厚生労働省は1948年から全国の医療施設を対象にした調査を実施しています。全国の医療施設の設置状況や診療機能などを把握し、国の医療行政に活かしていくことが目的です。医療施設を「病院」「一般診療所」「歯科診療所」に分類して施設数と病床数を算出しており、都道府県別の増減も分かる貴重な資料です。
施設種別の施設数と病床数の推移
厚生労働省が毎月発表している「医療施設動態調査」の2018年5月末現在のデータによりますと、一般病院や療養病床を有する病院、精神科病院を含む「病院」は全国で8378施設あり、これは10年前の2008年5月のデータと比較すると435件(約4.9%)減っています。
2018年5月時点の「病院」の病床数は155万2016床で、161万3767床だった10年前と比べると6万1751床(約3.8%)減となっており、施設数に比べて減少の幅は少ないものの、同様に減少していることが分かります。
一方で「一般診療所」は施設数・病床数が異なる増減傾向を示しています。2018年5月現在の一般診療所の施設数は10万2057施設、病床数は9万6580床で、2008年5月はそれぞれ9万9529施設、15万928床です。増減数を計算しますと、施設数は2528施設(約2.5%)増、病床数は5万4348床(約36.0%減)となっております。
「歯科診療所」は2018年5月時点で全国に6万8774施設あり、10年前の6万8040施設を比べると微増の734施設(約1.0%)増となっています。
「病院」と「一般診療所」、「歯科診療所」の合計数は2018年5月が17万9209施設となっており、2008年5月の17万6382施設から2827施設(約1.6%)の増加となっています。施設種別ごとの数字を並べて考えていますと、「病院」が減っているものの相対的に数が多い「一般診療所」が増えたことで、全体的に施設数は増えているということになります。
一方で病床数の合計をみてみると、2018年5月時点の総数が164万8657床で2008年5月の176万4871床から11万6214床(約6.5%)減となっており、「一般診療所」における病床数の減少が全体の病床数の減少に大きく影響したということになります。
都道府県別の「病院」の施設数増減の推移(10年前との比較)
都道府県別で施設種別ごとの施設数をみてみますと、2018年5月現在で全国に8378施設ある「病院」のうち、施設数が最も多いのが「東京」で646施設となっており、「北海道」の554施設、「大阪」の518施設、「福岡」の460施設、「兵庫」の352施設と続いています。
一方で施設数の少なさでみますと、「鳥取」が44施設で最下位となり、49施設の「島根」、57施設の「滋賀」、60施設の「山梨」、67施設の「福井」も数自体は全国的にみると少ないことが分かります。
病院の施設数が多い都道府県と少ない都道府県を10年前と比較してみましょう。「東京」は2008年5月時点では645施設で、2018年5月と比べると1施設(約0.1%)減とほとんど変わっていません。「北海道」は2008年5月が598施設で10年前との比較で44施設(約7.3%)増加しています。
施設数が現在最も少ない「鳥取」は2008年5月時点で58施設でしたので、2018年5月と比較すると14施設(約24%)の増加となっています。島根は2008年5月において58施設でしたので、同様に比べてみると9施設(約15.5%)の減少となっています。
このように都道府県によって「病院」の施設数の増減には違いがあり、全国で傾向が一定のわけではありません。
都道府県別の「一般診療所」「歯科診療所」の施設数増減の推移(10年前との比較)
「一般診療所」はどうでしょうか。都道府県別にみて2018年5月で最も施設数が多いのは「東京」で1万3415施設となっており、2008年5月の1万2674施設と比べてみると741施設(約5.8%)増加しております。最新のデータで続いて多い「大阪」は10年前の数字は8271施設でした。現在の8460施設と差し引きすると189施設(約2.2%)の増加となっています。
「一般診療所」の施設数が2018年5月時点で最も少ないのは「島根」で500施設となっており、10年前の746施設から246施設(約32.9%)も減っています。
「歯科診療所」でも2018年5月現在で最も施設数が多いのが「東京」で、1万675施設となっています。10年前は1万585施設でしたのでほぼ横ばいの90施設(約0.8%)の増加です。一方で最も少ない「鳥取」は2018年5月現在で261施設あり、10年前の269施設から比べると8施設(約2.9%)の減少となっています。
施設種別や都道府県によって異なる傾向
「病院」「一般診療所」「歯科診療所」を合わせた医療施設の数は10年前と比べると増加傾向にあることを説明してきましたが、一方で施設種別によっては増減が異なり、都道府県別でも傾向に違いがあることが分かります。地域の実情などによって特徴があることがこの調査内容から読み取ることができると言えるでしょう。
(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio)