● 来週メガバンクの18/3期決算が発表される。終了した18/3期はほぼ会社計画通りの前期比微減益と予想され、19/3期も殆ど全行で微減益の可能性大だが、いくつか注目すべき点も。

● 特に、1)貸出金利低下度合い、2)貸出増加幅、3)コスト構造改革の見通し、4)株主還元策に注目。メガバンクでは貸出金利は下げ止まりも近く、利鞘の厚い海外大型貸出の増加も続きそう。

● 既に微減益は織り込まれているだけに、上記の点などで意欲的な内容が示されれば株価が見直される可能性がある。旺盛な外貨建て貸出の需要の恩恵を受け、コスト構造改革も具体化する大手行に相対的に強気。金利上昇は遠のいた感もあるが、自力の業績改善から上値余地あり。

銀行18/3期決算決算の注目点

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銀行の18/3期の決算発表が開始、来週はメガバンクを含む大半の銀行の決算が発表される(SMFG 5/14、MUFGとみずほ5/15)。3月後半以降銀行株はTOPIXに対して弱いが(図表1)、これは、金利上昇期待の剥落と、ぱっとしない18/3期の決算を織り込んでいると思われる(図表2)。

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一方、19/3期の会社計画には注目点も多い。現時点の市場のコンセンサス予想では、19/3期も一部を除くほぼ全行で微減益の予想となっている(図表3)。しかし、いくつか決算で注目すべき点もあり、その内容によっては、メガバンクを中心に切り返す可能性があるだろう。

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(画像=マネックス証券)
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1)貸出金利の低下度合い

国内の貸出金利は、都市銀行平均で0.827%、地方銀行平均で0.999%と、ついに地方銀行でも1%を切った(図表4-1、直近18/2月)。19/3期についても、低下幅は徐々に縮小しているものの、まだ下がり続けるのは確実である。低下幅は、特に第二地銀で大きい一方、メガバンク傘下の各都市銀行ではかなり下げ止まり感が出てきている(図表4-2)。

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大手行ではこうした国内貸出関連業務が収益に占める割合は2~3割程度と低いものの、基幹業務の一つではあり、反転増に転じることは一つのポジティブ材料となるだろう。

2)貸出増加率

次の注目点は、利鞘の低下を貸出のボリュームでどこまで打ち返すことができるかである。19/3期は引き続き利鞘の低下率が貸出の増加率を上回ってしまい、預貸金利益は減少を続けるだろう(図表5-1,5-2)。地方銀行については、貸出の伸び率が4%前後と高いことから、来年度にはリーマンショック後初めて預貸金利益が反転増に転じるかもしれない。しかしこれを織り込むのはまだ早いだろう。

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一方、メガバンクの海外貸出は引き続き拡大が見込める。一時懸念されたLiborの上昇も4月以降落ち着きつつあり、金利の更なる上昇前の駆け込みの資金需要で3~5%前後の増加が期待できる。特に期待はM&Aや設備投資資金である。例えば、武田薬品工業 <4502> によるアイルランドのシャイアー社買収では、買収額約7兆円に対し3兆円の融資が想定されている。こうした海外大型案件の過去5年間の平均利鞘は242bpと、国内貸出の3倍にも上るため、やはり今期は地銀よりはメガバンクの方に業容拡大の軍配が挙がりそうだ。

3)コスト構造改革の見通し

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(画像=マネックス証券)

前期から始まったメガバンクの「コスト構造改革」については、まだ緒に就いたばかりであり、今期に目に見えるような成果を期待するのは難しいだろう。むしろ、例えば、報じられているような三菱UFJの店舗削減などの施策や、金融技術の活用がどの程度のコストカットに繋がるのか等、将来に向けた取り組みの一段の具体化が注目点である。また、地銀にはメガバンクのようなコスト構造改革の波は押し寄せていないが、前向きに取り組む銀行が出れば素直にポジティブに評価されるだろう。

4)株主還元策(配当および自社株買い)

一部の銀行の配当利回りは3%を超えるなど引き続き高い(図表7)。配当性向は、30~50%に分散しているが、微減益が予想されている今期計画も、各行とも配当額を下げる可能性はゼロに近いだろう。むしろ資本比率に余裕度が高いMUFGやSMFGには若干の還元強化が期待される。

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(画像=マネックス証券)

注目銘柄:そろそろメガバンクに強気

19/3期の計画に注目が集まる中、企業のM&A関連業務や、旺盛な外貨建て貸出の需要の恩恵を受けるMUFG <8306> やSMFG <8316> などのメガバンクグループに相対的に強気である。金利上昇は遠のいた感もあるが、自力の業績改善から上値余地があるだろう。

大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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