「日経平均株価」は非常にポピュラーな指数だが、そう呼ばれるようになった経緯や算出の歴史を知れば、特徴をより把握することができるだろう。また米国ダウ・ジョーンズ社との関係や、かつて「日経ダウ」と呼ばれた背景などにも触れ、“225”という銘柄数の意味についても考察する。
「日経平均株価」とは
「日経平均株価」は、日本経済新聞社が東京証券取引所の第1部上場銘柄の中から225銘柄を選定し、この225銘柄の株価を使って算出する平均株価型の指数である。一般には、単純に「日経平均」や「平均株価」との通称で表記されることも多い。英語圏では「Nikkei 225」と呼ばれ、海外でも広く用いられている指数だ。
「日経平均株価」の算出は、1950年9月7日に開始された。だが、起点は過去に遡って1949円5月16日の176円21銭から計算されている。なお、最高値はバブル経済時の1989年12月末の3万8,915円である。昨今は、2万2,000円前後で推移している。(本稿執筆2018年8月時点)60年以上にわたって利用されている日本を代表する株価指数であり、日本の経済成長や景気動向を知るバロメーターとなっている。
当初は「日経平均株価」と呼ばれていなかった
1950年に算出が開始された「日経平均株価」だが、当初から「日経平均株価」と呼ばれていたわけではない。また、日本経済新聞社が算出していたわけでもなかった。当時は、東京証券取引所が算出しており、名称も「東証修正平均株価」として公表されていた。その後、1970年に日本経済新聞社グループが算出を引き継いで現在に至る。
「東証修正平均株価」の算出を手放した東京証券取引所は、当時、別の指数の算出を開始している。「日経平均株価」と同じく日本を代表する株式指数である「東証株価指数(TOPIX)」で、1969年7月1日から算出が始まった。このような背景で、「東証修正平均株価」の算出は日本経済新聞社グループが行うこととなった。
ダウ・ジョーンズ社との関係
現在多くの株価指数は、「東証株価指数(TOPIX)」のように市場の時価総額を基準に算出する「時価総額型」と、米国のダウ・ジョーンズ社が考案した「ダウ式平均」によって算出されるものに二分される。「日経平均株価」は、後者の「ダウ式平均」により算出される株価指数である。
採用銘柄の株価を合計し、それを銘柄数で割れば単純平均が算出できるが、「ダウ式平均」では分母に単純な銘柄数を用いない。なぜなら、構成銘柄の入れ替えや株式分割・併合などが発生した場合は、単純に銘柄数で割ってしまうと指数としての連続性が維持できないからだ。そのため、分母である除数を修正して指数としての連続性が保たれるようにしている。これが「ダウ式平均」の特徴である。つまり現在の「日経平均株価」の構成銘柄は225銘柄だが、分母は225ではないということだ。
「日経平均株価」とダウ・ジョーンズ社との関係は、指数計算に「ダウ式平均」を用いていることだけではない。過去、日本経済新聞社はダウ・ジョーンズ社の許可を得て、「日経ダウ平均株価」の名称で平均株価を算出し公表していた。そのため、1975年5月以降、公式に「日経平均株価」は「日経ダウ平均株価」と呼ばれていた時代があった。また、当時の一部の報道では、「東証ダウ平均株価」の名称も利用されていた。「日経ダウ」や「東証ダウ」とも呼ばれており、どちらも名称に“ダウ”が含まれていた。
「日経平均株価」は60年を超える歴史がある日本の株価指数であるが、その算出の主体も呼称も変遷してきた。若い投資家にとっては30数年前まで“ダウ”が含まれる呼称であったことは意外かもしれない。なお、1985年5月に日本経済新聞社はダウ・ジョーンズ社から指数算出の権利を買い取った。それと同時に“ダウ”が含まれる呼称は終了し、現在と同様「日経平均株価」と呼ばれることとなった。