米国の実質GDP(前期比年率)は18 年4-6 月期が+4.2%と、14 年7-9 月期(同+4.9%)以来の高成長となった。

米国,経済,住宅市場
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個人消費や設備投資など全般的に好調となっているものの、GDPにおける住宅投資が同▲1.6%と2期連続のマイナス成長となったほか、17 年以降の6四半期でみても、4四半期でマイナスとなるなど、住宅市場では停滞が続いている(図表1)。さらに、住宅着工件数やその先行指標である着工許可件数の伸び(3ヵ月移動平均、3ヵ月前比)は、足元でいずれも2桁のマイナスとなっているため、7-9月期も住宅市場の回復がもたついている可能性を示唆している。

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住宅市場の停滞が続いている要因として、住宅供給面では建設業における熟練労働力不足の問題が挙げられる。住宅着工件数が11 年の60万件から、18 年に127 万件ペースに加速する中で、全米建設業協会(NAHB)による調査では、戸建て建設業者が抱える深刻な問題として「人手不足・労働コスト」と回答した割合が同時期に13%から84%まで増加した(図表2)。足元の住宅着工件数は、05 年につけた前回ピーク(207 万件)に比べて低水準に留まっているものの、回答割合の高さにみられるように、建設業界からは熟練労働力の不足が住宅供給制約となっていることを懸念する声が強まっている。

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また、需要面では住宅価格や住宅ローン金利の上昇が住宅ローン返済額の増加を通じて影響している可能性を指摘できる。中古住宅を取得する際の住宅ローン返済額と所得を比べた住宅取得能力指数をみると、足元では130 台と依然として所得水準が住宅ローン返済額を3割程度上回る状況となっている(図表3)。

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しかしながら、同指数の推移をみると、13 年の200 超からは大幅に低下しているほか、18 年に入って低下スピードが加速していることが分かる。これは、住宅価格が上昇していることに加え、16 年後半からは住宅ローン金利が上昇に転じ住宅ローン返済額を増加させている影響が大きいためと考えられる。住宅価格や住宅ローン金利は今後も上昇基調の持続が見込まれており、所得が住宅ローン返済額の増加に追いつかない場合には、住宅取得能力の低下を通じて住宅需要に影響する可能性が高い。

一方、米国では非農業部門雇用者数が10 年10 月から18 年8月まで統計開始以来最長となる95 ヵ月連続で増加しているほか、失業率も18 年ぶりとなる4%割れの水準に低下しており、労働市場の回復が続いている。このため、雇用不安の後退などを背景に住宅購入意欲は強い。連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ)が発表している住宅購入センチメント指数は、18 年8月が88.0 と高い水準を維持している。もっとも、同指数は統計開始以来最高であった18 年5月の92.3 から明確なピークアウトがみられる。実際、ファニーメイのシニアエコノミストは「住宅供給が緩やかな伸びに留まっているため、住宅売却を考えている者が売却後の購入物件を見つけるのが難しくなっていることや、住宅ローン金利の上昇見込み、住宅価格の大幅な上昇、などによって同指数が停滞期に到達したようだ」と指摘している。このため、住宅購入意欲は依然として強いものの、回復が頭打ちとなる可能性が高い。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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