(本記事は、頼藤太希氏の著書『投資信託 勝ちたいならこの7本!』河出書房新社、2018年6月20日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『投資信託 勝ちたいならこの7本!』シリーズ】
(1)ボーナスの100万円「一度に投資」と「毎月1万円投資」ではどっちがトク?
(2)人気ランキングで上位にある投資信託を買うのは得?
(3)分配金で失敗しない「投信選び」3つのポイント
(4)踏んだら資産が減る「地雷ファンド」はこれだ
(5)投資信託の買い方どっち?銘柄にこだわるか、タイミングにこだわるか
ファンドは「テーマ型」と「通貨選択型」どっちが得?
・コストが高い割に、運用実績が振るわないものばかり
テーマ型ファンドとは、世の中で話題になっているテーマに関連する銘柄に的を絞って、投資する株式投資信託のことです。
CSR(社会的責任)投資、バイオ、再生可能エネルギー、再生医療、ロボット、AI、ヘルスケア、FinTech(フィンテック)など旬なテーマに関連している銘柄に絞ったテーマ型ファンドがたくさんあります。
今後も新たなテーマが出てくれば増えていくことでしょう。
なお、テーマ型ファンドは、テーマに沿った銘柄を選別するアクティブファンドがほとんどなので、ファンドマネージャーの銘柄選定にかかる調査や分析などの負担により、手数料が高いものばかりです。
手数料が高くてもハイリターンが実現できるならば、よいのかもしれませんが、そんなテーマ型ファンドはほとんどなく、あったとしても好成績が長く続かないものばかりのようです。
その理由は、世間で注目されるテーマは時間とともに変化し、あっという間に忘れられるからです。
仮に注目度が低くなっても、投資している企業の業績が長期的に伸びていれば、株価も上昇すると考えられるので問題はありませんが、注目度が低くなるだけでなく、業績が伸びず株価も上昇しなければ、テーマ型ファンドの運用成績も悪化するという流れです。
また、テーマが忘れさられると、ファンドへの資金流入が減るため純資産総額が小さくなり、その結果、運用継続が困難になって繰上償還されることもあります。
テーマ型ファンドはコストが高いうえにリスクが大きく、とてもおすすめできる投資信託ではありませんが、どうしても投資したいという方は、長期的にそのテーマが存続しうるのかを検討のうえ、短期的に投資すると割りきっておこなうのがよいでしょう。
通貨選択型ファンドは、株式や債券などの投資対象の値上がり益、配当、利子にくわえて、選択した通貨の為替差益、為替取引によるプレミアム(金利差相当分の収益)の3つの収益を源泉としたファンドです。
と説明しましたが、なかなか理解しづらいしくみだと思います。
なお”プレミアム”の補足をすると、選択した通貨の金利が、投資信託の「投資対象資産の通貨」の金利よりも高い場合は、その金利差相当分がもらえるということです。
逆の場合は”コスト”となり、金利差ぶんを支払うことになります。
多くの場合、現地通貨ベースの金利が高いトルコ・リラ、ブラジル・レアル、豪ドル、南アフリカ・ランドなど、リスクの高い新興国通貨が選択され、毎月高い分配金が支払われるように設定されています。
通貨選択型ファンドは、収益の源泉が3つもあるので、魅力的に映りますが、なんのことはない、それだけたくさんリスクをとっているということ。
くわえて、手数料が高いものがほとんどで、信託報酬は2%前後のものが多いようです。
相場が予想と反対に動いた場合には、分配金が減るうえ、基準価額も下がります。大きく損失を抱えても、高い運用コスト(信託報酬)はしっかり取られ続けます。
通貨選択型ファンドはコストが高すぎて、運用実績が振るわないものが多いのが実情です。
「テーマ型ファンド」と「通貨選択型ファンド」は、どちらも踏んではいけない「地雷ファンド」であり、手を出すと資産を減らす可能性が大。
投資することはおすすめできません。
「グローバル」と名のつく投資信託なら、世界中に均等に分散投資できる?
