(本記事は、田口智隆氏の著書『1億円の法則 古今東西の大富豪に学んだお金の真実』冬至書房、2018年10月10日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
お金を稼ぐときは「稼ぐこと」に集中する
30歳。保険の営業マンとしての第二の人生も板についてきた。
本来なら、次の目標である「経済的な独立」を目指して、バリバリとお金儲けに邁進してもいいようなものだが、この時期の私は、ちょっと元気がなかった。
それは心の中に、ある迷いが生じていたからだ。
「人生、お金を儲けさえすればそれでいいのだろうか?」
保険商品をどんどん販売すればお金は儲かる。しかし、保険商品を売れば売るほど、どんどん心が荒んでいく気がする。
このまま働き続けていると、「心」というものを失って、お金の亡者になってしまうのではないだろうか……。
そんなふうに悩んでいるときに出会ったのが『非常識な成功法則──お金と自由をもたらす8つの習慣』(神田昌典著、フォレスト出版)だった。そこには、私が悩んでいた「お金」と「心」の問題について、真理を突いた言葉があった。
われわれ凡人は、欲深い。
お金も欲しいし、また社会にも役立つ人間になりたい。他人からも愛されたい。結局、全部欲しいわけだ。
ところが、一挙に「お金」と「心」の両方を得ようとすると、これがなかなか難しいんだ。
凡人がガツガツお金を儲けながら、いきなり心も充実した「本当の豊かなお金持ち」を目指そうとしても、行動と心が伴わない。
では、どうすればいいか?
ここでは「まずお金を必死になって稼ぐ」ことをすすめている。ある程度お金が稼げるようになってから、次に「心が豊かになる」ように努力を始めるわけだ。
心を磨くのは、ある程度お金を稼いでからでも遅くはない。
私は、決断した。
「今は、お金を稼ぐことに専念しよう」と。
今後しばらくは、仕事でのやりがいや社会的意義については考えない。
ある程度お金が貯まってから、自分が心から楽しめ、かつ心が豊かになる仕事をしよう。
私の目標は、自らが働かなくてもお金を生み出してくれる十分な「資産」を持ち「ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)」を果たすこと。
そのためには、まずは「資産」を購入するためのお金が必要だ。
私は、今まで嫌々やっていた保険の営業に、本気で取り組むことを決めた。
保険の勉強会や研修に積極的に参加して、営業のコツをもっとたくさん覚えよう。ひとつでも多く保険を売って、どんどんお金を増やしていこう。そのために一刻も早く「資産」を購入するための「タネ銭」をつくるのだ。
「やりたくないこと」を明確にする
「保険を売って、売って、売りまくろう!40歳までに『ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)』を果たすんだ!」
私はがむしゃらに働いた。とにかく稼ぐために努力をした。
それでもやはりしばらくすると、こんな思いが湧き上がってきた。
「でも、やっぱり、営業は嫌いなんだよな……」
「やりたいこと(経済的独立)のためにやりたくないことをやらねばならない。そうこうしているうちに人生が終わってしまったりしないだろうか?」
そもそも営業をがんばって、経済的に独立できたとして、それが本当に「やりたいこと」なのだろうか?果たして自分はなにがしたかったのか……。
考えているうちに頭が混乱してきてしまった。
そんなとき、『非常識な成功法則』に書かれている一文が目に入った。
「やりたくないこと」を明確化することによって、本当にやりたいことが見つかる。
「やりたいこと」を考える前に、まずは「やりたくないこと」を明確化することが必要だ、というのだ。
私の「やりたくないこと」は、保険の営業だ。
保険の営業という仕事があるのは、世間から見れば「恵まれている」のだろう。
「人並みの幸せでいいじゃないか」という人は「何の文句があるんだ」と言うかもしれないが、私にとっては「営業をやりたくない」という思いは譲れない。
何が「やりたいこと」なのかよくわからない人は、自分自身に次の質問をしてみるといい。
自分の命があと半年しかなかったら何をやらなければならないのか?
その半年の間に、お金を一銭ももらえなくてもやるべきことは何か?
私は自分自身に問いかけてみた。
出てきた答えは「私は人にかかわる仕事をしたい」というものだった。
保険の営業は人にかかわる仕事ではあるが、実際にかかわれるのはうわべだけで、深く人と向き合えるわけではない。
結局私は、学習塾の講師時代のように、人にかかわる、人生に影響を与えられるような仕事をしたかったのだ。
「人の人生に影響を与えられるような本を書いてみたい」
「人の人生に影響を与えられるような講演会を開いて、全国を回りたい」
だからこそ私は、お金に影響されない自由な環境、「ファイナンシャル・インディペンデンス(経済的独立)」を手に入れたかったのだ!
・やりたくないこと=保険の営業。
・やりたいこと=人生に影響を与えられるような本を書く。全国を講演して回る。
こうして私は今、しっかりと自分の本当の目標を定めることができた。
「任せる」ことを覚えよ
「やりたくないこと」が明確になったことで、将来的には家業である保険代理店の仕事をアウトソーシングすることも決めた。
やりたくない仕事は、第三者に任せればいいのだ。
第三者にお願いをして、「10」の儲けのうちの「4」を委託料として相手に渡し、残りの「6」を自分がもらうようにすれば、事業として何の問題もない。
それどころか、私は保険の仕事から解放され、新たにできた時間を使って、さらに「やりたいこと」ができる。
もちろん、仕事をアウトソーシングすることにより、自分の儲けは「6」に減ってしまうので、相手に渡した「4」の部分をどこかで補う必要が生じる。
しかしそれも、資産からのキャッシュフローなど別の収入が生まれれば、「4」の部分を補うことは十分に可能だ。
今と違って、当時の営業は「飛び込み営業」があたりまえだった。
当然のことだが、飛び込み営業はほとんどの場合、相手先に嫌がられ、けんもほろろの対応をされる。
正直、かなりヘコんだ。まるで、自分自身の人間性までもが強く否定されてしまったような気分になったものだ。
「何とか、飛び込み営業をせずに顧客を獲得できる方法はないだろうか……」
このときも『非常識な成功法則』が役に立った。
マーケティングとは「優良な見込み客を、営業マンの目の前に、連れてくる」こと。それに対してセールスとは「その見込み客を、営業マンが成約すること」。
本来、「セールス」は飛び込み営業のようにやみくもにするものではない、というのだ。最初にしっかりと「マーケティング」をして、その上で「成約の可能性のある顧客だけ」にセールスをかけるべきだったのだ。
興味のある客だけを対象にして営業をすれば、嫌がられることはないし、人格を否定されるような辛い思いをすることはない。
私は、当時まだ比較的新しい手法だった「テレマーケティング(電話などの通信技術を使ったマーケティング)」を導入することにした。
テレマーケティングの業者に業務を委託し、保険に興味のある顧客のリストをもらう。そして、その顧客だけに営業をかけるのだ。
相手はもともと保険に興味のある顧客。玄関先で追い返されることも、嫌そうな顔をされることもなくなった。
現在、「テレマーケティング」は古い響きがするが、ここで言いたいのはテレマーケティングの大切さではない。
いかに自分でなくてもできることを他人に任せられるか、ということだ。
正しく「任せる」「お願いする」ことのできない人は、ただただ忙しいだけで、お金は一向に増えていかないだろう。
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