(本記事は、長尾義弘氏の著書『最新版 保険はこの5つから選びなさい』河出書房新社、2018年7月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「三大疾病保障保険」は使いづらい

保険はこの5つから選びなさい
(画像=Dmitry Kalinovsky/Shutterstock.com)

三大疾病保障保険は、「がん」「急性心筋梗塞」「脳卒中」になった場合に一時金が出る保険、または特約の保険です。

この3つは日本人の死亡原因の55%になっていますし、急性心筋梗塞と脳卒中は入院が長くなることがあり、お金がかかる病気です。

がんの入院日数は長くはありません。しかし、治療には時間がかかり、仕事に支障が出たり一時休業したりして、収入が減るケースもあります。

いずれもリスクの高い病気ではあります。

めったに起きないけれど、起きれば大きなリスクになるという条件には当てはまりますが、注意してほしいのが支払い条件なのです。

がんは、悪性のがんと診断されると一時金を受け取ることができます。これはがん保険と同じです。

急性心筋梗塞や脳卒中は、診断されてから保険会社が定める所定の状態になったときに給付金が出ます。

この所定の状態というのがクセモノです。

脳卒中であれば、「診断を受けた日から60日以上、言語障害、運動失調、麻痺など神経学的後遺症が継続していると医師が診断した場合」などです。

急性心筋梗塞の場合も同じく、所定の状態がつづいた場合です。

ひじょうに厳しい条件だといえるでしょう。

この状態になった場合は、会社員なら、傷病手当金を受け取ることができますし、40歳以上で要介護の状態になれば、介護手当を受け取ることもでき、障害状態と認定されれば、障害年金が支給されます。

三大疾病保障保険は、死亡したり高度障害になったときには要件を問わずに保険金が出ますが、他の病気で入院した場合には給付金は出ません。

発症率は低いものの、他にも長期の入院になる難病などがあります。

もし、それらの病気になったときには、給付は受けられないのです。

実際のところは、もしもの場合にも使いづらい保険という感じですね。

必要な特約と、必要のない特約

●リビングニーズ特約

医者から余命6か月などの宣告を受けた場合、死亡保険金を先に受け取ることができるのが「リビングニーズ特約」です。

受け取った死亡保険金は治療費に充てたり、残された時間を有意義にすごすためにと、自由に使うことができます。

この特約は無料なので、つけておいてください。保険会社としては、死亡保険金をすこし早めに支払うだけなのです。

しかし、余命の判断は難しく、診断書を出すことをためらう医師もいます。そのため、この特約が結果として使えないケースもあります。

また、特約を使うときの注意点としては、死亡保険金を受け取ると、その保険の契約は消滅することがあげられます。

いっぽうで、生存中はそれまでどおり保険料の支払いはつづけなくてはいけません。

生前に受け取った保険金は非課税になります。ですが、保険金を残したまま死亡した場合は相続財産になり、もしかしたら相続税の課税対象になるかもしれません。

使用する際には注意をしてください。

●通院特約

政府は社会保障費の抑制を目的に医療制度を改革し、現在は入院日数がどんどん短くなっています。

1999年に平均入院日数が39.3日だったものが、2014年には31.99日になっています。そのぶん、通院が長くなったといえます。

この傾向は今後もつづくと思われます。

それに対応して、医療保険、がん保険などには「通院特約」がついている商品が増えてきました。

通院という名称に惑わされるのか、誤解が多いのですが、ただ通院すれば給付金が出るわけではありません。一度入院をし、退院したあとの通院に対して支払われるのです。

その場合も、入院後120日以内の通院を保障するといった内容が多く、給付金は3000円ぐらいです。

そもそも入院に比べて、通院の治療費は少額のケースが多いでしょう。入院よりも小さなリスクに対して、保険は必要はないと思います。

「この保障がないと本当に困るのか」をまず考えてみてください。

●高度障害

死亡保険金は、死亡時以外にも受け取ることができます。それは「高度障害」状態になったときです。

ここにも誤解の種があります。国の身体障害者福祉法が定める「身体障害」の状態と、保険会社が認める「高度障害」状態とはまったく違うのです。

たとえば、心臓にペースメーカーを入れて身体障害者1級の認定を受けても、保険会社が定める高度障害状態にはならないのです。

国の基準は生活に支障が出ないレベルも含みます。

それに対して保険会社の基準は、たとえリハビリをしても回復の見込みがなく生活に支障が出るというレベルです。

保険会社が定める高度障害状態は、両目の視力を完全に失った場合。言語または咀嚼機能をまったく永久に失ったなど、かなり厳しい規定になっています。

この条件に該当するのは、レアケースだと考えていいと思います。

●保険料免除特約

「保険料免除特約」をつけておくと、所定の状態になったら、以後の保険料が免除されます。

保険業界の人は「P免」と呼んでいます。Pは「Premium(保険料)」の頭文字に由来します。

多くは、死亡保険や医療保険の特約としてついています。

三大疾病になると、それ以後の保険料を支払わなくても、支払ったとみなしてもらえるのです。

損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の「一生のお守り」を例に説明していきます。

特定疾病診断保険料免除特約は、三大疾病であるがん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中により所定の状態になった場合に適用されます。

所定の状態とは、以下のケースを指します。

がんは、医師によって診断が確定した場合(上皮内がんなどは除く)。急性心筋梗塞なら、診断を受けた日から60日以上労働の制限を必要とする状態が継続すると診断されたとき(狭心症などは対象外)。

脳卒中の場合は、診療を受けた日から60日以上、言語障害などの他覚的な神経学的後遺症が継続したと診断されたときです。

こうした診断がなされた時点で、保険料を全額払ったとみなされます。

つまり、解約返戻金がドンと上がるわけです。

もし、がんになって医療費の支払いが困難になったとしても、解約をすることで、この増えた解約返戻金を使うことができるのです。

また、お金は必要だけれど保険を解約するのは避けたいという場合は、解約返戻金の90%を上限とする契約者貸付制度を利用することができます。

●介護特約

以前の「介護特約」はかなり条件が厳しくて、約款を読んでいて「ウソだろう!」という内容だったのですが、現在では、かなり条件がゆるくなってきました。

それでも、要介護2の状態が180日間つづいたときに支給される......など、まだ厳しい条件が残っています(条件は各社さまざま)。

保険より、なんにでも対応できる貯蓄がいちばんです。

保険はこの5つから選びなさい
長尾義弘(NagaoYoshihiro)
ファイナンシャルプランナー、AFP。お金のしくみ、保険のカラクリについての得する情報を発信している辛口の保険評論家。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。いくつかの出版社の編集部を経て、1997年に「NEO企画」を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生みだす。著書には『かんたん!書き込み式保険払いすぎ見直しBOOK』『お金に困らなくなる黄金の法則』『コワ~い保険の話』『保険ぎらいは本当は正しい』が、監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』などがある。