(本記事は、Mac安田氏の著書『儲かる!民泊経営』徳間書店、2018年2月28日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『儲かる!民泊経営』シリーズ】
(1)民泊で「ブランドなし」「知名度なし」「資本なし」でもやっていける作戦とは?
(2)「民泊が盛り上がるのはオリンピックまで」のウソ
(3)民泊で「空き部屋」をなくし満室にするコツ
(4)民泊ゲストは「楽しい体験」にお金を払う──高級料亭と大衆店どちらを選ぶか?
(5)民泊用のマンションのベストな広さは何平方メートル?
部屋はゲスト3人が泊まれる25平方メートルがベスト
民泊を新築するか、既存の事務所など広いスペースを間仕切って宿泊室に改造する場合、1部屋当たりの専有面積を何平方メートルにするかは、利益率に直結するものです。
既存のマンション(民泊化可能物件)を選ぶ時の条件としては、アクセスの次に大事な要素です。
結論から言うと、専有面積25平方メートルがベストです。
最大の理由は、ゲスト3人がどうにか泊まれる部屋にしておきたいからです。
私の宿は、専有面積25平方メートルの中に広めのユニットバス、洗面兼トイレ、バゲージスペース(荷物置場)、クローゼット、ミニバーを揃え、セミダブルベッド2台とソファベッド1台が置けます。
宿泊料は基本的に1室当たりの料金であり、1人で泊まっても2人で泊まっても同じ料金です。
3人になると寝具が増えるためその分を加算しますが、3人で割ると1人当たり割安になるよう設定してあります。
将来、賃貸マンションにしたいなら30平方メートルが◎
将来もずっと民泊を運営する気なら、「専有面積は25平方メートルがベストです!」で完結するのですが、10年ほど頑張って民泊で稼ぎ、その後は「賃貸マンションに用途変更して優雅に暮らそう!」という計画の場合は、少々悩ましいことが発生します。
なぜなら、賃貸マンション経営として絶対に有利なのは、30平方メートル強の1LDKだからです。
その理由は二つあります。
一つは、ワンルームに比べて対象年齢層が広いことです。
ワンルームは学生、もしくは社会人1~2年生が限度。その点、1LDKなら30代後半まで住めますし、おひとり様なら一生住むことも可能です。
二つめの理由は、広い所得者層から選ばれることです。
所得格差は年々広がる一方で、お金持ちの子どもなら学生といえども、1LDKが当たり前の時代になってきました。
実際、私が設計した同志社大学のすぐ側にある高級賃貸マンションは、50平方メートル1SLDK(広めの収納室が付いた1LDK)・家賃13万8000円ながら、18歳のお嬢様がご入居なさいました。
ここで押さえておきたいのが、30平方メートルの1LDKは、決して高額所得者向けではないこと。
30平方メートルの1LDKには、カップルでの申し込みが多数舞い込みます。
カップルは今まで別々のワンルームに住んでおり、1LDKに引っ越して一緒に住むことによって、ワンルーム2戸分より安い家賃で済むようになります。
これらの理由により、30平方メートルの1LDKの家賃は、高めに設定できるのです。
だからこそ悩ましいのです。民泊としては25平方メートルがベスト、賃貸マンションとしては30平方メートルがベスト......一体、どちらを取るべきでしょうか?
私は胸を張って、30平方メートルをおすすめします。
もしあなたがホテルのプロなら、25平方メートルにして部屋数を取るべきですが、個人経営であれば、どんな時代になってもつぶしが利く30平方メートルでいってください。
人任せにせず必ず自分で!それが成功の鉄則
民泊に限らず、経営者(社長)の最も大事な仕事は、経営方針を立てることです。
それ以外の仕事は、部下にさせるか外注すればいいのです。言い換えると、仕事はそれしかありませんし、経営方針の良し悪しが利益を決めます。
具体的には、企画・値付け・販促です。大きな会社ならそれぞれに部署があるでしょうが、個人経営者はこの3つの仕事を自分でやらなければなりません。
【立地=企画】
賃貸物件を借りての民泊経営は、東京駅や京都駅といった巨大ターミナル駅の近くか、外国人に知名度が高い駅の近くなど、人気エリアで行うべきです。
しかし、東京の一等地のワンルーム(民泊可能物件)の家賃は10万円を超える物件が多く、その家賃では採算割れが確実です。上限は10万円ですが、ほぼ同じ場所に4室以上運営することが条件となるので、かなり厳しい注文となります。
京都市内のベストエリアの家賃は7万5000円程度なので有望ですが、残念ながら民泊可能物件はほとんどありません。
次に新たな土地を購入しての民泊経営ですが、東京ではオリンピック誘致に成功した直後、京都では2016年あたりから、ホテル業界がホットなエリアを買い漁った末のバブル状態が続いているので、素人が手を出すと大ヤケドします。
