節税対策などのために「プライベートカンパニー」の設立をすすめられたことはないでしょうか。プライベートカンパニーとは、個人により設立された会社であり、金融資産や不動産などの個人資産の管理や小規模事業を目的として運営されます。会社設立を経験したことがなければ「難しいのではないか」と思われるかもしれませんが、そう難しく考える必要はありません。

プライベートカンパニーで選ぶべき会社形態

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(写真=Platoo Fotography/Shutterstock.com)

会社には株式会社などいくつかの形態があります。プライベートカンパニーの設立にあたり、どの形態の会社にするかを決めることが必要です。一般的に「株式会社」と「合同会社」の2つから検討することになります。

株式会社……経営者と出資者が別

株式会社は出資者と経営者が分かれていて、経営で得た利益を出資者に分配する仕組みの会社形態です。日本で一般に知られている会社は株式会社が多く、イメージしやすいでしょう。

合同会社……出資者が社員

合同会社は、出資者全員が社員として構成される会社形態です。アメリカでは、合同会社はLLC(Limited Liability Company)と呼ばれ、株式会社と同じように広く知られた会社形態です。日本の合同会社は2006年の会社法の施行によりスタートしました。合同会社は、スモールビジネスに適しているといわれますが、アップル社の日本法人も合同会社です。

違うのは責任の範囲

株式会社と合同会社の出資者は、出資の範囲で責任を負います。これを間接有限責任といい、仮に会社が倒産して多額の借金を負っても、出資者の責任範囲は限定されます。また、株式会社と合同会社以外の会社形態として合名会社や合資会社もありますが、多額の借金を負った場合には、それを全て弁済する無限責任を負うデメリットがあります。医師が自身の節税などを目的としてプライベートカンパニーを設立する場合、合名会社と合資会社を考慮する必要はないでしょう。

株式会社と合同会社の比較

株式会社のメリットは、社会的に認知度が高いことです。日本の大企業は株式会社が多く、株式会社ということで信頼度が高くなります。一方、合同会社については、前出のアップル社のほかにもアマゾンジャパン(Amazonの日本法人)などがあり、認知度は上昇傾向です。しかし、株式会社に比べると低いといえるでしょう。

合同会社のメリットは、株式会社に比べて設立コストが低いことです。会社設立を自分で行いコストを抑えた場合、株式会社は約21万円が必要になるのに対し、合同会社は6万円からという低コストで設立できます。また、合同会社には決算公告の義務がなく、決算書を毎年公開する必要がある株式会社よりコストや手間を削減できます。

最初の会社設立はコストメリットのある合同会社で設立し、会社が軌道にのってきたら株式会社へ変更するということもできます。

プライベートカンパニー設立の流れ

プライベートカンパニー設立の大まかな流れについて順を追って見ていきましょう。最初に会社設立準備として会社の必要事項を決定します。会社名(商号)、事業目的、資本金額などを決め、印鑑(代表者印、銀行印、社印、ゴム印)を作成します。

次に定款を作成します。定款とは会社の基本的なルールを定めたものです。作成した定款を申請し、株式会社の場合は公証役場で認証してもらいます。定款の作成と認証手続きは司法書士や行政書士に代行してもらうことも可能です。

定款の作成や認証が終わったら、資本金を払い込みます。この時点では会社の銀行口座はないため、発起人の個人口座へ払い込みを行います。続いて登記書類を作成し法務局に申請します。会社登記の申請は司法書士が代行することもできます。法務局に登記することにより会社が法人として認められます。

会社が登記されたら、登記事項証明書(登記簿謄本)と印鑑証明書を取得します。これらは法人の銀行口座の開設など、会社で行う申請などが必要です。また、税務署へ開業の届け出をして設立となります。

会社設立支援を利用すれば簡単にプライベートカンパニーを設立できる

プライベートカンパニーの設立の流れは確認しましたが、忙しい医師が自身ですべてやるのは現実的ではありません。こうした手続きは、税理士法人や司法書士・行政書士事務所などに依頼することになるでしょう。

専門家の力を借りることで、申請書類の作成や申請をする必要がなくなり、プライベートカンパニー設立のハードルは下がります。プライベートカンパニーの目的が主に節税ならば、税理士やコンサルタントに会社設立後の節税について相談しておくと良いでしょう。(松本雄一、ビジネス・金融アドバイザー / d.folio

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