少子高齢化などで国内楽器市場は縮小する中で、ヤマハは6期続けての増益を継続し株価も右肩上がりで上昇。6月11日に6050円をつけ上場来高値を更新した。

ヤマハ好調の原因は中国及び新興国市場での事業拡大だ。ヤマハは世界各地域でバランスよく稼ぐ体制を構築しつつある。

ただし米長期金利上昇で、新興国通貨の下落が進んでおり、現在の事業環境が維持される保証はない。ヤマハは継続的な成長を果たすことができるのか、今後真価を問われる時が来るのではないだろうか。

ヤマハが過去最高益を更新

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(画像=Elena Dijour / Shutterstock.com)

ピアノや管楽器など楽器総合メーカーのヤマハ <7951> の業績が好調だ。2018年3月期は営業利益488億円、親会社株主に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)544億円と過去最高益を達成した。

ヤマハは2012年3月期に減益決算を発表した後、6期続けて営業利益・当期純利益ともに増益を継続している。来期(2020年3月期)は当期純利益こそ投資有価証券の売却益がなくなり減益計画だが、営業利益は引き続き増益の計画を発表しており、引き続き好調な推移を見込んでいる。

株価も堅調に推移

増益を続けるヤマハは株価も堅調に推移しており、2018年も順調に株価は上昇中だ。ヤマハの株価は過去3000円手前の水準で1997年、2007~2008年にピークを付けている。しかしながら2015年に3000円前後の水準でもみ合った後に上昇が加速し、2018年6月11日には6050円まで上昇し、上場来高値を付けた。

予想PERも約27倍であり、東証1部の平均PER約15倍を大幅に上回っており、株式市場からも評価されている。

中国での楽器事業の拡大が成長の原動力

ヤマハは楽器の会社のイメージの通り、楽器事業の売上高・利益がその半数以上を占めている。その楽器事業において、中国での成長が著しい。楽器事業は地域別販売状況を見ると、日本は770億円と地域別では最大の販売量を誇るが2015年3月期には1000億円の販売額があったものの、少子高齢化を背景に販売額の低下が顕著だ。

同社の成長を支えるのは中国での販売拡大にある。日本での販売額が1000億円を超えていた2015年3月期の中国での販売額は293億円に過ぎなかったが、2018年3月期には410億円にまで拡大した。2019年3月期も更なる成長を見込んでおり、販売額は451億円にまで拡大の計画となっている。

北米及び欧州の販売額が500億円程度の横ばいで推移しており、あと一歩で中国での販売額が北米や欧州並みの規模に到達し、海外での販売額がいずれの地域でも500億円程度でバランスすることになる。

また日本・北米・欧州・中国を除くその他地域での販売額も2018年3月期に501億円に到達しており、同社は国内の販売減少が進む中で世界各地でバランスよく稼ぐ体制を構築しつつある。

2019年3月期も中国及び新興国での拡大を目指す

ヤマハの2019年3月期計画は売上高4420億円(前年同期比+2%増)、営業利益550億円(同+13%増)、当期純利益400億円(同▲26%減)としており、引き続き増収増益を目指す計画だ。

中国市場は引き続き2桁の成長継続を見込んでおり、また同社カテゴリーではその他地域とされている、新興国での成長も継続する見込みとなっている。

日本の高度成長期に各家庭にピアノが普及し同社の成長を支えたが、約半世紀の時を経て経済成長著しい中国や他の新興国では、かつての日本と同様の光景を迎えていることが、同社の決算状況から垣間見える。

ヤマハは、中国や新興国の経済成長の恩恵をこうむることのできる銘柄となりつつあるようだ。

世界的な景気動向に業績が左右される可能性も

足元では米国経済の好調さが目立っているが、日本でも好調な景気が継続している。一方で中国やアジア地域では日本以上の良好な景気が継続している。

東京や大阪に中国を始めとするアジア地域からの訪日観光客が殺到している姿は、それら地域の好景気及び経済成長の象徴と考えられる。

旅行やヤマハの手がける音楽への支出は、生活の上で必要不可欠な支出ではない。よって生活に余裕が生じた後で初めて支出される分野であり、それら分野に資金が投じられている現在は、景気が良く家計に余裕が生じている証拠と考えられる。

しかしアメリカの長期金利上昇を背景に、新興国の通貨下落が進み始めている。通貨の下落は特に開発途上国においては、経済悪化要因となる。2018年5月末の時点では新興国の大幅な通貨下落はトルコリラ、アルゼンチンペソ程度にとどまっているが、多くの新興国通貨安が着実に進んでいる。

世界的な好景気を背景に、ヤマハは日本のみならず、世界各地域でバランスよく稼ぐ体制を構築しつつある。各地域の景気状況に左右されず、会社全体としてバランスよく継続的な成長を続けることができるのか、ヤマハは今後その成長力の真価を問われる時が来るのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

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