すでにあなたが所有している土地での民泊経営の可能性ですが、私が実践した手応えによると、ベストエリアから少し外れた場所なら、工夫次第で集客可能と判断します。
【値付け】
宿泊料に影響を与える最大の要因は、季節と休日です。
その力はまるで、ハワイ・オアフ島のノースショアに押し寄せる荒波のように巨大であり、自然の力に抵抗することは死を意味します。
繁忙期の波の高さは閑散期の約3倍。
経営者がすべきは、波に逆らわずサーファーのように上手に波に乗ることです。波に乗るコツは、ズバリ先手を打つこと。
先手を打つには、次にどんな波がくるかを予測する能力が必要です。
【販促】
よい企画としっかりしたコンセプトが揃っても、「待ちの商売」では好成績は期待ゼロ。
季節ごとの強烈なキャンペーンが必要です。
販促でダントツなのは、やはり楽天トラベルです。
2017年10月22日のプロ野球CSシリーズで東北楽天ゴールデンイーグルスが勝てば「おめでとう!」、負ければ「よく頑張った!」と、どちらにしてもセールをやるわけです。
12月上旬では閑散期(1月と2月)の早得キャンペーン、さらに12月中旬は新春セールと催しが目白押しです。
「そんなにやりまくって効果があるのか?」と半信半疑でしたが、実際に参加してみると効果は絶大です。
やはり、ちょっとしたキッカケを与えることが販促になるのですね。
【知名度アップ】
数多くの集客サイトに登録することは悪くはありませんが、集金業務が煩雑になるデメリットもあるので、私は別の方法をおすすめします。
それは、インスタグラムなどSNSの利用です。
「このお部屋を気に入ってくれたら、インスタに投稿してください」と、部屋に掲示しておくだけです。さらに、「#Kyoto Imperial U.E.S.」とタグ付けをお願いします。
タグの長さはこれが限度。面倒くさいと思われた時点でアウトです。
【ホストの役割】
空港からスムーズに宿にたどり着けるようリードし、地元っ子のみぞ知る情報を伝え、今日もちゃんと楽しんでいるか愛情の目で見守り、「マイドオオキニ」と、「なんでやねん!」を振り付けとともに教え込み、別れ際には涙でハグ。
これが、ホストの役割です。すると確実にレビューに反映され、新たなゲストを運び込んでくれます。
これは重要で強力な販促ですから、絶対に実践してください。
【清掃とリネン交換】
これはシルバーさんが適役です。
何といっても、シルバーさんは昭和の主婦。掃除洗濯のプロであり、その段取りは非常に鮮やかです。
言っておきますが、シルバーさんはお年寄りではありません。
【特別清掃】
シルバーさんが掃除のプロとはいえ、あくまでもそれは日常のお掃除。浴室の排水口の奥の奥までは掃除できません。
年に1回くらいは特殊清掃の専門家”洗い屋さん”を呼びましょう。一気に輝きが蘇って、感動しますよ。
自宅兼民泊3室が、リッチシニアへの道
安倍首相が打ち上げた「一億総活躍社会」構想は私も大いに賛成ですが、具体的な職業として何がよいかと考え実践したところ、民泊業が最適だと実感しています。
定年後も70代はまだまだ元気に活躍できますが、今さら、「生産性の向上」を求める仕事はやりたくありませんよね。
「では、民泊は生産性と無関係なのか?」と問われると、そうでもありません。
ただし、それは企画と集客の部分だけであって、多くの時間と愛情を注ぐおもてなしにおいては、生産性を気にする必要はありません。
むしろホストがゆったりと構えていたほうが、ゲストも癒されるというものです。
世界各国から訪れたゲストとふれ合って元気をもらい、適度の軽作業で食欲も涌き、よく眠れる。さらにお金まで得られる。
こんな素晴らしい仕事が他にあるでしょうか。
たまには休みを取って海外へ。可能ならば、以前訪れてくれたゲストの家に泊めてもらう。世界中に友だちができて、行ってみたい場所に事欠きません。
このように、充実と余裕をバランスよく楽しめるシニア時代のキーワードは、「適度」です。民泊の経営を楽しむには、自宅兼3室が最適です。その根拠は次の通りです。
・忙しすぎず暇すぎず、「おもてなし」を楽しめる。
・清掃とリネン交換のためにシルバーさんを雇っても採算が合う。
・建築費は専用住宅の約1.5倍であり、全額融資を受けても年あれば返済できる。
・2世帯住宅として使えるのはもちろん、家族の増減にも即対応できる。
・自宅兼民泊なら、ゲストが来るのを今か今かと待つ必要はない。
Mac安田(本名 安田昌弘)
1955年京都市生まれ。一級建築士。Macデザイン研究所代表。設計事務所に勤務後、宮大工の棟梁に弟子入りして寺社建築に取り組む。その後はマンションや個人住宅の設計・建築に従事。特に外断熱住宅に早くから取り組み、デザインと断熱性、耐震性を両立させた独自の境地を切り拓く。「お客様とは一生のお付き合い」がポリシーの熱血建築家である。主な著書に『プロが教える!建築費500万円を節約するかしこい家造り』(実業之日本社)、『収益住宅のすすめ』(筑摩書房)、『外断熱住宅はここが凄い!』(日刊工業新聞社)などがある。