はじめに-4組に1組の「重要プレーヤー」に昇格

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=PIXTA)

当レポートの(上)では、年間に役所に提出される婚姻届のうち、再婚者が双方または片方に含まれる再婚者含みの結婚が、実に4組に1組にまで増加していることを示した。

18歳から34歳までの未婚男女の約9割が結婚を希望しているにも関わらず、未婚化が進行している日本の結婚マーケットにおいて、もはや再婚可能性のある男女(離婚経験者)の存在は重要な結婚相手候補としてのプレーヤーの位置づけを得ている、といってよいだろう。

「3組に1組は離婚」という情報が、ややネガティブな文脈で人々に流布し始めている一方で、「4組に1組は再婚者が含まれた結婚」という情報は、広く一般に流布する発信ではあまり見かけない。

つまり、「再スタート」「再チャレンジ」といったポジティブな再婚割合情報が、離婚の割合と表裏一体的に流布してこない。

本レポートでは、(上)の再婚者割合の分析に続き、初婚・再婚の組み合わせ別の「年の差婚」を客観的に分析することで、果たしてそこからこの未婚化社会に何か指摘出来ることがないか、を考察してみたい。

初婚・再婚組み合わせ別にみた夫婦の年下・年上の傾向

昨年のレポートで初婚同士の成婚カップルの年の差について詳しく紹介した。

そこで今回は初婚同士、夫のみ再婚、妻のみ再婚、再婚同士の4タイプすべてについて考察する。

まずは男女どちらが年上なのか、または同年齢なのかをこの4タイプでみることとする(図表1)。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

再婚者も含めた成婚者全体ならびに母数の多い初婚同士は似た傾向となっている。

年上の妻が4組に1組、同年齢が5組に1組、年上の夫が2組に1組、という結果である。

しかし、初婚同士を除いた再婚者含みの成婚だけを見てみると、初婚同士のカップルとは明らかな違いが浮かび上がってくる。

まずは、客観的なデータの解説によって、再婚者含みの成婚の年の差を俯瞰してみたい。

(1)再婚含みでは、同年齢カップルの割合が低下
(2)初婚の妻と再婚の夫では、夫の8割が年上という昭和の伝統的年の差に変化
(3)再婚の妻と初婚の夫では、妻の年上の割合が20ポイント増加(初婚同士の1.8倍の割合)
(4)夫婦とも再婚では、年上妻の割合は初婚同士と同じく4組に1組
(5)夫婦とも再婚では、同年齢割合が1割に減少し、その分、年上夫割合が10ポイント上昇

全体の4分の3を占める初婚同士のカップルに比べると、再婚者が含まれる結婚は

「同年齢カップルが減少」
「初婚と再婚との組み合わせでは、再婚者の方が男女に関わらず年上となる割合が高まる」

という2点が非常に顕著であると言えるだろう。

初婚・再婚組み合わせ別にみた年の差の詳細

1|夫が再婚、妻が初婚のケースは夫側の年齢が妻の年齢より顕著に高い

1章において、再婚者が含まれる結婚では「初婚と再婚との組み合わせでは、再婚者の方が男女に関わらず年上となる割合が高まる」ことを示した。

その詳細をみると、夫が再婚者で初婚の女性と結婚するケースにおいて、特に顕著となっている(図表2)。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

夫のみが再婚のケースでは、全体の平均年齢差の3倍もの年齢差が生じている。年齢差は夫のみが再婚のケースでもっとも広がり、再婚同士、初婚同士、と減少してゆく。ちなみにこの年齢差は夫がすべて年上となっている。妻のみが再婚のケースでは、年齢差が全くない、という状況である。 次に、平均ではなく、実数としてどれくらいの年齢差の結婚となっているかを確認してみたい。

