米10年債利回りがついに「レッドライン(越えてはならない一線)」の3%を越えた。金利の上昇が米企業利益を圧迫するのではないかとの不安が広がる中、どう対応すればよいのか困惑する投資家も少なくないようだ。そこで今回は「新債券王」ガンドラック氏の相場観のほか、ウォール街で話題となっている「トレード法」も紹介する。

米10年債利回りがレッドライン超え

米国株,見通し
(画像=Getty Images)

今週は4月24日の米債券市場で10年債利回りが3%を越え、2014年1月以来、4年4カ月ぶりの高水準に上昇した。

10年債利回りは2月中旬までに2.9%台に到達しており、FRB(米連邦準備制度理事会)による追加利上げが確実視されている状況を踏まえれば、3.0%越えは時間の問題とみられていた。また、2.9%と3.0%では実体経済に与える影響にほとんど差がないこと、したがって影響は心理面に限定されると考えられることから、「3.0%越えがマーケットに与えるインパクトはほとんどない」との見方も少なからずあった。

しかし、そんな楽観的な見方をあざ笑うかのように株価は急落、市場参加者の多くが「3%」をレッドラインとして重視していたことを改めて浮き彫りにしている。

原油高騰で強まるインフレ見通し

ところで、「3.0%」を重要な分岐点と指摘していた一人に新債券王ことダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏がいる。ガンドラック氏はビル・グロス氏に代わって、最近ではすっかりウォール街の「ご意見番」となっている。

そのガンドラック氏が10年債利回りを見るうえで注目しているのがドイツ10年債利回りと米名目GDPの平均値で、この値はほぼ米10債利回りと合致しているという。実際、25日現在のドイツ10年債利回りは0.6%台を推移、1〜3月期の米名目GDP成長率は5.3%であり、平均するとほぼ3.0%になる計算で確かに近い。

実質ではなく名目に注目しているのは、金利はインフレとの連動性が強いからにほかならない。そして、米インフレ見通しを強めているのがほかでもない「原油価格の高騰」である。原油価格(WTI、期近)は4月25日現在で68ドル近辺を推移しており、2014年11月以来、3年半ぶりの高値に浮上している。

2017年1月から始まったOPEC(石油輸出国機構)とロシアなどの産油国による協調減産が実を結び、原油在庫がほぼ過去5年平均まで低下したことが原油価格上昇の推進力となっている。

加えて、サウジアラビアが価格目標を80~100ドルとしていると伝えられたことも追い風となっているようだ。協調減産の目的は過剰在庫の削減にあり、5年平均がその目標とされていたが「サウジの意向を受けて目標達成後も減産を継続するのではないか」との思惑が広がっている。

ガンドラック氏「何かとてつもないことが起こるだろう」

ガンドラック氏は「いくつかの経済指標はインフレ率が3%に到達する可能性を示している」と述べたうえで、コモディティの買いを推奨している。

株価は景気の先行指標の側面もあり、景気後退を「先読みして」下落する傾向がある。その一方でコモディティはより実体経済に近いことから下落が始まるのが株式よりも遅い傾向にある。ガンドラック氏は米経済は景気循環の終盤に入ったと考えており、そのような局面では「コモディティが株式をアウトパフォームする可能性が高い」と指摘している。

ガンドラック氏は、コモディティの強気見通しの一環として「エネルギー関連ETF(上場投資信託)」のロングを推奨している。だが、ガンドラック氏の最近のお気に入りといえば、なんといっても「金(ゴールド)」だ。インフレ率及び金利の上昇により、「何かとてつもないことが起こるだろう」というのがガンドラック氏の見立てであり、そうした中で「金投資」が脚光を浴びる可能性を秘めているといえそうだ。

モルスタが提唱する「大谷翔平」トレードとは?

ところで、1〜3月期のS&P500は1.2%下落し、四半期ベースとしては2015年7〜9月期以来のマイナスとなった。4月下旬を迎えても年初来の騰落率はマイナス圏に沈んだままである。

米中貿易戦争やシリア情勢の緊迫化、フェイスブックの情報漏えい問題など弱材料はいくつか指摘できるが、こうした懸念材料が一巡しているにもかかわらず株価の上昇に待ったをかけているのがボラティリティ(変動性)の高止まりである。

ゴールドマン・サックスによると、FRBのバランスシート縮小によりマーケットには流動性が不足しており、その影響で市場のボラティリティが上昇しているという。したがって、ボラティリティの上昇は決して一時的なものではなく、株式の買い戻しの動きはしばらく鈍い状況が続く恐れがあるとも述べている。

他方、モルガン・スタンレーは2月以降にボラティリティが高まったために「投資家は逃げ場を失っている」と指摘。変動の激しい相場を乗り切るためには「効果的なディフェンスとともに、全体的なポートフォリオでのオフェンスも重要」と述べている。

モルガン・スタンレーは、投手と打者の「二刀流」で注目を集める大谷選手にあやかって、攻撃と防御の両方を備える戦略「大谷翔平」トレードを提唱している。そして、同社は具体例として以下のようなトレードを提示している。

・S&P500とハイイールド・ボラティリティのロング
・銅のショート
・公益セクターのオーバーウェイト
・対ドルで豪ドルをショート

個人投資家にはそのままでは実践が難しいトレードもあるが、似たような取引なら可能だろう。今後の投資戦略の参考にしてはいかがだろうか。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)