事業承継は企業にとって、新たな成長のチャンスであるとも言われています。承継を機に、後継者が変化する市場環境などに対応して、新たな取り組みや既存事業の見直しを進めることで、ビジネスチャンスの拡大などを図れることもあるからです。
こうしたチャンスをしっかり掴むため、承継を完了させる前の後継者教育や承継後の後継者支援は、その企業にとっても非常に大切です。事業承継を単なる経営権の承継だと捉えるのではなく、会社を新たなステージに押し上げる変革期であると考え、計画的に後継者育成を進めていくことが重要であると言えるでしょう。
後継者教育では、経営者としての決断力や会社や社会の未来を見通す力を持たせる、という視点も重要です。また、後継者はその会社が持つ組織力や技術力などの強みや創業からの歩みや理念、市場競争力なども理解する必要はもちろんありますが、現経営者が後継者を自分の分身にしようと考えると、会社の成長にもつながる事業承継の機会をうまく活用できないこともあるので、注意が必要です。
後継者教育のポイント(1) 親族への承継
親族へ事業を承継するとき、後継者教育に入る前に後継者候補との対話を重ねることが重要です。事業を引き継ぐ自覚を持たせることがその理由の一つですし、現経営者との良い信頼関係を構築し続けられなければ、その後の後継者教育が円滑に進まない可能性もあるからです。
後継者に求められるのはこれまでにも触れてきた「決断力」「未来を見通す力」「考える力」などのほか、営業や労務などに関する知見も求められることから、現場での経験も重視されます。後継者がその企業内においてこれらをまだ有していない場合は、得るまでに一定の時間が掛かることも認識しておかなければなりません。
具体的な後継者教育は大きく分けて「社内教育」と「社外教育」に分かれます。社内教育ではスケジュールに従って会社の業務を一つずつ経験させると同時に経営者と必要な能力や考え方も伝えていきます。この過程の中で現場や経営の中枢において中核をなる役目を担わせ、決断力や考える力などを育てていくことが大切です。
社外教育としては、ほかの企業で勤務させることで多様な経験を積ませたり、引き継ぐ会社を客観的にとらえる視点を持たせたりすることもポイントです。セミナーに参加して経営について学んだり、市場の最新情報を取得したりすることも、後継者にとって未来を見通す力をつける良い機会であると言えます。
後継者教育のポイント(2) 従業員への承継
従業員への承継の場合には、既に企業内でさまざまな経験をしていることが多いという特徴があります。しかし、その後継者はあくまで従業員として会社に属していたわけですから、経営スキルを既に備えているわけではありません。
また現経営者と血縁などがある親族への承継よりも一層、その会社の将来への責任感を持たせようと現経営者が意識することも求められます。従業員と経営者ではその会社に対する責任は全く異なります。後継者に従業員から経営者に立場が変わるという自覚をしっかりも持たせることも承継の成功のポイントと言えるでしょう。
後継者候補と対話を重ねた上で、責任が重い役職に徐々に昇格させ、経営者に必要なスキルを身につけさせていきます。親族への承継と同様に、外部セミナーに参加させることも経営に関する知見を増やすことに役に立ちます。
丁寧な対話と計画的な育成を
事業承継は企業がさらに成長するチャンスであり、また事業不振から企業を甦らせるための契機にもなります。後継者候補との対話を丁寧に何度も重ねつつ、経営者に必要なスキルを計画的に身に付けさせていくことを意識しておきましょう。(提供:事業承継ガイド)
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