不動産投資家なら誰もが超高利回りが出せる物件を見つけたいと思うもの。しかしそんな物件を見つけるのは容易ではない。実際に地方で利回りの高い一戸建て投資をして成功させている筆者が、賃料の相場感覚の養い方、地元の不動産会社との出合い方など、具体的な行動を指南する。
(本記事は、黒崎裕之著書『100万円からできる「地方一戸建て」超高利回り不動産投資法』=日本実業出版社、2018年6月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
【『100万円からできる「地方一戸建て」超高利回り不動産投資法』シリーズ】
(1)「地方に借り手は居ない」はウソ? 不動産投資物件を探すポイント
(2)地方で高利回り「超お宝」一戸建てを見つけるためにすべきこと
(3)物件の管理会社選びで「やってはいけない」こととは
賃料が暴落しているところを買ってはいけない
一般的に田舎の場合、賃料相場が暴落しているエリアは珍しくありません。しかし、そうでないエリアもあるのは事実です。
例えば、私の地元・石川県の金沢市は、賃料相場がそこまで崩れてはいません。利回りは埼玉県などとほぼ同じ程度です。新幹線が開通したことによって観光地としての地位を獲得したのが大きな要因だと考えられます。
賃料相場を確認する簡単な方法は、SUUMO、HOME’Sなどのウェブサイトで調べることです。
まず、地名や駅に絞って、家賃の安い順で検索していきます。そのとき最安値の価格が、ワンルームの場合1万円台になっていたら、投資対象外エリアの可能性が高いといえます。
ただ、修繕の問題もありますし、私の所有物件がある茨城県のとある市も1万円台ですが、安く買っていて満室経営ができているので、一概にダメというわけではありません。しかしその分、投資の難易度は上がります。
ちなみに、初心者がアパートを買うのであれば、ワンルームの賃料相場が3万円以上のエリアをおすすめします。3万円くらいでしたら、はじめて聞くような場所の物件でも十分に見つかるはずです。
不動産屋の実態を知ろう
不動産コンサルタントの多くは、仲介会社に紹介した顧客が成約したら報酬をもらっているケースが多いため、高価格帯の物件を買わせようとしている、という話を聞くことがあります。
もし本当なら悪質だと思いますが、そういう業者は少なからず存在するようです。
ひどいケースだと、満室なのにキャッシュフローが出ない物件を売っているという例もあります。
ただ、厳しい言い方をすると「投資は自己責任」という言葉があるように、投資の世界ではだまされるほうが悪いとみなされます。
これは株やFXでも同様ですが、とくに不動産投資の場合、地面師のようにだます側もプロフェッショナルなので、いくら注意してもだまされるときはだまされます。
これはある人から聞いた話です。
何人かの不動産コンサルタントは、儲からない物件を何億円分も買わせていて、2億円の物件を売ると、仲介手数料で片手で約600万円、その半分をキックバックでもらうということが起きているということでした。
ほかにも、売買契約の手数料の5%をバックしてもらっている投資家もいるようです。
また、海外不動産投資においても一般の投資家には見抜けない方法で、自分たちが儲かる仕組みを確立しています。
しかし逆にいえば、安い物件を狙えば、そういった悪質なコンサルタントにだまされる可能性は激減します。
詐欺師というのは、得てしてお金持ちのまわりに集まるものです。その道のプロは3年間合計1,000万円くらいおごり続けて、最後に1億円を回収するという手もあるようです。 私は実家が地主だったので、そういう怪しい人たちを何人も見てきました。
普通に会社勤めをしていると、こちらの世界を知らないかと思いますが、投資の世界は金に群がる狼が多くいます。
話も上手で身なりもしっかりしているので、なかなか見抜くのは難しいものです。
田舎には「賃料が値崩れしていない優良地域」が たくさんある
まず基本的原則として知っておきたいのは、「賃料は需要と供給によって決まる」ということです。これは都心でも田舎でも同じで、例外はありません。
したがって、田舎だから安いというわけではなく、そのエリアの独自のルールを把握する必要があります。
例えば、日本の地方では敷金・礼金はともに0円のエリアが多くありますが、そうではないエリアもたくさんあります。管理費を取らない管理会社もいるほどです。
そういう会社は、修繕費で稼いでいるか、もしくは小さい町であれば、賃貸と売買を両方おさえている場合もあります。そうすれば、物件に自社の看板を掲げられて広告代わりにもなるからです。
