投資の「神様」ウォーレン・バフェット氏、ヘッジファンドの「帝王」レイ・ダリオ氏……5月のウォール街は著名投資家のポジションに関する話題で持ちきりとなった。運用残高が1億ドル以上のヘッジファンドは四半期毎に保有する有価証券報告書(四半期報告書)の提出を義務付けられているのだが、今回は同報告書を読み解きながら著名投資家やヘッジファンドの最新動向を探ってみよう。

神様・バフェット氏は「46銘柄に分散投資」

バフェット,投資
(画像=Getty Images)

バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの四半期報告書によると、同社は今年1~3月期にアップル株を7423万株買い増している。昨年12月末の1億6533万株から一気に45%も増やし、3月末は2億3956万株と金額にして約401億ドル(4兆4000億円)に達している。アップルの株主としてはバンガード、ブラックロックに次いで第3位の大株主だ。

バフェット氏のポートフォリオは46銘柄に分散投資されているが、そのうち上位4銘柄で55%、同じく上位10名柄で80%を超えており、いわば「選択と集中」型と見ることができる。その中でアップル株の保有比率は21.3%と約5分の1を占めており、2位のウェルズ・ファーゴ(12.7%)の倍近い数字となっている。ちなみにウェルズ・ファーゴの昨年末の保有比率は14.5%でアップルと肩を並べていたのであるが、今年1~3月期の売却でウェイトを落としている。バフェット氏はCNBCのインタビューでアップルの収益性の高さを称賛しており、よほど同社がお気に入りの様子だ。

一方、IBM株はすべて売却している。バフェット氏は昨年からIBM株を段階的に売却していたが、今年1~3月には残りの204万株もすべて売却している。IBMは業績の回復が遅れており、もはや成長路線を描けないと判断し、見切りをつけたようだ。このほかバフェット氏の上位保有銘柄にはバンク・オブ・アメリカ、クラフト・ハインツ、コカコーラ、アメリカン・エクスプレスなどがある。これらの保有は昨年末から変化が見られず、がっちりとキープしている。

ちなみに、バフェット氏が個人投資家に勧めているのは株式90%、短期国債10%のポートフォリオである。同氏は「長期的に見れば、このポートフォリオなら他のどんなファンドマネージャーよりも大きな利益が得られる」と述べている。別の言い方をすると、バフェット氏は長期的にアクティブファンドはS&P500に勝ち続けることはできないと考えているようだ。

帝王・ダリオ氏は「ETF至上主義者」か!?

世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター率いるレイ・ダリオ氏。現在、彼は世界最高のヘッジファンドマネージャーと考えられており、ヘッジファンドの「帝王」とも呼ばれる。

そのダリオ氏の3月末のポートフォリオの上位10銘柄はすべて「ETF(上場投資信託)」であり、インデックス買いのパッシブな投資戦略を基本としているようだ。S&P500と新興国を対象とした上位2つのETFでポートフォリオの「50%近く」を占めており、全世界を対象としたインデックスでコアを形成している。ちなみに、ダリオ氏は年初までは世界経済に対して強気な見通しを示していたが、2月の世界同時株安後に「2019年から景気後退が始まる可能性が高い」との見方に修正している。

実際、昨年12月末と今年3月末でダリオ氏のポートフォリオを比較すると、新興国への投資比率を引き下げ、債券比率を引き上げている。具体的にはバンガード新興国ETFを25.98%から23.20%へ、iShares MSCI新興国ETFを12.61%から5.31%へとそれぞれ引き下げたほか、米ドル建ての投資適格債ETFを2.47%から2.81%へ、米国債20年超ETFは2.20%から2.30%へ、米ドル建てハイイールド債ETFは1.81%から2.06%へと微増ながらも引き上げている。これは先に彼が述べた「2019年からの景気後退」を見据えたリスク回避の動きと考えられよう。

ただし、ウェイトの上昇は必ずしも買い増しているわけではなく、相対的な価格の上昇や下落の影響も受けている。たとえば、金(ゴールド)ETFの保有数に変化はないが、保有比率は3.97%から4.71%へと上昇しているといった具合だ。同様にSPDR S&P500 ETFも保有数が減少しているが、保有比率は20.73%から22.5%へと上昇している。

ダリオ氏のポートフォリオの変化は総じて「リスク回避」の動きと見られるが、そうした中でもiShares MSCIブラジルETFの保有比率を2.57%から3.59%へ増加させるなど「有望な投資先をピックアップする」メリハリを見せていることも付け加えておきたい。

最後に笑うのは誰か?

ところで、ヘッジファンド全体のポジションを見ると、バフェット氏やダリオ氏と真逆の動きも見られる。たとえばブルームバーグの調べによると、今年1~3月期にヘッジファンド全体でアップル株を「1億5300万株」も売り越している。これは2008年1~3月期以降では最大の売り越しである。その背景には「iPhoneの持続的な売上増に懐疑的な見方が広がっている」(ウォール街の市場関係者)とも指摘される。少なくともバフェット氏が称賛する「アップルの収益性の高さ」という認識はヘッジファンド全体で共有されているわけではなさそうだ。

さらに1~3月期のヘッジファンド全体の動きとして注目されるのは「新興国ETF」を大量に買い増していることだ。つまり、こちらはダリオ氏とは真逆のポジションとなっている。ダリオ氏本人も景気後退は1年半から2年先と述べていることから「(景気後退は)早くても2019年後半」(同)と解釈する向きもある。株価に先行性があるとしても半年程度のことなので、まだ株を売るには早すぎるということなのかもしれない。

業界で影響力が大きいバフェット氏やダリオ氏であるが、その戦略はヘッジファンド全体のポジションとは大きく異なっている。果たして最後に笑うのは誰か? 興味の尽きないところだ。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)