就任後初のFOMC記者会見を終えた第16代FRB議長ジェローム・パウエル氏。世界の金融市場のなかで、最も影響力があると言って過言ではない同氏の一挙手一投足に、市場関係者の注目が集まっている。今回の会合では事前の予想通り、利上げが実施されることになり、大きな政策変更もなかったことから、比較的穏やかなFOMCとなった。

さて、このパウエル新議長は何者なのだろうか。またカタカナが苦手な筆者のような読者にとっては「そもそもFRBと何か?」といった簡単な説明が欲しいだろう。ここではそのような疑問を簡単に解説していきたい。

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(画像= blvdone/Shutterstock.com)

米国の中央銀行制度をおさらい「FRB」「FOMC」とは?

よくありがちな説明として、「FRBは日本銀行のような存在」と言われることもある、これは正確ではない。日本銀行は文字通りの銀行だが、FRBは「銀行ではない」からだ。

米国の中央銀行制度は「連邦準備制度(以下FRS)」呼ばれており、このFRSを動かしている組織は3つある。それが、連邦準備理事会(FRB:Federal Reserve Board)、連邦準備銀行(FRB:Federal Reserve Bank)、連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)である。連邦準備銀行もFRBと呼ばれることがあり、ややこしいため以下では連邦準備理事会を「FRB」とする。

この連邦準備銀行が日本銀行のような存在である。やや異なるのは、米国内を12の地域に分け、そこに12の連邦準備銀行を設置している点だ。そしてこの連邦準備銀行には、日銀のような紙幣の発券機能があり「中央銀行」の役割がある。

そしてこの12の連邦準備銀行を束ねる役割を担っているのがFRBである。まとめると、連邦準備銀行は、FRBの管理のもとそれぞれが独立して運営されており、その連邦準備銀行が各地域の商業銀行をまとめているという構図になる。

新FRB議長パウエル氏は何者?

日本では日本銀行が金融政策を決定して直接実行するのに対し、米国においては、FRBが決定した金融政策を、連邦準備銀行が実行する。いずれにせよ日本における日銀総裁のように、米国においてFRB議長というポストが極めて重要であることには変わりない。

その米国の金融政策の最高意思決定機関であるFRBの新議長に、パウエル氏が就任した。

パウエル氏は1953年生まれで銀行家・弁護士。2012年に連邦準備理事会の理事に就任。2014年6月再任、そして2018年2月5日、前任のイエレン議長の退任に伴い、第16代目の議長に就任したが、その日株価は大きく下げ、波乱含みの船出となった。同氏は好景気と17年ぶりの低い失業率の中、緩やかな利上げ路線を継承すると言われている。

パウエル氏は2月27日、下院金融委員会で初めての議会証言に立ち「政策金利のさらなる段階的な引き上げ」を進めていくことを表明。また、今後の金融政策の判断においては「景気過熱の回避と安定的な物価目標達成の両立」を目指すとし、この3月の利上げにも前向きな姿勢を示している。

そのパウエル氏、FRB内の合意を重視するタイプの議長になると思われるが、利上げを進めながらも、将来の景気後退にも備えることになる。また、これまでの金融緩和政策で大きくなったバブルの芽を摘みながら、さらに今後の景気拡大を長続きさせる。このような大変な使命を求められることになるだろう。

堅調な米国経済対して日本の投資家の懐疑的な見方もある。また、貿易収支に影響があるドル高や、保護主義的な姿勢が強まってきたなど、米国経済にも課題があるのも事実である。そのような中、パウエル氏が今後果たすべき役割は大きい。世界の経済に大きな影響力を持つFRB新議長の発言に注目だ。(石川智、ファイナンシャル・プランナー)