(本記事は、Mac安田氏の著書『儲かる!民泊経営』徳間書店、2018年2月28日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『儲かる!民泊経営』シリーズ】
(1)民泊で「ブランドなし」「知名度なし」「資本なし」でもやっていける作戦とは?
(2)「民泊が盛り上がるのはオリンピックまで」のウソ
(3)民泊で「空き部屋」をなくし満室にするコツ
(4)民泊ゲストは「楽しい体験」にお金を払う──高級料亭と大衆店どちらを選ぶか?
(5)民泊用のマンションのベストな広さは何平方メートル?

儲かる!民泊経営
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

民泊経営に、東京オリンピックは関係ない

「民泊出現!」と話題騒然となった頃、「民泊が儲かるのは東京オリンピック・パラリンピックまで」というのが世間の見方でした。

ところがそれは、とんでもないお門違いというものです。

オリンピック・パラリンピックの東京誘致に成功した時期にたまたま民泊が話題になっただけで、何ら因果関係はありません。

オリンピックに関係のないところで今、世界的な海外旅行ブームです。それは、アジアの国々の人々が豊かになってきたことの一つの表れかもしれません。

世界の年間海外旅行客は2000年の7億人から16年には12億人に増え、30年には18億人になるとのことです(国連世界観光機関の長期予測)。

また、世界旅行ツーリズム協議会による試算では、世界の観光関連産業は16年に2.9億人の雇用と、世界のGDPの10.2%に当たる7.6兆ドルを生み出すとしました。

さて、日本は2017年に過去最多の2869万人の外国人旅行客を迎えましたが、それでもまだ世界16位です。日本は自然・文化・気候・食と観光の4条件を備えており、旅行・観光競争力ランキングでは世界第4位です(出所・世界経済フォーラム)。

しかも、所得が急増しているアジアに近いという好条件なのに位とは、まだまだ実力を発揮できていないのが現状です。

一方、同じアジア圏であるタイへは、16年に3200万人が訪れました。

タイは1970年代後半から観光業を成長戦略の一つに掲げ、ビザ緩和とともにリゾート開発にも力を入れ、5つ星ホテルの数は日本の数倍もあります。

それに比べて日本の観光地は世界の市場に対するビジネスを考えてこなかったし、行政が動き出したのも2000年代に入ってからです。観光資源の整った日本はこれからが勝負ですし、まだまだ伸び代があるといえます。

私たち民泊組も大いにハッスルしましょう。ハッスルという単語は昭和すぎるかもしれませんが。

変化のスピードは、目が回るほど速い

儲かる!民泊経営
(画像=Korkusung / Shutterstock.com)

民泊はこの1年で劇的な変化をとげました。

2016年春、私がエアビーのサイトを覗いた時、そこに紹介されていた部屋は単なるワンルームマンションでした。

ワンルームマンションにベッドを置いただけ......それでも宿泊客を確保できたのです。16年、京都の民泊のさきがけCozyさんは京都御苑の南西と三条神宮道など人気の場所で室近くを営業し、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。

ところが2017年初夏、すでにその姿はありません。そうなった原因は3つあると思います(裏を取っていない私の見立てで恐縮ですが)。

(1)ワンルームマンションを借りての営業だった。
(2)清掃とリネンサービスの費用がかさんだ。
(3)無許可営業だった。

ひと口で言うと、宿泊施設営業はそんなに甘くないということです。

民泊事業は、ただお金を動かして稼ぎたい人には向きません。逆に、ゲスト(お客)との交流を楽しめる人(ホスト)なら、趣味と実益を両立させることができます。

お客をナメれば、たちどころに退場処分

17年の夏になると、エアビーはまったく違った様相を見せ始めました。

16年までは1Kにベッドを置いただけのものや、「町家」と称して、単に古く汚い家に湿った布団と臭い枕を転がしたような物件ばかりでした。明らかにゲストをナメていました。「連中は泊まるとこないんやから、これで十分や」と平気で発言している民泊オーナーに出くわしたこともあります。

何を言おうと自由ですが、このようなオーナーの民泊が生き延びられる時代は終わりました。質の悪さはすぐにネットで拡散しますし、サービス業の安定経営の基礎であるリピート客を期待できなくなるからです。

おもてなしバカになってはいけませんが、お客をナメたりすれば即退場処分が待っていることは覚悟しなければならない市場になってきました。

一部の民泊はホテルや旅館に引けを取らないほどレベルアップし、新たなジャンルを築きつつあります。

16年までの民泊はホテル不足の受け皿としての位置づけでしたが、18年にはホテル不足は完全に解消するでしょうから、民泊経営をお考えの方は、新たなジャンルとしての宿を目指さないといけません。