いずれにせよ、先入観を持たずに優良地域を見つけるようにしましょう。
ここでもおすすめは、SUUMOかHOME’Sで最寄駅または地域を検索し、安い順で並べ替えてみましょう。そうすると、相場が見えてきます。
ここで大事なのは、「相場で貸そうとしないこと」です。貸すことが目的ではなく、 満室にすることが目的なので、相場よりも安くしなければなりません。
ただ、低い賃料を上げるのは非常に難しいですが、逆に下げるのは簡単です。つまり、相場を知ることは大事ですが、実際にはその価格よりも下げたことを想定しないと、満室経営にするのに時間がかかるということです。
一見、無理だと思うエリアこそ、勝負する価値がある
よほど値崩れしていないエリア、あるいはある程度きれいな状態の戸建てなら、5万円の賃料は取れます。
例えば、私が新米投資家さんにコンサルティングをした案件での話です。
埼玉県のとある駅から車で20分のエリアの物件がありました。地震の影響を受けていた場所なので、最初は不安を抱かれましたが、「絶対大丈夫だから」と強くおすすめしました。結果、245万円で現金一括購入してもらい、約100万円かけて修繕し、今は6万8,000円で貸し出しているということで、非常に満足していただいています。
その物件を購入した新米投資家さんに最初に話したことがあります。
「楽をしたい人には不動産投資はすすめません。実際に1回買って学ぶために、まずは買ったらリフォームがてら、何度も物件を見に行ってみてください」とアドバイスをしました。
その後、彼は何回か見に行くうちに、近所の人に顔を覚えてもらい、ちょうど隣の物件が売りに出されていることがわかりました。それで私は購入するよう彼にすすめたのです。修繕の際には、彼はDIYが好きだったこともあり、ご自身でクロスも張り替えました。
ただ、地震の影響を受けたエリアだったこともあり、その影響が物件に出ているかもしれないと思い、「傾きはきちんと確認したほうがいいですよ」と忠告していたのですが、彼は見落としたまま購入してしまいました。
実際に、多少は傾いていたようですが、彼はジャッキを3万円くらいで購入し、自身で傾きを直していました。
ジャッキアップは機械が自動的に上げてくれるもので、一般の人でも使うことは十分に可能です。しかし、使いこなすには難易度は高いので、購入時にはやはり傾きにはとくに注意してください。
話を戻しますが、そのエリアは新興住宅街で区画もしっかりしており、5分以内に大きなスーパーやドラッグストアもあります。駅からは距離があるものの、地方は車社会なので気にすることはありません。
建物の傾きさえ直せば、十分に採算が取れる物件だと私は判断していました。
その後、駐車場の地面に穴が開いているのを見つけたと、後に彼から相談されました。おそらく地震の影響で地盤沈下が起こったのでしょう。
できた亀裂は放っておくと傾く可能性があるので注意が必要です。しかし、これは、セメントを流すことで解決しました。
よく不動産投資本には「基礎に亀裂が入った物件は買ってはいけない」と書かれていますが、値下げして買えるのであればいいと思います。亀裂が入ると、なかに入っている鉄筋コンクリートが爆裂して、基礎が弱くなります。
とはいえ、鉄筋部分が多少出たとしても、サビた部分にサビ止めをつけて、あとはセメントをかぶせれば大きな問題はないケースも多いです。
この物件は入居者がちゃんと決まりました。4LDKで90㎡の広い物件でしたが、戸建てでは、広さが重要なポイントになります。広ければ汎用性が高く、入居者に困ることはありません。
広すぎてダメということはありません。たとえ人数が少なくても、物置として使えるからです。
この物件でも、70~80代の老夫婦がゴールデンレトリバーを連れて入居しました。もともと地縁があったわけではなく、福島から来たそうです。
そういう例は決して珍しくないと思っています。
最終的に、部屋が汚れてしまったとしても、そもそも300万円くらいで物件を購入していれば売却はできます。これが500万~600万円だと、売却したマイナス分が増え、厳しいだけの話です。
この物件は350万円で利回り25%近くで購入したので、4年ほど貸していればもとは取れます。
繰り返しになりますが、「田舎だから入居者が決まらない」「ペット可だと面倒なことになりそう」というような先入観は捨てて、まず買ってみてください。
すべてはそこからなのです。
物件にほれるな!数字にほれろ!
