(本記事は、長尾義弘氏の著書『最新版 保険はこの5つから選びなさい』河出書房新社、2018年7月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「義理と人情」の保険は高くつく

保険はこの5つから選びなさい
(画像=Freedomz/Shutterstock.com)

「あなたのための保険をカスタマイズしました」と、保険の営業員が設計書をもってきて、保険加入を勧められた経験はありませんか。

これは国内大手生命保険会社の商品によく見られる特徴ですが、「主契約」にいろいろな「特約」がついたパッケージ型の保険です。

主契約は終身保険やアカウント型の保険が多く、そこに定期保険特約、医療特約、入院特約、災害特約、三大疾病特約(がん、急性心筋梗塞、脳卒中)、介護特約など、さまざまな特約をのっけてつの保険にしているのです。

特約がいくつもつくので、保険料は当然、高くなります。

パッケージ型は、1つの保険会社・1つの契約で、すべての保険をまとめられる利点はあるものの、結果的には不必要な保険にも入ってしまうことになります。

また、特約が多くなるということで内容が複雑になり、どんな保障があるのかがわからなくなってしまいます。

結果、自分が入っている保険の全体像がつかめなくなり、請求でもきることも知らないままになって、請求漏れという損な事態になります。保険はシンプルなのがベストなのです。

それに主契約の払い込みが満了となると、特約部分もすべてなくなるという保険が多くあります。

使い勝手が悪く、パッケージ型の保険には利点をほとんど見いだせません。

また、営業員がずっと面倒を見てくれる保険がいいと思っている人もいますが、そうともいえないと思います。

営業員の離職率はけっこう高いので、同じ人がずっと担当でいるとは限りません。

また、つき合いが長くなると、契約更新のたびに新しい保険を勧められ、結果的には損になっているかもしれないのです。

以前、知り合いからこんな相談を受けました。

「保険を勧められているのですが、義理があるので断りにくいんです。一緒に保険の営業員に会ってくれませんか」というのです。

義理で保険に入るのは絶対におかしい、入らないほうがいいと、かなりの時間をさいて説明したものの、けっきょくは同行して話を聞くことになりました。

そこで提案されたのは、やはり定期保険特約付終身保険で、しかも、あらゆる特約がてんこ盛りです。

その保険の説明を受けながら、私は必要ではない特約をどんどん削っていきました。

最初は営業員も困り顔をしながらも了解していたのですが、そのうち、これではマズイと思ったようで、「そんなに特約を取ったら困ります」と悲鳴をあげてしまったのです。

どうして困るのですかと尋ねると、「私のポイントがなくなってしまいます」という返事が返ってきました。

営業員は、保険の売り上げでポイントが決まってくるのです。商品によってポイントは変わり、死亡保険などは高いポイントがつきます。

それが給料にも上乗せされるのです。

毎月のノルマもあり、それを達成しないとプレッシャーがきついそうです。

いうまでもなく、これはおかしな話です。

そもそも保険は自分のために入るものであって、営業員のためではありません。自分のライフスタイルに合った、必要な保険にだけ入るのが正解です。

それなのに、営業員のノルマ達成のために、どうして自分には必要ない保険に入らなければいけないのでしょう。

保険は、義理や人情で入っていいものではありません。本当に必要な保障を見極めて選んでください。

保険の“無料相談所”は誰の味方か?

最近は、いたるところで来店型の保険ショップを見かけるようになりました。

ショッピングセンターのなかにも入っていますから、買い物ついでに保険の相談もできて便利です。

複数の保険会社の商品をあつかっているので比較ができますし、公平な目で提案をしてくれそうな気がします。

しかも、相談は「無料」です。駅前やショッピングセンターといった場所の保険ショップは、賃料もそれなりに払っているはず。

無料で相談に乗ってくれるとは、なんとも気前のいい話ですが、彼らはボランティアではありません。ちゃんと別のところから収入を得ているのです。

保険ショップは、保険の販売手数料で成り立っています。そして、販売手数料は商品によって異なります。

高いものになると、保険料の20~30%に設定されている場合もあります。

年間の保険料が40万円だとしたら、手数料(当初1年または数年まで)は12万円ぐらいになるかもしれません。

ということは、保険ショップがどんな商品を売りたがるか、容易に想像がつきますよね。

実際、販売手数料の高いものを勧められるケースが多いことは問題になっています。

そのため、2016年から保険を販売する際には「なぜ、その商品を勧めるのかを開示すること」が義務づけられます。

以前、試しに保険ショップで相談をしたことがあります。

私は、葬式代が出るくらいの死亡保険を教えてほしいとお願いしました。

ところが、勧められたのは死亡保険金1500万円の終身保険(15年払い)でした。

月額保険料も6万6000円と高額です。あと終身の医療保険(65歳払い込み満了)と、がん保険です。

頼みもしない特約がいっぱいついたものでした。

こちらのリクエストとはかけ離れた、ショップに都合のいい提案をされたのです。ちょっと?然という感じでした。

同じことは、銀行の窓口での保険販売にもいえます。

銀行も同じように、手数料が高い商品を勧めます。銀行の窓口だといって安心しないでください。

保険についてそれほど詳しい知識をもっているわけではなく、何度か研修を受けた程度の人が対応しているのが現状です。比較できる商品も少なめです。

タダは魅力的ではありますが、納得できる情報はなかなか得られないと思われます。

保険はこの5つから選びなさい
長尾義弘(NagaoYoshihiro)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している辛口の保険評論家。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『かんたん!書き込み式保険払いすぎ見直しBOOK』『お金に困らなくなる黄金の法則』『コワ~い保険の話』『保険ぎらいは本当は正しい』が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。