2|「年齢格差婚」は再婚者が優勢

夫婦の年齢差は平均すると年々減少傾向である(図表3)。

全体の4分の3を占める初婚同士だけをみると、夫と妻が同年齢もしくは上下2歳差までに58%、3歳差までに68%が占めており、いわゆる年齢格差婚はそこまで成立しやすい状況とは言えない。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

しかし、初婚同士と再婚者を含むカップルを分けてみてみると、再婚者を含む組み合わせであれば、年齢格差婚が成立しやすいことが見えてくる(図表4)。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

特に夫が再婚、妻が初婚のケースでは、その4割以上において、夫が7歳以上年上となっている。また再婚者同士のカップルも夫が7歳以上年上の割合が約3割であり、いずれも初婚同士と比べると3倍から4倍の割合である。

また、全体として4組に1組が年上妻の結婚であり、年上妻婚割合は年々増加しているのだが、初婚同士のカップルでは妻が4歳以上年上の割合は7%にとどまるものの、妻が再婚・夫が初婚のケースでは26%となり、初婚同士の4倍程度にまで割合が増加する。妻のみが再婚のケースでは、4組に1組が「妻が4歳以上年上」なのである。

また再婚者同士でみても、年上妻婚のなかでは「妻が4歳以上年上」が一番多くなっている。

これを別の切り口で集計してみたい。「夫が7歳以上年上」を「夫年齢格差婚」、「妻が4歳以上年上」を「妻年齢格差婚」と定義し、年齢格差婚全体における再婚者比率を計算すると、以下のように集計された(図表5)。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

年齢差を問わない結婚全体では4組に1組が再婚者含みの結婚であるが、年齢格差婚にしぼってみると、夫年齢格差婚のケースの2組に1組、妻年齢格差婚の5組に2組が再婚者含みの結婚となっていることがわかる。

過去の結婚経験はどう反映されているか

以上から、結婚経験をもつ男女(つまり離婚経験がある男女)が次の結婚に踏み出す際に、どのような年齢差の人と結婚するのか、という点について「初婚者とは違う年の差行動を示す」ことが指摘出来るようだ。

最期に、その行動背景を「再婚者サイド」と「再婚者と結婚する初婚者サイド」から考えてみたい。

ここで、婚姻全体と比べた時、各組み合わせにおける「年齢差割合」の乖離が5ポイント以上、プラスマイナス双方どちらかに乖離しているグループは以下の通りである(図表6)。

年の差婚,未婚少子化データ考
(画像=ニッセイ基礎研究所)

【再婚者サイドの考察】

再婚者は初婚者よりも結婚相手として結果的に、「自分より、より若いパートナー」に男女問わず向かう傾向があるようである。

特に再婚男性については、その相手が初婚・再婚女性問わず、ほぼ間違いなくその傾向が見て取れる。

これには過去の離婚経験に起因するものと、再婚者の年齢が必然的に初婚者の年齢よりも上昇することとの、2つの要因が指摘できる。

要因1
過去の結婚経験から「庇護されるより、庇護する的な」結婚が自分にはあっている、という気づきが男女問わずあるかに見える。 (ただし、日本の「男性上位婚(1)」の伝統的価値観に照らし合わせると、男性はその感覚をさらに強めるケース、女性はその感覚から脱却するケースといえる)

要因2
初婚者より年齢が上昇している分、異性の未婚者の割合が同じ年齢、もしくは年上であると少なくなる。自分よりも大きく年下の異性ほど、未婚者割合が高くなるため確率的には未婚者と出会いやすい(対象規模の問題)

(要因1に関する注目点)
(1) 離婚男性全体がそういう傾向にあるかはまた別の分析が必要であるが、初婚者とマッチングしている再婚者は男女とも「自分よりかなりパートナーを庇護したい」結婚観が強い(または向いている)・特に男性再婚者にこの傾向は顕著である
(2) 離婚男性全体がそういう傾向にあるかはまた別の分析が必要であるが、初婚者とマッチングしている再婚者は男女とも、次のパートナーには「全く同じ時代感」を相手に求めない・特に男性再婚者にこの傾向は顕著である

