ドル円予想レンジ109.20-111.20
「HappyBirthday,Mr.President(ハッピーバースデー・ミスタープレジデント)」―。これは、1962/5/19にマリリン・モンローが10日後に誕生日を控えた当時のジョン・F・ケネディ米大統領に向けて艶めかしい声をプレゼントとして歌い上げた有名なシーンだ。
トランプ大統領の後始末が円に及ぼすリスク
トランプ米大統領の誕生日は6/14。その前日に2つの功績が評価され、円安浮揚力に寄与した、と筆者は見ている。ひとつは6/12米朝会談で朝鮮半島・非核化に取り組む合意を北朝鮮から引き出したこと。ノーベル平和賞候補にも推薦され、日朝首脳会談の可能性にも転じている。無論、トランプ外交が軍事オプションを放棄するとは思えないが、以前のように軍事衝突懸念でのリスク回避/円高圧力は低減したと読めそうだ。
もう一つは、財政政策だ。6/13FOMCでの利上げ理由としてパウエルFRB議長が「企業投資が力強く伸びていて先行きも引き続き好調だ。積極的な財政政策も経済を後押ししている」と述べている。不定見ながらトランプ施策が米実体経済を良好にさせ、法人税減税と投資拡大で生産性が向上し、経済拡大に貢献、と讃えた観にも映る。
先進主要国比で金融政策正常化に成功しているFRB≒ドルが対主要通貨で評価されるのも至極、自然だ。艶めかしい歌のプレゼントではないが、これらはトランプ政策への質朴的応援歌と言えよう。
しかし、誕生日パーティーの宴の後には後始末があることを忘れてはいけない。例えば、米朝首脳会談後は事務レベルで具体的な非核化ロードマップ策定に進むこととなろう。しかし双方の不整合露呈は円安浮揚力を後退させ、また安倍首相の意向をトランプ大統領が代弁した経緯なら、非核化への相応負担、日米通商問題での譲歩、円安自主規制等も否めない。加えて米経済好調≒FRB利上げの継続は新興・資源国からの資本流出を招きかねず、ドル高の裏表として新興・資源通貨の失速リスクを潜ませている点も忘れてはいけない。前号で指摘した欧州中銀会合では、利上げ見通しを19年央としたことでユーロインセンテイブは低下した。ドル高≒他通貨安が円を圧迫、とした式も有り得るのだ。
6/18週ドル円焦点
6/14からW杯サッカー・ロシア大会開幕。欧州勢の手控え、そしてラマダン断食月明け・石油輸出国機構(OPEC)睨みの中東勢再始動などが警戒される。需給指針となる200日線(110.20近傍)を意識し、上値焦点は6/13高値110.86、5/23高値110.925。5/22高値111.20、5/21高値111.405、1/18高値111.495期待値。下値焦点は6/14安値109.91、6/11安値109.35、6/8安値109.185、109円台維持。割れると6/1安値108.72、5/30-31安値圏108.37-34、5/29安値108.10。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト