原因は『内臓の疲れ』にあり」と指摘するのは、人体力学を通じて何十万人もの不調を改善してきた井本邦昭氏だ。病気の早期発見や予防にもなる「内臓の疲れ」を知る方法と、自分でできる内臓メンテナンス方法を教わった。

内臓の疲れに気づかなくなっていませんか?

近年、「内臓」がこれまでになく注目されています。以前は「脳の命令を受けて動く」と考えられていた内臓ですが、実は自らメッセージを発し、脳やほかの臓器と連絡を取り合いながら働くことがわかってきたのです。胃や腸・肝臓・膵すい臓ぞうなどの臓器は、互いに連携をとりながら、消化活動や呼吸や血流の調整を行なっています。ひとつの臓器をほかの臓器がフォローすることもあり、胃が不調なときは腸が消化の手助けを行なっています。

反面、負担が継続的にかかると、不調の連鎖が起こります。胃の酷使が続いた結果、腸もフォローしきれずに不調になり、それを手助けしようとするほかの臓器にも悪影響が出る、という負の連鎖です。

現代人、とくに疲労の溜まりやすいビジネスマンにはそうしたケースがよく見られます。暴飲暴食による胃腸の疲れはもちろん、ストレスや睡眠不足が内臓に悪影響を及ぼすことも少なくありません。

もっとも危険なのは、内臓の疲労を自覚できなくなること。継続的な疲労状態に慣れてしまい、不調に対する感受性が落ちた状態です。それを何年も放置すると、ガンや脳卒中など、大きな病気につながる恐れもあります。

それを防ぐには、定期的に身体をチェックするのが一番。下に紹介している「腹部調律点」は、そのもっとも有効な方法の一つです。腹部にある調律点をゆっくりと指で押さえ、硬すぎる・緩み過ぎている等の感触から、自分の内臓の状態を把握してください。

井本邦昭,内臓の疲れ
(画像=The 21 online)

「内臓の要求」に従って生活するのが一番

その結果、不調な個所が見つかったら、一度専門家に相談するのもいいでしょう。ただ、自分できる「セルフケア」の方法も知っておきましょう。

とりわけ、時間のない人にお勧めなのは「温熱法」。熱で刺激すれば交感神経が活発になり、白血球が増えることによって自浄作用が高まります。

痛みやだるさのある部分を直接温めるのが基本。ただ、足やひじなど、内臓から遠い部分をあえて温めることもあります。

それは体内の各所が「つながっている」から。背骨の内側には神経束が走っており、一つひとつの椎つい骨こつごとに枝分かれして筋肉や内臓と結びついています。だから、ある場所を温めることで、神経を通してつながった内臓をケアできるのです。たとえば、足首の温熱により腎臓系疾患やリウマチ、女性なら子宮もケアできます。

以上のような方法を知っていれば、内臓の疲れや不調をケアすることができますが、より良いのは、不調を未然に予防できる生活を送ることでしょう。そのコツは至ってシンプル。「内臓の要求」に従うことです。

たとえば、「空腹のときに食べ、お腹が減らない限り食べない」こと。世間ではよく「一日三食、決まった時間に食べる」ことが推奨されていますが、自然の欲求に合わせるのが一番なのです。

「食後三時間は、寝てはいけない」という説も迷信です。眠ければ食後であってもすぐに寝るのが得策。睡眠中でも胃腸はわずかに動きます。ただ、「寝苦しい」場合は食べ過ぎなので、食べる頻度や量を減らすべきでしょう。

最近の健康法は、「サプリや薬を摂取する」「休日に運動する」などといった足し算の発想が主流ですが、不必要なことはやらない「引き算」の発想を持てば、内臓は自然に機能を取り戻します。薬や病院にむやみに頼る前に、自分が持つ身体の回復力を活性化させましょう。

井本邦昭(いもと・くにあき)井本整体主宰・医学博士
1944年、山口県生まれ。井本整体の創始者である父に5歳から指導を受ける。その後ヨーロッパにおいて鍼灸を指導する傍ら、ドイツのヘルベルト・シュミット教室等で西洋医学を修める。父の没後は井本整体を継承、全国5ケ所の指導室で指導にあたり、国外でも整体法の普及に努める。『内臓を強くする整体法』(高橋書店)ほか著書多数。(取材構成:林加愛)(『The 21 online』2017年12月号より)

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