【再婚者と結婚する初婚者サイドの考察】

初婚側から見ると、初婚相手を選ぶ初婚者よりも、再婚者を選ぶ男女はかなり年上の異性を嗜好しているタイプと見える。

同年齢よりも未婚者の割合が少ない上の年齢マーケットの異性からあえて選んでいることとなるので、再婚者サイドの未婚市場の大きさ(要因2)の説明は、逆に出来ない。

再婚者サイドの考察とは表裏一体の指摘として「庇護するより、庇護される的な」結婚をより強く希望している初婚男女と見られる。

(初婚者サイドに関する注目点)
(1) 女性に関しては伝統的な上位婚希望の色合いがより強い女性(男性に社会的・経済的に頼りたい)
(2) 男性に関しては伝統的な上位婚価値観があわない男性(女性に社会的経済的に一方的に頼られることに拒否感)

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(1)学歴、収入、年齢などすべてにおいて男性が上である結婚。
女性に財産権がなかった第2次世界大戦の戦前では、必然的に上位婚が成立していた。

初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下) のおわりに

日本が第2次世界大戦に敗戦した1945年から約70年。

大正生まれである私の祖母が結婚したのは戦前であるが、第2次世界大戦の戦中、満州へ赴いた夫が生死不明の中、彼女の父親が亡くなった。

当時、女性には財産権がなく、彼女の父親の財産はすべて彼女の一人息子に引き継がれた。彼女は昨年亡くなるまで、そのことに納得がいかなかった。

日本は戦争に負け、財産制度から考えて男性上位婚が当然の社会ごと否定され、戦後の改革を迫られた。納得の上というよりも「あるべき姿」を外から与えられる形であっただろう。

このある種の「敗戦による価値観ちゃぶ台返し改革」が、その後長く、日本社会の「両性の合意のみに基づく自由恋愛」の建前と「(大日本帝国憲法の)家長制」本音の乖離を生んできた様にも思う。

建前は恋愛・結婚の多様化。本音は上位婚が当然という社会通念。今回のレポートの分析結果から、約70年の時を超えて、その本音と建前の間で生じた社会の歪(ひずみ)に一度ははまった結婚が、離婚をへて、その一部は再婚という形で解消されてきているように思えるのは筆者だけであろうか。

いまだ社会では「バツよばわり」されている離婚システムが、実は堅固な伝統的家族観の残るこの日本社会の「価値観が変容する時代の社会のひずみ矯正ツール」とみることも出来るのかもしれない。

結婚のカタチに正解はない。

誰かの天使は自分にとっては悪魔である、それくらい相性の世界である。あわなくてもバツではなく、あっても、それは他人目線では評価で不能なその人にとってのオリジナルの正解である。

初婚・離婚・再婚、どれをとっても、「1人で生まれ1人で死ぬ、そんな人生の旅路のせめて道中、パートナーを」と願う姿の「挑戦」「覚悟」の姿の1形態であり、同じ人としてもっと自然に、社会から評価、応援されてよいように思う。

【参考文献一覧】

国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」
厚生労働省.「人口動態調査」
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」2017年版
総務省総計局. 「2015年 国勢調査速報値」
総務省総計局. 「人口推計(平成29年(2017年)10月確定値)
厚生労働省.「平成27年度 人口動態職業・産業別統計」

天野 馨南子.“2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造-” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2016年12月26日号

天野 馨南子.“未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想-少子化社会データ検証:「未婚化・少子化の背景」は「お金」が一番なのか-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2016年9月5日号

天野 馨南子. “消え行く日本の子ども-人口減少(少子化)データを読む-わずか半世紀たたず、半減へ”ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2018年4月9日号

天野 馨南子. “ 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方”ニッセイ基礎研究所 基礎研REPORT(冊子版) 2017年4月号

天野馨南子(あまのかなこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 研究員

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