老後破産予備軍に注意

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(画像=The 21 online)

定期的な収入があり、生活が安定したビジネスマンこそ、無計画にお金を使って老後破産する可能性がある──。そう指摘するのは、2万世帯の家計を救ってきたFPの藤川太氏だ。しかし、こうした悲劇は、40代からの「お金の見直し」で防げるという。「長生きなんかするんじゃなかった」と後悔しないために、今から見直すべきお金のポイントについてお話をうかがった。

かつての普通は、今の贅沢!?

40代の人たちが子供の頃は、持ち家があり、車を持ち、十分すぎるほどの保険に加入し、教育にできる限りお金をかける。これが普通の生活でした。しかし今、これらを全部追求すれば、破産するでしょう。昔の「普通」は、今や「贅沢」に。何かにお金をかけるのなら、何かを諦めるしかないのです。

死ぬまでに「いつ」「何に」「いくら」お金をかけたいのか取捨選択すれば、自分の価値観がはっきりします。それに従い、ライフプランを立てれば、充実した人生を送れます。逆にメリハリなくお金を使えば、老後破産に陥りやすいのです。次のページから、老後破産に陥りやすい典型的なパターンを紹介します。これを反面教師として、自分のお金の使い方を見直してみてください。

重要なのは「収入-将来のための貯蓄-固定費=日々のやりくり費」を意識して生活すること。実際には、入ってきたお金から生活費を引き出し、残ったお金は貯蓄にまわす家庭が多い。でも、今の世の中これではお金は残りません。将来を見据え、あくまで「貯蓄」を優先させるべきなのです。

老後破産に陥る6つのケース

浪費破産

老後の収入は、現役時代の半分から3分の1くらいまで下がる。にもかかわらず現役時代と同じレベルの生活を続けると、貯蓄の取り崩しが増え、いずれ破たんしてしまう。人間は、いったん生活のレベルを上げると、なかなか下げられないもの。時代の生活レベルが高い人ほど、多くの老後資金を用意しておく必要がある。

子供・孫破産

豊かな親世代から経済的に余裕のない子世代への所得移転を進めようと、資金贈与に対する非課税措置が導入されている。住宅資金や結婚資金、子育て資金、孫への教育資金といったものだ。だが、ついつい自分たちの資金力以上に贈与してしまい、破たんするケースが後を絶たない。冷静になって計算し、問題がない金額を譲渡すべきだ。

アクシデント破産

悪徳商法やオレオレ詐欺、災害などに遭って破たんするのがこのタイプ。友人に勧められるまま怪しい金融商品に手を出す、といった詐欺被害だけでなく、金融機関に言われるまま退職金を投資商品につぎこみ、値が下がって財産を失うようなケースも含まれる。うまい話には乗らない、投資は余裕資金の範囲内で行なうのが鉄則だ。

イベント破産

老後にはそれほどライフイベントは多くないが、時間があり余るため、つい旅行や家のリフォームなどといったイベントを作り出し、お金を使ってしまう。時間は「潰そう」と思うとお金がかかってしまうが、誰かと「過ごそう」と思えばかからないものだ。家族や友達と、お金をかけずに楽しく過ごす方法を模索しよう。

病気・介護破産

もし病気や要介護状態になった際でも、健康保険制度や介護保険制度を活用すれば、高額な医療費や介護サービス費の払い戻しを受けることができる。ただ、この制度を知らないために、払い戻しを受けられずに破たんするケースがある。老後の病気や介護の費用は予測が難しいが、夫婦であれば生活費以外に500万円ほどの余力を持っておきたい。

低所得で破産

低所得で十分な貯金がなく、そもそも破たんしている状態の人。ただ、このタイプの人たちは、生活保護を受けていたり、医療費がタダだったりと、行政が面倒を見てくれているので、貧困ながら生活は安定していたりする。また、初めから貧困状態であることを受け入れているので、案外心は穏やかだったりもする。

藤川 太(ふじかわ・ふとし)
ファイナンシャルプランナー/生活デザイン〔株〕代表取締役
1968 年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社勤務を経て、ファイナンシャルプランナーに。運営する「家計の見直し相談センター」では、2 万人を超える家計診断を行なっている。確固たる知識と飾らない人柄によるアドバイスで、多くの相談者の信任を得ている。『1億円貯める人のお金の習慣』(PHP研究所)、『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』(プレジデント社)など、著書多数。≪取材・構成 前田はるみ≫(『The 21 online』2018年1月号より)

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