戸建ては賃料を下げれば入居者は決まります。
もちろん、千葉の房総など、山や田んぼの真ん中にポツンとあるような物件は避けるべきですが、そういう物件は少数派です。90㎡くらいあって、家賃3万円台というのは私もそうそう見たことがありません。
ですから、まずはネットで全体的に家賃の価格が高いエリアのなかから、安い(あるいは安くできる)物件を買うことが大切です。
「エリアありきではなく、物件ありきで考える」ということです。知らないエリアはそもそも探しようがないので、まずは知っているエリアから探していきましょう。
少しずつ勉強して、勝負できるエリアを拡大すればいいのです。
重要なのは、「物件にほれるな、数字にほれろ」という考え方です。不動産選びは、いわば結婚と似ています。外見に惑わされて、中身(数字)をおざなりにしてしまうと、あとから「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
会社員の場合、平日は仕事なので物件を見に行けるのは土日がメインになります。すると、物件を見た途端、その物件に執着するようになってしまうのです。
不動産投資は、執着したら負けです。潔く売る。数字を見てよければ買う。これが肝要です。
不動産会社の立場で考えても、執着したお客さんは嫌がられます。
知識があることを下手にアピールしすぎると、「たった3%の仲介手数料しかもらえないのに……うるさい人だな。この人は契約したあとからでも面倒なことをいってきそうだな……」と煙たがられるわけです。
もし不動産会社を手玉に取ろうとするなら、会社員の常識は通用しません。
不動産業界には平気でウソをついたり、お金に関しては汚いことを平然と行なったりする人が当たり前のように存在しています。コンプライアンスの意識が低い人も多くいます。
ですから、とくに田舎の不動産会社の場合、相手から少しでも「なんだか面倒くさそうな人が来たな」と思われたら、「帰ってくれ」と平然といわれることもあります。
女性の投資家だと、「そもそもあなたが買えるんですか?」「決定権はあるんですか?」などとたたみかけられたこともあると聞きました。
そうならないために、実績のある人から紹介してもらうか、自分に決定権があることをアピールしましょう。ほかに不動産会社の信頼を勝ち取る方法として、預金通帳を見せるのも有効です。
いずれにせよ、重要なのは信頼できる不動産会社、もしくはコンサルタントを見つけることです。例えば、大学の同期が不動産会社に就職しているのであれば、相談してもだまされる可能性は低いはずです。
こうした人脈はどんどん活用してください。
ただ、そもそも地方の戸建てはだます人がいないに等しいというのが大前提としてあります。そのため、地方一戸建てを早く買うことはおすすめなのです。
黒崎裕之(くろさきひろゆき)
現役不動産営業マン兼、低リスク・高利回りで不動産を運用する個人投資家。不動産投資コミュニティ「Zero One Club」主宰。過去に家族が不動産の取り扱いに失敗し1億円を超える相続税を課されたことも。その経験から、上京後に不動産の世界に飛び込んだ大手総合不動産会社の現役社員で、数々のトップ営業成績を残す。