民泊とホテルの「相互乗り入れ」が始まった

民泊を扱うエアビーはいわゆるアマチュアリーグであり、ブッキング・ドットコムを代表とする宿泊客集客サイトは本業のホテルを扱うプロリーグといえます。

ひと口に民泊といっても、雑魚寝(2段ベッド)1泊2000円というものから、「1日1組様限定。特選食材を匠の技で~至高の味をたっぷり堪能!2名様13万6000円」というものまで、天と地ほどの差があります。

エアビーからプロ集客サイトへの移籍が目立つようになったのは、2017年の春のことでした。

エアビーに籍を置きつつ、ブッキング・ドットコムも活用する並行運転の民泊もありますが、エアビーからすっぱりと退場した民泊も多数あります。

その原因は、「ねっぱん」や「手間いらず」などのサイトコントローラーが、エアビーの締め出しを図ったものと私は考えています。

なぜならエアビーは旅館業許可を得ていない、つまり防災面、衛生面での検査を受けていない施設を扱うからです。

これはゲストにとってよくないことですし、旅館業界に言わせれば、「資格のない者が、われわれ有資格者と同じ扱いを受けること自体が不当!」という理由で、旅館業界がサイトコントローラー会社に圧力をかけたのではないかと、私は推測しています。

説明があとになりましたが、サイトコントローラーとは複数の集客サイトを使うときの調整役となるシステムです。

たとえばあなたのホテルが、ブッキング・ドットコムとエクスペディアと楽天トラベルの3つで集客しているとしましょう。

ホテルの総客室数が30室だったら、まずは各サイトに10室ずつ割り当てますが、ブッキング・ドットコムは圧倒的な集客力があるのでまたたく間に10室を満室にしてしまいます。

その時点でエクスペディアが残4室、楽天トラベルが残5室だったとすると、エクスペディアから2室、楽天トラベルから3室をブッキング・ドットコムへ移動させて、全体でいかに早く30室を満室にするかやり取りするのが、サイトコントローラーの本分です。

第二の仕事はダブルブッキング防止です。

民泊個人経営者にとっては、ダブルブッキング防止がサイトコントローラーに求める最大の仕事です。ダブルブッキングとはご存じの通り、1つの部屋に2組のゲストからの予約を受け付けてしまうことです。この失敗には、熱が出るくらい厳しい罰が待っています。

私はエアビーの他に、アゴダと楽天トラベルを加えて3つのサイトにお世話になっています。

つまり、1つの部屋を3つのサイトに競争させて予約を待っているわけです。

たとえばアゴダが一番に予約を受けたら楽天トラベルとエアビーは瞬時に手仕舞い(売り止め)しないと駄目です。

時差の関係で予約は夜中の3時に入ることもあり、サイトコントローラーを利用していなければ私が起きる7時半までの4時間半もの間、ダブルブッキングの危険に晒されるわけです。

これでは、おちおち寝てもいられません。寿命が縮まるだけです。だからこそ、サイトコントローラーが必要なのです。

エアビーの人と人を繋げるコンセプトに好感

エアビーは2016年に日本の役所から、「無許可な宿泊施設を取り扱わないように」と指導を受けたものの、どこ吹く風......。飛ぶ鳥を落とす勢いで利用者を増やしましたが、意外な角度から攻略されたようです。

17年の夏すぎにエアビーから、「使い勝手をよくする機能改善をした」との報告がありましたが、私の評価では、「的外れ」「他社の後追い」という稚拙な内容であり、むしろエアビーのポリシーを傷つけたと感じました。

エアビーは随分焦っているなと思った矢先、17年11月17日の読売新聞の1面に、公正取引委員会が独占禁止法(不公正な取引方法)の疑いでエアビー日本法人の立ち入り検査をしていた、という記事が載りました。

それでも私は、エアビーが好きです。なぜならエアビーのサイトの作りは、人と人を繋ぐことに重きを置いているからです。

その結果、ゲストはフレンドリーであり、世界中に友だちができるという、ホストはお金以外の財産を得られるからです。エアビー頑張れ!

Mac安田(本名 安田昌弘)
1955年京都市生まれ。一級建築士。Macデザイン研究所代表。設計事務所に勤務後、宮大工の棟梁に弟子入りして寺社建築に取り組む。その後はマンションや個人住宅の設計・建築に従事。特に外断熱住宅に早くから取り組み、デザインと断熱性、耐震性を両立させた独自の境地を切り拓く。「お客様とは一生のお付き合い」がポリシーの熱血建築家である。主な著書に『プロが教える!建築費500万円を節約するかしこい家造り』(実業之日本社)、『収益住宅のすすめ』(筑摩書房)、『外断熱住宅はここが凄い!』(日刊工業新聞社)などがある。