2016年1月に日銀がマイナス金利を導入して以降、日本では住宅ローンが過去最低水準にまで下がっている。2018年6月現在、一部の例外を除いて全般的に住宅ローン金利が引き上げられたとはいえ、上がり幅は0.02~0.67% と小さい。固定20年超の金利を最大に引き上げたソニー銀行ですら1.453~1.503%。変動金利が8.5%まで上がったバブル期とは雲泥の差だ。

2008年の金融危機以降、先進国を中心に世界的な低金利傾向が定着しているとはいえ、ここまでの大盤振る舞いの住宅金利を提供している国は日本以外にあるのだろうか?

政策金利は住宅ローンにあまり影響しない?

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(画像=Andrey_Popov/Shutterstock.com)

住宅ローンを含むあらゆるローンの金利は、中央銀行が定める金利に影響を受ける。一般的には中央銀行が政策金利を下げれば住宅ローンの金利も低くなり、政策金利を上げれば住宅ローンの金利も高くなるといわれている。しかし国・地域の住宅事情や経済情勢によって異なり、すべての国・地域に該当するわけではない。

Globalrate.com2018年6月8日 のデータによると、マイナス金利を導入しているスイスは政策金利がマイナス0.75%、住宅ローンは3~15年固定で1.23~2.03%。 スウェーデンの政策金利はマイナス0.50%、住宅ローンは3~10年固定 で1.85~3.50%。

政策金利が17.75%というトルコでは、住宅ローンの金利も低い。その上2018年に入り、大手による住宅ローン金利の引き下げが目立つ。最大手ズィラート銀行は満期10年以内、最大11.7万ドルまでの住宅ローン金利を月利1.23%から月利0.98%へと引き下げた。ハルク銀行も同じく0.98%という超低金利を提供している(ロイター2018年5月10日付記事 )。

政策金利が7.25%のロシアは、住宅ローンの金利が高い。2017年4月、ロシア貯蓄銀行が金利を12%から9%以下に一時的 に引き下げたものの、2018年3月にはプーチン大統領が「自国の住宅金利を7%に抑えるべき」との声明を発表した(ロイター2018年3月1日付記事 )。

米住宅ローン金利、年内に5%に引き上げ?

2015年12月、9年ぶりの利上げに踏み切った米国は、利上げとともに住宅ローンの金利も上昇。

種類によって差があるが、2018年6月7日のモーゲージニュース・デイリーのデータによると、固定期間を問わず3~4%台が相場のようだ。

一例を挙げると、米住宅ローン市場で最大の規模を誇るウェルズ・ファーゴの金利は、15~30年固定で4.25~4.75%。5、7年変動は各4.250%、4.375%。第2のJPモルガン・チェース は15、30年固定が各3.875%、4.5%。7年変動が4.250%。バンク・オブ・アメリカは15~30年固定で43.0~4.5%、5~10年変動で3.75~4.125%。USバンクは10~30年固定で4.125~4.625%、3~5年変動で3.500~4.125%など。

確実に家計を圧迫する要因として懸念されているものの、アメリカの景気がよく、賃金上昇への動きが活発化していることから、現時点においてはそれほど深刻視されていないようだ。

しかし一部の地域では既に住宅価格が高騰し、初めて住宅を購入する消費者にとっては厳しい状況となっているという。

最も消費者に影響をあたえるのは、30年の固定金利の上昇だろう。連邦住宅金融抵当公庫の調べによると、2月に30年固定住宅ローン金利は4.40%と2014年4月以来の高水準に達している(ロイター2018年2月23日付記事)。 モーゲージ・バンカーズ・アソシエーションの予想では、年内に4.6% に引き上げられる可能性もある。

英国、年内利上げ実施?住宅ローン金利も上がる?

ゼロ金利政策が続くEU圏はどうか。イングランド中央銀行(BOE)による政策金利が0.50%という英国は、住宅ローンの金利が日本と同水準に落ち込んでいる。

2017年4月にはヨークシャー信用金庫が0.89%という、英国の住宅ローン市場で最も低い金利を発表して話題を呼んだ(ガーディアン2017年4月21日付記事) 。

しかし市場では2018年後半にBOEが政策金利を0.75%に引き上げるとの見方が強く、BOE自体も2021年までに最低3度の利上げを行う意向を示している(moneytothemasses.com2018年5月28日付記事)。

同国では1977~79年にかけて、住宅ローンの金利が5%から17%へ一気に上がった過去がある。さすがにそこまで極端な利上げは実施されないだろうが、緩やかな利上げにともない、住宅ローンの金利も引き上げられるものと思われる。

投資ジャーナリストのジョン・エレッジ氏は、ガーディアン2017年4月21日の寄稿の中で、「英国は住宅バブルの末期にさしかかっている」とし、いずれ住宅バブルが弾けると指摘。そしてバブル崩壊が現実となった時、低金利ローンの利用者が資産を失い、金利が一気に上昇する危険性に警鐘を鳴らしている。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)