・「世界全体」とはいっても、割合が違う
「グローバル(Global)」は「世界的な・全体的な・地球全体の」といった意味の語です。ですから、グローバルと名がついていれば、世界全体に均等に投資しているように思えるかもしれません。
しかし、実際にはすべて均等というわけではありません。
投資信託協会「投信総合検索ライブラリー」では、投資信託名やキーワードから投資信託を検索することができます。また、「国内株式投信」「海外債券投信」など、カテゴリー別の検索や、つみたてNISA対象商品のみの検索などもできます。
試しに投資信託名に「グローバル」とつく投資信託を検索したところ、529件がヒットしました。
そのなかで、いくつかの投資信託の目論見書を見てみました。
例えば、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)は、世界の高配当利回りの公益株(電力・ガス・水道など)に投資する投資信託です。
目論見書(2017年11月11日交付目論見書)には「特定の銘柄や国に集中せず、分散投資します」とありますから、何となく世界中に投資をしているように思えます。
しかし、そのいっぽうで、「主な投資制限」欄には、「外貨建資産への実質投資割合には制限を設けません」という記載も見られます。実際どうかというと、組入上位5ヵ国のトップは「米国」で構成比は48.8%、組入上位銘柄のうち6銘柄が米国株という状況。
資産の約半分がアメリカのものになっているのです。
また、かつて純資産総額が5兆円を超えるほどの人気を博したグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)は、世界主要先進国の債券を主な投資対象とした投資信託です。
こちらも、目論見書(2017年11月30日現在)の「主要な資産の状況」を見ると、アメリカドル建ての資産が40.3%、ユーロ建ての資産が29.5%、円建ての資産が9.7%などとなっており、決して均等ではないことがわかります。
このように、「グローバル」と名がついていながら、実際はアメリカの株式市場や債券市場などに多く投資しているという投資信託はたくさんあります。中には、7割~8割が米国市場という投資信託もあるようです。
よりよい成果を得るための投資先を探した結果、アメリカ重視になったということですから、このこと自体は悪いことではありません。
しかし、アメリカ重視ということは、それだけアメリカの影響を色濃く受けるということです。アメリカの政治や経済を大きく揺るがすような事態が発生したときには、値動きが大きくなる可能性があります。
もし、世界全体に均等に投資をして、その可能性を回避したいのであれば、よく中身を確認してみることが大切です。
「全世界」への投資と「先進国」への投資、どっちがいい?
・結局、アメリカ経済の影響を色濃く受ける
ひとことでグローバルといっても、どこに投資するかによってリスクやリターンの度合いが変わってきます。一般的には、先進国より新興国のほうがリスク・リターンともに高くなる傾向にあります。
両者を取り入れた全世界型の投資信託は、その中間と考えればよいでしょう。
投資信託についてのブログを書く個人投資家ブロガーによる「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2017」で1位となった「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は、先進国・新興国問わず全世界の株式に投資する投資信託です。
2位の「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」は、前年まで3年連続1位を獲得していた投資信託。こちらは先進国の株式に投資します。両者ともインデックスファンドです。
「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」は、投資信託を通してアメリカのETF(上場投資信託)、バンガード・トータル・ワールド・ストックETFに投資する投資信託です。このETFは、FTSE Global All Cap Indexという指数を運用目標にしています。
FTSE Global All Cap Indexは、日本を含む先進国・新興国合わせて47ヵ国の大型・中型・小型株から算出される指標です。およそ7800銘柄を網羅しているため、これ1本を買うだけで、間接的にではありますが、7800銘柄にまとめて投資するのと同様の効果が期待できます。
いっぽうの「〈購入・換金手数料なし〉ニッセイ外国株式インデックスファンド」が運用目標にするのは、MSCI Kokusaiという指数です。
こちらは、日本を除く先進国か国の大型株・中型株、約1300銘柄の値動きを元に算出される株価指数です。したがって、これ1本を買えば約1300銘柄にまとめて投資するのと同じだというわけです。
分散投資によるリスクヘッジの観点から考えると、投資先はなるべく分散されていたほうが有利ですから、全世界への投資のほうがよいとは考えられます。
しかし、じつはFTSE Global All Cap Indexの資産の約半数、MSCI Kokusaiの約3分の2は、アメリカの株式です。したがって、どちらを買ってもあまり変わらないという見方もあります。
あえて優劣をつけるならば、米国市場の上昇時にはMSCI Kokusaiのほうが大きく上昇し、下落時にはFTSE Global All Cap Indexのほうが下落幅は小さくなる、といえるかもしれません。
頼藤太希(よりふじ・たいき)
慶應義塾大学経済学部卒業後、アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)で資産運用リスク管理業務に従事。2015年、(株)Money&Youを創業し、代表取締役社長に就任。女性向けWEBメディア『FP CafeR』や『Mocha(モカ)』を運営。『税金を減らしてお金持ちになるすごい!方法』(河出書房新社)、『人生100年時代!月5000円から始める50代からのお金の増やし方』(宝島社)、『税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『つみたてNISAでお金は勝手に増えていく!』(スタンダーズ)ほか著作・共著・監修書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員、金融工学コースシグマ検定1級。