ドル円予想レンジ108.30-111.20
「Lookingforwardtoseeingtheemploymentnumbersat8:30this morning.(雇用統計の数字を楽しみにして欲しい)」―。これは6/1の5月米雇用統計発表の約1時間前にトランプ大統領がツイッターで投稿した一文だ。筆者がこれを取り上げた理由はプロトコール(内部的行動基準)に反する云々を指摘したいのではなく、大統領のわかりやすい心情反映の仕方を再認したからである。
「米朝会談」「利上げ」に加えた伏兵材料
6/11週は重要日程が多数予定(6/14・トランプ大統領誕生日)されており、米朝首脳会談(6/12)、シカゴFEDウオッチで利上げ確率約90%のFOMC米連邦公開市場委員会(6/13)が軸だ。加えて、3つの伏兵材料(①6/12・5月米消費物価指数CPI、②6/14・欧州中銀会合・ドラギ総裁会見、③6/15・日銀会合・黒田総裁会見)が円を揺さぶると読んでいる。
米朝会談での主な課題は北朝鮮の非核化だが、今後も複数会談がなされ、段階的に緊張緩和度が探られることとなろう。勿論、北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長の訪米、米大統領のマイアミ別荘でゴルフ等の約束にまで繋がるほどの意気投合となれば、軍事的緊張も一気に低減するだろうが、漫画的空想感も否めない。
会談成否でのドル円反応は5/24・22時40分頃に米大統領が会談中止と表明した直後の約30銭幅下落、6/2・深夜午前3時45分頃に会談開催を再表明した際の約10銭幅上昇がベンチマークか。
FOMCでは雇用好調、4月貿易赤字額の7ヶ月ぶり低水準・輸出が過去最高となったことを踏まえ、パウエルFRB議長が今後の利上げテンポ感をどのように示すかが焦点。5/28週号で指摘したが、米政権による通商圧力強化(関税賦課・輸入制限策)の不確実性を5月FOMC議事録で慎重に示していたのは記憶に新しい。
尚、2015年12月からFOMCは金利正常化として6回の利上げを行ったが、内2回を除いて日足陰線引け。利上げ後の材料出尽くし、追加利上げ期待後退は円を圧迫(ドル売り)しかねず、要警戒となろう。伏兵材料の①米5月CPIは翌日のFOMC利上げ軌道を外すとは思えないが、原油価格や米通商策の影響が探られ、②の欧州中銀では量的緩和策終了への道筋、③の日銀会合では黒田総裁から現策継続の再表明が円安助長に繋がるかが試されそうだ。
しかし、各日程を通じてもっとも警戒すべき伏兵材料は、トランプ大統領がツイッターを通じて心情を直接反映させる場面かもしれない。
6/11週ドル円焦点
上値焦点は200日線推移110.20圏、5/23安値109.545からの戻り高値110.35、110.50、同日高値110.925。5/22高値111.20、5/21高値111.39が期待値。下値焦点は6/5安値109.475、6/4安値109.36、109円台維持。割れると6/1安値108.72、5/30-31安値108.37-34、5/29安値108.10推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト