「山崎」や「響」など、我々にとって馴染みのある日本のウイスキーが高価格で取引されているようだ。中には元値の30倍にもなった1本もある。多くの銘柄がある中、価格が高騰するお酒とは一体どのようなものなのだろうか。あなたの手元にある酒も、実は知らないうちに高値で取引されているかもしれない。

高騰しているジャパニーズウイスキー

日本,ウイスキー
(画像=ThamKC/Shutterstock.com)

2018年1月のサザビーズの香港オークションにて、2011年に150本限定で販売された日本産のウイスキー「山崎50年」が約3,250万円で落札された。元の価格は100万円なので、約30倍の価格で取引されたことになる。

「山崎50年」だけでなく、2015年に香港で行われたオークションでは1960年に生産された「軽井沢」が約1,430万円で、埼玉県ブランドの「羽生イチロー」54本が約5,935万円で落札されている。

かつて日本産ウイスキーは、これほどまでに国際的に関心を集めるものではなく、価格が上昇しつつあるのはこの2?3年の間の出来事のようだ。一体なぜ、日本のウイスキーが高騰しているのだろうか?

高値での取引が期待されるお酒の特徴は?

価格高騰の理由は、古くから投資商品としても取引されてきたワインの特徴から見えてくる。投資商品として期待されるワインに多いのは「フランス・ブルゴーニュやボルドーの赤ワイン」。とはいえ、全てが高価格になるというわけではなく、いくつかの傾向がある。

まずはフランスのワイン法で定められた「AOP」のカテゴリーを持つもの。ラベルに「Appellation 産地名 protegee」と書かれてあるもので、「原産地呼称保護ワイン」とも呼ばれる。簡単に言うと特定の産地で生産される上級ワインのことだ。

さらに、この「AOP」の中でもブルゴーニュには「畑」、ボルドーには「シャトー」の格付けがある。特に有名なシャトー、例えば「シャトー・ラトゥール」や「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」など、第一級に格付けされている5大シャトーなどのワインは、トップシャトーに相応しいワインを生産し、高値が付くことも多い。

「当たり年」かどうかということも考慮されている。「当たり年」とは、その地方で気候条件がよかったことから、原料でるブドウの出来栄えが良く、クオリティの高いワインが生産された年のこと。一般的に2000年のボルドーワインが1999年や2001年の同じ銘柄のワインよりも高価なのは当たり年とされているからだ。

また、一般的に品質の高い赤ワインは熟成の度合いによって価格が異なる特徴がある。これは味の複雑性が増すということはもちろん、熟成のための保管コストや、年々売れて本数が減るために希少価値がワインに加わるためだ。

高価格の理由はブランド力、味、希少性

ワインの例から

1、ブランド力、格付け=品質レベルがある程度保証されていること
2、味=多くの人に美味しいと認められていること
3、希少性=供給に対して、需要が上回っていること

の3要素が高価格になるお酒が備える要件と言えそうだ。

日本産のウイスキーが高値で取引される理由

この3つの条件は冒頭で紹介した「山崎50年」を始めとした日本のウイスキーにも当てはまる。

2000年代頃から、「山崎」や「響」「白州」などのジャパニーズウイスキーは世界各国のウイスキーやスピリッツのコンペティションで、ほぼ毎年金賞を受賞している。その味が国際的に評価され続け、ブランド力を獲得した日本のウイスキー。2015年には「山崎シェリーカスク2013」が、イギリスのガイド本「ワールド・ウイスキー・バイブル」で、本場のスコットランドを抑えて世界一に選ばれた。

では希少性という側面ではどうだろう。1990年代年、ウイスキーが不人気だった頃に大手メーカーは生産量を抑えた。その後、2000年代中旬にハイボールが人気を博し、2014年にはジャパニーズウイスキー作りをテーマにしたTVドラマ『マッサン』が放送開始され、ウイスキーブームが拡大。需要が大きく伸び、熟成期間が10年以上の原酒の不足が顕著になってきたのだ。この原酒不足の理由に2018年にサントリーは「白州12年」「響17年」の出荷を停止している。ウイスキー需要の回復を受け、大手メーカーは原酒生産量を増加しているが、熟成には長い時間がかかるため、すぐに供給量が増えることは考えづらい。

お酒好きで、ウイスキーが手元にあるならば、この機会に自分の持っているボトルの価格を調べてみてはいかがだろう?もしかしたら、高値で取引されているかもしれない。また、子供の生まれ年のお酒を買って寝かせておけば、将来思わぬ高額になるかも。飲むだけではなく、お酒も投資の一つと考えてみると、日々の一杯がもっと美味しく、知的にいただくことができそうだ。

文・木暮ゆい(フリーライター)/MONEY TIMES

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