このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。

2018年7月12日(木)Market TalkのSummary

年後半の日経平均の動きは?

7月の決算発表を受けてWトップの23,000円の高値を抜ける - 24,000円も十分射程距離だろう。問題は秋に11月の中間選挙前の不安心理でもう1回調整する恰好になるかどうか。ただ調整したとしても底は浅く、選挙さえ過ぎてしまえば、貿易戦争も決着するだろう。また秋は中間決算の発表があるので、再評価もあるだろう。正当なバリュエーション評価をしてやると年末25,000円という着地になるのではないか。

中間選挙に向けてトランプ大統領の追加関税攻撃は激しさを増していますが、日本の自動車に25%の関税を掛けられた場合、日本株とドル円はどのような影響を受けますか?

その時はショックを受けて下がるだろう。自動車にかけるというのであれば、自動車株と関連銘柄が売られてそれで終わりになるのではないか。 ただ、関税はその地域からの輸入品にかけるというもので、日本車そのものにかける、というわけではない。日本車は日本から輸出している部分もあるが、アメリカでも生産しているし、メキシコからもってきている部分もあるので、様子を見ることが必要であろう。 ドル円は影響を受けず、むしろ足元はドル高がどんどんすすんでいる。マクロ経済理論では、保護主義・保護貿易は自国通貨高になるという考え方で、これは教科書どおりの動きだ。トランプ大統領がやっていることは自国通貨高につながっている。

米中貿易戦争は日本にとって各論部分はマイナスかもしれませんが大局的には米中双方に安く製品を供給出来るのでメリットのほうが大きいのではないかと思います。

そのとおりで、米中で争っているのであれば日本は関係ないので日本から買ってという話になる。日本は漁夫の利を得る立場になると思う。

米国による2000億ドル分の追加関税リストの発表は、日本株や米国株にどう影響すると見ていますか。材料出尽くしで、このまま上昇しますか。それとも悪影響が長引きそうですか。

まだリストを見せただけで、発動していないので材料出尽くしではない。本当に発動した場合、関税はアメリカの輸入業者が支払うが、税金分については業者自身が負担するか、商品に価格転嫁することになる。2000億ドルの品目は主に日用品なので生活に影響が及ぶ。これは結局アメリカの消費者に対して増税するということになり、トランプ大統領の人気も完全に失墜するだろう。なのでこれはリストを見せただけでブラフ(脅し)だろう。

米中貿易戦争激化で米国債を中国が売却することも想定する必要はあるか?協議で解決できるか?

もちろん売るのではないか。米国債が売られれば、金利が上がり株が下がって、困るのはアメリカ。トランプ大統領が自分の成績を株価でみているとすれば、株式相場が崩れるとなるとさすがにあわてるのではないか。そういうことも中国はほのめかしてくるだろう。

中国外貨準備増加は、関税で報復するのではなく、元安で対抗する事で一旦平和的に解決出来ると言うようなシナリオもあるのでしょうか?

実際ゆっくりと元安になっているので、それで一部は相殺できるだろう。ただ通貨安だけですべて相殺はできない。結局代替される製品があるかどうかに尽きる。今はサプライチェーンが複雑で、いまさら関税がかかったところで、他を探すといってもすぐにはできないので、しばらくはこのままだろう。税金の分だけコストが上がるという対応をとらざるを得ないであろう。

これから発表になる四半期決算について見通しなどをお聞かせ下さい。

結構いいじゃないかという見方がじりじりと伝わってくると思う。為替ひとつとっても想定よりずっと円安だ。悪い数字はおそらくでてこないであろう。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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