「クラウドファースト」といわれるように、企業がシステム構築を検討するときには、まずクラウドを検討するようになりました。でもIoT時代を迎えた今、「フォグコンピューティング」が合言葉になり、新たなビジネスを創出する原動力となるかもしれません。
IoT時代ならではの課題とは
コンピュータとつながり、やりとりをするのは、今まで主に「ヒト」でした。しかし本格的なIoT(モノのインターネット)時代を迎えた今、コンピュータにつながる「モノ」は爆発的に増えています。工場の機械のセンサー、家電、クルマ、医療機器など、ありとあらゆるモノがインターネットを介してコンピュータとつながるようになりました。
これらのモノから集められたデータは、まさに宝の山です。データが増えれば増えるほど、災害の予兆検知や需要予測など、さまざまな解析ができるからです。解析結果をサービスとして提供すれば、収益もあげられます。いまやデータは貴重な財産なのです。
こうして集めたデータを、今まではコンピュータで集中的に管理していました。しかし、コンピュータにつながるモノが指数関数的に増えたため、コンピュータがデータを管理しきれなくなっています。コンピュータは最近ではクラウドを活用するのが主流ですが、クラウドは従量課金制のため、データが増えれば増えるほどコストもかさむという問題もあります。
さらに通信回線のコストも無視できません。膨大なモノをひとつずつクラウドと回線でつなぐと、モノがひとつずつ携帯電話を持っているようなもので、かかるコストは膨れ上がり、実用化はもはや現実的ではなくなります。
クラウドよりも地上に近い?!「フォグコンピューティング」
そこで生まれた概念が「フォグコンピューティング」です。2015年ごろ、ネットワーク機器を開発するアメリカの会社シスコシステムズが提唱したとされています。あらゆる情報を一極集中で管理したクラウドの形態とは異なり、モノの近くに中継機を置き、大量のデータをある程度選別・処理してからクラウドに送る仕組みです。クラウドよりもモノに近いことから、雲よりも地上に近い「フォグ(霧)」と名付けられました。
この仕組みは、モノと中継機をIoTに特化した規格の無線でつなぐことで回線を削減し、必要なデータのみ送ることでクラウドの負担を軽くする、という目的があります。でもそれだけではありません。
あらゆるモノがつながる時代とはいえ、身の回りでインターネットに接続しているモノは、まだそれほど多くはありません。山間地や地下室など携帯電話網が使えない場所もあります。しかし、ごく近距離であれば通信可能なモノはたくさんあります。
フォグコンユ―ティングはこうした眠れる機器のデータを掘り起こすことも期待されているのです。
フォグコンピューティングはどんなビジネスを生み出すか?
ではフォグコンピューティングにはビジネス創出のポテンシャルがあるのでしょうか。
ファナックの事例にそのヒントがあります。ファナックでは、自社工場内に複数のロボットが稼働しています。このロボットをいくつかのグループに分けて、お互いに協調して作業するように制御する役目をフォグが行っています。
このように、モノからデータを集めるだけではなく、ローカルなモノ同士を連係させて動作させる役割も今後大きくなるでしょう。例えば、走っている複数のクルマを、道にあるフォグが制御する交通システムも考えられます。
フォグコンピューティングの歴史は浅く、クラウドコンピューティングのように広く認知されるようになるのかは未知数です。ただ、IoT時代とはいえ、まだつながっていないモノはたくさんあります。今後IoTがさらに本格化してきたらその存在感も大きくなりそうです。(提供:J.Score Style)
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