運用手法には大きく分けてアクティブ運用とパッシブ運用がある。アクティブ運用とはファンド・マネージャーが経験と知識を生かして投資対象を選別する手法であるのに対し、パッシブ運用とは株式インデックスなどに連動するように銘柄を保有し、市場平均と同様のリターンを狙うものだ。

アクティブ・ファンドからパッシブ・ファンドへの流れ

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(画像=Maksim Kabakou / Shutterstock.com)

どちらが優れているのかという議論は古くからある。しかし10年ほど前からはパッシブ運用の方に軍配が上がりつつあり、アクティブ・ファンドからパッシブ・ファンド(インデックス・ファンドとも呼ばれる)への資金シフトが鮮明となっている。パッシブ運用がより好まれている主な理由として、インデックスを上回る成績を継続して上げているアクティブ・ファンドが少ないことや、運用手数料が高いことが良く挙げられる。

かの著名投資家ウォーレン・バフェット氏も、パッシブ運用をより推奨している一人だ。投資信託の評価会社であるモーニングスターによると、今年2月までの一年間で米国株のアクティブ・ファンドから2200億ドル超の資金が流出し、逆にパッシブ・ファンドには1980億ドルが流入したという。株式市場が大幅に変動して警戒感が一気に高まった2月と3月には流石にパッシブ・ファンドからも2015年4月以来となる資金流出が見られたが、パッシブ・ファンドの優勢が大きくそがれたわけではない。そしてこのパッシブ・ファンドには非常に多くの大手テクノロジー企業が現在含まれているのだ。

自動的にIT株に偏るパッシブ・ファンド

SNS産業は今後も社会の基盤インフラとして成長する可能性は高い一方、株式市場としては個人情報管理規制リスクや、それに対応するための企業コストを考え直す必要があるだろう。個人情報流出問題は、FB社だけにとどまらず、FB以外の「GAFA」(Google、Apple、FB、Amazonの頭文字からとった造語)やその他の個人情報を取り扱うIT企業にとっても同様の問題だ。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによれば、2018年4月30日時点でS&P500種株価指数に占めるIT株の比率は24.8%と、昨年末の20.8%から更に増加している。

2位の金融株は14.7%であることを見ても、他のセクターより断然多いことが分かる。またアマゾンは同インデックスの中で「消費者サービス」セクターに分類されているが、同社をIT企業とみなすなら、実質的なITセクターの比率はより高まる。つまり、それほどはIT株に魅力を感じていない個人でも、パッシブ・ファンドで資産運用をしていれば、その資産の少なくとも4分の1はIT株を保有していることになるのだ。

そうしたパッシブ・ファンドの投資家が、例えば最近のフェイスブック個人情報の不正流用問題を見て少しIT株を減らしたいと思ったらどうすればいいのか。残念ながらそのパッシブ・ファンド全体を売却するしか方法はない。その売った資金で、IT株以外の株やETFを買うか、或いはアクティブ・ファンドに投資すれば、市場全体がGAFAと共に大きく下落することは避けられるかもしれない。しかし、今後の米国株式市場のけん引役として期待できる別のセクターが見つからないとして多くの投資家が再投資を見送れば、市場全体に影響は広がるだろう。

因みに、今年9月28日にS&P500種株価指数の業種分類が見直される予定だ。従来の「電気通信サービス」が、「コミュニケーション・サービス」に再編される。現在、「IT」分類であるアルファベットとフェイスブックや、「一般消費財」分類であるネットフリックスやディズニー、コムキャストなどがそこに移る予定だ。S&P500全体に連動するパッシブ・ファンドには影響は少なく、実質的なIT企業に大きく偏った資産配分であることは変わらない。ただITセクターなど特定のセクターに追随するファンドの保有者は注意が必要だろう。ITインデックス・ファンドではフェイスブックやアルファベットの株の売却が必要になることも考えられる。

パッシブ・ファンド以外にもいる、知らず知らずのテクノロジー株保有者

最近「ESG投資」が急速に広がりを見せている。「環境(Environment)」「社会(Society)」「企業統治(Governance)」といった非財務面の観点も企業分析に取り入れる投資スタイルだ。今ではその運用額は2500兆円を超え、世界の投資全体の4分の1を占めるまでになっているとされる。米国でもここ数年、ESG銘柄に投資するETFやファンドが増えているが、その多くが共通して保有している銘柄の中に「GAFA」がある。彼らは環境に配慮する企業としてESG面でも評価されているのだ。

FBは2011年にいち早く自然エネルギーを目指すと宣言し、アップル、グーグルなどもそれに続いた。FBがジョージア州に新たに建設する2020年完成予定のデータセンターは、100%再生可能エネルギーで運営されるという。また4月10日には、アップルが世界各地にある同社の施設が100%クリーンエネルギーで電力調達をしていると発表した。運用成績を上げたいESGファンドなどは、株高の勢いが強かったGAFA株を特に選好して保有していた可能性もある。ESG投資を行っているつもりの投資家も、いつの間にかテクノロジー株に左右されやすい資産構成になっていたということだ。

貿易戦争や中東問題など波乱の芽はあるものの、世界経済は今のところまだ堅調だ。個人情報をめぐる規制の問題もフェイスブックなどは無難に乗り越え、更に成長していく可能性も十分ある。しかし、投資家が実際に意識している以上にテクノロジー株に偏ったポジショニングとなっている現在の市場にはやはり注意が必要だろう。

北垣愛
国内外の金融機関で、グローバルマーケットに関わる仕事に長らく従事。証券アナリストとしてマーケットの動向を追う一方、ファイナンシャルプランニング1級技能士として身近なお金の話も発信中。ブログでも情報発信中。