(本記事は、Mac安田氏の著書『儲かる!民泊経営』徳間書店、2018年2月28日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『儲かる!民泊経営』シリーズ】
(1)民泊で「ブランドなし」「知名度なし」「資本なし」でもやっていける作戦とは?
(2)「民泊が盛り上がるのはオリンピックまで」のウソ
(3)民泊で「空き部屋」をなくし満室にするコツ
(4)民泊ゲストは「楽しい体験」にお金を払う──高級料亭と大衆店どちらを選ぶか?
(5)民泊用のマンションのベストな広さは何平方メートル?
目指すのは高級料亭か大衆店か、それとも…?
宿泊施設は、全国的にすでに供給過剰気味です。
ただしそれは「数量」に限った場合。統計は単なる数量です。
たとえば、飲食店で考えてみてください。
もしあなたが民泊を始めるとしたら、1店舗しかない高級料亭と全国展開中の大衆チェーン店の、どちらを目指しますか?
高級料亭を目指したい気持ちは分かりますが、いきなりは難しいはず。
では大衆チェーン店でしょうか?悪いことは言いません、その線はやめましょう。
なぜなら、東横インやアパホテルと勝負するようなものです。資本力、組織力でかなわないのは明白です。
ならば、どのあたりを突くと勝算があるのでしょうか?私は、繁盛を持続できる民泊は次の2タイプしかないと思います。
世界中のバックパッカーが、一期一会を盛り上げる
一つは、ズバリ「モノよりコト」の民泊。
部屋の良し悪しは二の次。ワクワク体験を提供する――これはエアビーのポリシーそのものですが、実践している施設は多くありません。
そんな中、本気で取り組んでいるのが、”世界中のバックパッカーが集うゲストハウス”として人気のジェイホッパーズです。
国内で店舗を展開しており、京都に第1号店があります。建物内には、どこにでもありそうな2段ベッドと共用の水回り程度。実に簡素ですが、清潔で親切でフレンドリー。
ジェイホッパーズは、世界のバックパッカーズ御用達となっています。
世界から来たゲスト同士が一期一会を楽しむ。ホストとの交流も楽しむ。
ホストは出しゃばらず、ゲスト同士が打ち解けやすい雰囲気を作り、愛情を持ってそっと見守ります。本当のおもてなしとはこういうことなんでしょうね。
ゲストは、楽しい体験にお金を払うのです。
ジェイホッパーズ京都の宿泊料金は、ドミトリー(3~8ベッド)が1人1800円~、和室シングルで人3000円~(いずれもバス・トイレ共用)。決して激安ではありません。
私はジェイホッパーズのスタッフと交流があり、いろいろとお話を聞きましたが、彼らは本当に人間が好きです。
だから無理なく自然にゲストと交流できるし、ゲストを楽しませるのが得意、というよりホスト自身が心底楽しんでいます。そのため、ジェイホッパーズは、常に楽しい雰囲気に包まれています。
現在は、形だけを真似した安宿が急増していますが、1泊1000円でも閑古鳥が鳴いているところもあります。
ゲストをナメてはいけません。
「楽しそうだから、やってみようかな?」という軽いノリでは駄目ですよ。人が好きでたまらないという人でないと、民泊の経営者は長く続きません。
加えて、自分の時間をかなり自由に使える人でないと、成功しないでしょう。
残念ながら私はそこまでできないので、次にお話しするデザイナーズホテルを選びました。
デザイナーズホテルが、民泊の可能性を拡大
小規模で個性的、かつデザインの優れた高級なホテルのことを、欧米では「ブティックホテル」、日本では「デザイナーズホテル」と呼びますが、これは明らかに個人経営に有利な形態です。
なぜなら、その価値を分かってくれる、ひと握りのゲストを集めればいいから。これが、繁盛するもう一つの民泊のタイプです。
大企業は大勢の顧客を得るため、膨大な宣伝費をかけてブランドを構築します。
結果、たくさんの人が集まります。その中には、「人気だから」「有名だから」という理由だけで足を運ぶ人も少なくないでしょう。
しかし幸か不幸か、個人経営者は大企業のやり方を真似することはできません。
マネーが足りないからだけでなく、そもそも”真似”する必要もないのです。
大企業と血で血を洗うような争いに参加することは、まったくもって無用。
個人経営者は、シェアを争わなくていいんです。自分の宿の価値を認めてくれる人だけを集めればいいのです。それがデザイナーズホテルの強みなのですから。
以上、二つの道を実行するとどうなるでしょうか。ズバリ、値下げ競争に参加せずに済みます。
事実、私の宿には驚くほど高い値でも予約が入ります。
ただし、稼働率は高くありません。逆に言えば、まさに個人経営向きといえます。
猛烈に忙しくなることが目的ではなく、ゆっくり余裕で、高収入。このほうがいいではありませんか。
Mac安田(本名 安田昌弘)
1955年京都市生まれ。一級建築士。Macデザイン研究所代表。設計事務所に勤務後、宮大工の棟梁に弟子入りして寺社建築に取り組む。その後はマンションや個人住宅の設計・建築に従事。特に外断熱住宅に早くから取り組み、デザインと断熱性、耐震性を両立させた独自の境地を切り拓く。「お客様とは一生のお付き合い」がポリシーの熱血建築家である。主な著書に『プロが教える!建築費500万円を節約するかしこい家造り』(実業之日本社)、『収益住宅のすすめ』(筑摩書房)、『外断熱住宅はここが凄い!』(日刊工業新聞社)などがある。