日経平均予想レンジ22,316~23,122円

伊藤嘉洋,株式相場見通し
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今週はNYダウが大幅上昇となったほか、ナスダック指数も3日連続で過去最高値を更新した流れを受け、日経平均は110円台前半の円安進行など外部環境を支えに4日続伸から5/23以来22,800円台まで買い進まれた。

海外の焦点

米5月雇用統計は前月から22.3万人増え、市場予想の19万人増を上回った。失業率は3.8%と前月の3.9%から低下し、2004年4月以来18年1ヶ月ぶりの低水準となった。物価上昇の先行指標として注目される平均時給は前年同月比2.7%増と適度に伸びたことが好感されている。FRBが想定する利上げペースにほぼ沿う内容と受け止められた。

EUは米国がEUに適用した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限措置をめぐり、WTOに提訴、総額64億ユーロ(約8,200億円)相当の米国製品に関する報復関税の準備を始めた。一方、米中貿易戦争への懸念が広がる中、ロス商務長官が7日のテレビインタビューで中国通信大手ZTEに対する制裁措置を解除することで合意したことを明らかにし、米中貿易摩擦の過度の懸念は後退している。

市場では「好調な雇用統計や地政学リスクの後退を背景に米国株が上昇しているが、依然として貿易戦争の懸念や米朝首脳会談に向けた不透明感など複数の政治リスクがくすぶり続けるだけに神経質な展開になりやすい」と慎重論が多い。

国内の焦点

注目の米朝首脳会談は予定通り12日にシンガポールで行われることになった。焦点は段階的に安全かつ検証可能で不可逆的な非核化をどう進めるのか。具体的な道筋が示されるのか注目される。これまで通り、北朝鮮が時間稼ぎの戦略に出たに過ぎないとマーケットが評価すれば悪材料と受け止められる。穏便に済んだとしても突っ込んだ議論が行われなければ、中立もしくは材料出尽くしとなり、これまで戻りを試してきた日本株に利益確定売りが出る可能性は否定できない。日本が求める拉致問題の解決に踏み込んだ話が出るのかも注目される。

テクニカル面では、もち合いのレンジを上方に放れ、上値抵抗の25日線を抜いた。5日、25日線とのミニデッドクロス形成で短期的には上値を試す展開から節目の23,000円や2/5窓埋め23,122円が上値目処として意識される。ただ、ここを上抜けるには売買代金の増加など市場エネルギーの高まりが不可欠となる。さらに1/23高値24,129円と5/21高値23,050円を結んだトレンドラインの位置する22,900円付近を明確に抜けるかもポイントとなろう。

来週の株式相場

以上、来週は米朝首脳会談やFOMCといった重要イベントを見極める姿勢の強まる中、レンジ抜けで上値余地を探る展開と捉えている。日経平均のレンジは上値は2/5窓埋め23,122円が意識され、下値は6/1窓埋め22,316円が目処となろう。

伊藤嘉洋,株式相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

伊藤嘉洋
岡三オンライン証券 チーフストラテジスト