(本記事は、長尾義弘氏の著書『最新版 保険はこの5つから選びなさい』河出書房新社、2018年7月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
この「5つの条件」で保険を決めなさい
保険は、複雑でわかりにくい商品です。
自分で情報を集めて選ぶとなると、かなり時間と労力をかけなければなりません。
まして、保険の知識があまりない人は、いっそう苦労することになるでしょう。
そのせいか、「病気になったら、こんなにお金が必要です」「もしものときにも、ご家族が困らないようにしないと」「人気の商品です」「みなさん、これを選んでらっしゃいます」といった保険営業員のトークに乗せられて、うっかり加入してしまいがちです。
でも、これでは営業員に選択を委ねてしまっていることになりますよね。なんといっても高額商品なのですから、人任せではいけません。
そこで、数ある商品のなかから「よい保険」を見わけるための、大切な条件を考えてみたいと思います。
こうすると、選択肢がぐっと絞られてきます。
その条件とは、つぎの項目です。
・一定期間の保険である
・シンプルな保険である
・貯蓄性のない保険である
・コストパフォーマンスがいい保険である
・途中で変更できるなど使い勝手がいい保険である
では、この5項目について、これから詳しく解説していきましょう。
・一定期間の保険
ライフプランによって、必要な保障は変わってきます。ですから、まったく見直しをせずに、一生涯にわたって同じ保険に入りつづけるのはお勧めしません。
扶養家族がいないのに死亡保険をかける、子どもが独立したり年金暮らしになっても大きな保障のままでいる、歳で終身払いの医療保険に入っている......これらは、じつに無駄だと感じます。
逆に、子どもが3人に増えたにもかかわらず、1人のときと保障額が同じというのも考えもの。いざというときに、これではたりないでしょう。
保険は状況に応じて、何度か見直していきたいものです。
ことに人生のなかで大きなイベントがあったときに見直すのがいいのですが、つい忘れてしまいがちですよね。
そこで、一定期間を保障する保険、つまり「定期型の保険」にするのがお勧めです。
満期が近くなると更新のお知らせが届きますから、更新をするか否か、保障額は変える必要があるか、などと考えるきっかけになると思います。
もちろん、終身保険に入っていて、保険料払い込み満了をすぎた保険を途中解約をすることもできます。
ただし、低解約返戻金型終身保険の場合、払い込み満了前に解約をすると、返戻金がかなり少なくなってしまうので注意が必要です。
基本的に死亡保険、医療保険、がん保険などは、一生涯の保障は必要ないと考えてください。ただし、相続税対策の場合は、終身保険は必要ですが。
・シンプルな保険
投資をする場合、「自分が理解できない商品には手を出さない」とは、著名な投資家ウォーレン・バフェットの言葉です。
保険もまた金融商品のひとつ。シンプルでわかりやすい商品を選ぶべきです。
大手保険会社では、主契約に特約をいくつもつけたパッケージ型の保険をよく販売しています。
特約が増えれば、それだけ保険料も高くなります。必要な保障ならしかたありませんが、よぶんな特約にまで保険料を払うのはもったいない話です。
パッケージ型の保険は、主契約の契約が終了したり解約すると、特約もそこで保障が終わってしまいます。
それに、特約の数が多すぎると、自分の保険にどんな保障がついていたかも忘れてしまいがちです。
入院や死亡した場合、黙っていても保険会社から自動的に給付金・保険金が支払われることはありません。すべて請求が必要なのです。
どれだけ保険料を払っていようと、請求をしない限り1円も受け取れません。保険会社の不払いというよりも、請求漏れのケースが多々あるのです。
複雑な保険にしていると、こういったミスも起こりやすいといえるでしょう。
また、アカウント型保険(正式名称は、利率変動型積立終身保険)と呼ばれる商品があります。国内生命保険会社の主力商品でもありました。
アカウント型保険はひじょうに複雑な仕組みになっていて、ちゃんと理解するのが難しい商品です。終身保険とうたっていながら、終身保険を買うことができる権利がついているだけ。
保険で積立ができるとはいえ、実際には多くが特約部分の支払いにまわされて、積立はごくわずか。こんな具合に、実態がつかみにくいのです。
そうしたわかりにくさのせいか、保険のランキング(『よい保険・悪い保険』/宝島社)では毎年、ワースト商品のほうに必ずランキングされています。
あるいは、個人年金保険では、金利スワップをつかった商品も登場しています。これはかなり高度な金融知識がないと理解できないような難解な仕組みになっています。
こういった商品ではなく、「死亡するとこれだけの保険金が出る」というシンプルな商品を選ぶべきです。
それから、特約をいくつもつけるのではなく、必要な保険を選んで、それぞれ単独で加入したほうがコストパフォーマンスがよくなります。
保険会社は、すべてのジャンルが得意なわけではありません。がん保険だけ強い会社があれば、医療保険でいい商品を出している会社もあります。それぞれ主力商品が違うので、各社からいいとこどりでチョイスしましょう。
・貯蓄性のない保険
掛け捨て型の保険には、どうも「損をする」というイメージが強いようです。しかし、これは誤解で、もどってくる保険(貯蓄性のある保険)のほうが損をしているのです。
保険と貯蓄はわけて考えるべきです。両方の機能を保険に求めると、どちらも効率が悪くなります。
個人で株とかETF(株価指数連動型上場投資信託)などを使って運用する場合は、売買手数料、口座管理手数料(無料の場合も)などは引かれますが、投資金額のほぼ全額を運用に充てることができます。
いっぽう、保険は保険料の全額を運用にまわすわけではありません。というのも、契約者に支払う責任準備金や保険会社の運営費用が差し引かれるからです。
しかも、いまは史上最低金利の時代で、予定利率は0.5%前後です。魅力のある利回りとはいい難いですね。
また、保険は超長期の固定金利です。貯蓄性を求めても、インフレでお金の価値が減ってしまうというリスクもあります。
・コスパがいい保険
コストパフォーマンスがいい保険というのは、どういうものを指すのでしょうか。同じ保障だったら、保険料が安いほうがコストパフォーマンスがいいことになりますね。
ただ、保険は複雑につくられているため、一概に比べることが難しい面もあります。
細かな適用事例が微妙に違っていたり、特約がついていたり。種類が多いところも、わかりにくさのひとつとなっているでしょう。
正確に比較するなら、保険のプロのアドバイスが必要になってきます。
自分で検討をする場合は、ある程度はジャンルを絞って、同じ条件で保険料を計算すると、コストパフォーマンスのいい保険商品が見えてきます。
一例を挙げてみましょう。
40歳男性、入院日額5000円の医療保険で比較してみます。
国内の大手保険会社だと、月額の保険料は約3500円です。通販型では、月額の保険料は約2100円になっています。
大手保険会社のほうが割高になっていることがわかりますね。これは営業員の雇用コストなど、事業にかかる費用が高めだからです。
近年の傾向としては、終身保険、定期保険などに「リスク細分型」を採用する商品が増えてきました。
リスク細分型とは、健康な人の保険料が安くなる仕組みです。自動車保険で走行距離に応じて保険料が安くなるのと同じですね。
喫煙・非喫煙、血圧値、BMIなどの条件をクリアする必要がありますが、非喫煙健康優良体の人はずいぶんお得になるはずです。非喫煙健康優良体と標準体では保険料に50%以上もの差が出る場合があります。
こうして比べてみると、同じ保障でも商品によって保険料が大きく変わってくるのがおわかりかと思います。できるだけコストパフォーマンスのいい保険を選びましょう。
・使い勝手のいい保険
「使い勝手のいい保険」とは、裏ワザがつかえる保険と言い換えてもいいかもしれません。
もしもの場合、保険料が免除になったり、契約の途中でも種類を変更することができる保険を指します。
保険金や給付金、保障をより多く得られるように変更する、つまり出口を重視するということです。
いくら保険料が安くても、保障内容が貧弱ではつかいものになりません。保障されると思って保険金を請求したのに、支払い対象外だったというのでは困ります。
たとえば、収入保障保険に入っていて、がんで余命1年と宣告されたとします。
収入保障保険は、年数とともに保障額が減っていきます。家族にすこしでも多くのものを残したいと願っても、余命宣告をされた状態では新しく保険に加入することはできません。
でも、健康状態にかかわらず、収入保障保険を定期保険、または終身保険に変更できる保険商品もあるのです。
こうすれば保障額の目減りを防ぐことが可能になります。
また、三大疾病になった場合、以後の保険料は免除になるという特約がつけられる保険もあります。大きなリスクに対処するのが保険の役割です。
いざというときに柔軟に対応できる保険を選びましょう。ただ、がん保険などは、保険の仕組み的な問題で変更できない保険もあります。