自分が経営する会社を子供に譲りたいが、将来子供にかかってくる相続税が心配だとお悩みではないでしょうか。一体いくら相続税がかかるのか、またその相続税を下げる方法はないのか、ということをここでは徹底的に解説します。

適切な事業承継対策を早い段階から行えば、非上場株式の相続税評価上の株価を引き下げ、確実に相続税の節税を行うことが可能です。では、詳しく見ていきましょう。

1.事業承継対策とは

事業承継対策
(画像=税理士が教える相続税の知識)

一口に事業承継対策と言っても、大きく2つの意味があります。

1つは、「後継者問題」。後継者を誰にするのか、後継者をいかにして経営者として育成するか。いわば、「ヒト」の問題です。

もう1つは、「相続税に関する問題」。事業を承継するということは、経営する会社の所有権を後継者に譲るということです。多くの場合、非上場会社の株式を譲るということになりますが、この株式には当然財産的な価値がありますので、相続税が課税されることになります。この非上場株式というのは、基本的に現金化できないため、株式の相続税評価が高くなってしまうと納税資金が不足してしまうという点が問題になってきます。

これら2つの問題を生前に対策をしましょうというのが事業承継対策ですが、ここでは後者の「相続税に関する問題」を取り上げています。

2.まずは、非上場株式に関わる納税猶予の適用を検討しよう!

後継者である相続人が非上場株式を先代経営者である被相続人から取得し、その会社の経営を引き続きしていく場合には、相続税の納税が猶予されるという制度があります。非常に納税額へのインパクトが大きい特例制度となっていますので、しっかりと理解しておきましょう。

2-1.特例を受けるための主な要件

会社の要件

  • 常時雇用する従業員が1名以上
  • 資産保有型または資産運用型会社ではないこと(不動産管理会社は×)
  • 相続開始後8か月以内に経済産業大臣の認定を受けること

相続人及び被相続人の要件

  • 被相続人が過去に代表者であったこと
  • 相続人である後継者が相続開始直前に役員であること(被相続人が60歳未満の場合は除く)
  • 相続開始後5か月以内に相続人である後継者が代表者になること

あくまで主な要件ですが、以上に該当する場合には、非上場株式の納税猶予の適用を受けられる可能性が高いです。ただ、実際に適用を受けるためには、もう少し詳細な要件や手続きが必要となりますので、相続税に詳しい税理士に相談をするようにして下さい。

2-2.どの程度の納税猶予を受けられるのか

被相続人が所有する非上場株式の評価額が仮に5億円、実効税率が50%とするとこの株式に関わる相続税が2.5億円となります。以前はこのうち8割の約2億円しか納税猶予が受けられませんでしたが、平成30年の税制改正により、2.5億円全額納税猶予の対象となることとなりました。この計算例はかなり大まかな概算ですので実際とは異なりますが、イメージはこういった感じです。

ここで一つ注意点があります。それは、この制度はあくまで「納税猶予」であるという点です。税金の支払いが免除されるわけではなく、“先延ばし”にできるだけと言う点です。基本的には会社を引き継いだ後継者が経営を続けている限りはこの猶予は永遠に続きます。しかし、事業をたたんだり、事業譲渡を行った場合にはこの納税猶予は解除され、その時点で猶予されていた相続税について利息分を合わせて一括納付する必要があります。

この非上場株式についての相続税の納税猶予制度に関して詳しく知りたい方は以下の国税庁のHPを参照して下さい。

参考:No.4148 非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例|国税庁

3.株価引き下げ対策について

事業承継対策のうち「相続税に関する問題」を解決するためには、非上場株式の相続税評価を下げる必要があります。非上場株式の相続税評価はどのようにすれば下げることができるのか、これを理解するには非上場株式の相続税評価を簡単に知る必要があります。

非上場株式の評価は、「会社の資産」「会社の利益」「会社の配当」、この3つの要素で決まります。

つまり、これら3つの要素を数字上で引き下げることができれば株価を引き下げることができます。詳しい解説はここでは省略しますが、利益を減らす対策としては例えば、以下のようなものがあります。

  • 損金性の高い生命保険に加入し利益を圧縮
  • 含み損失を抱えた資産の売却・除却で利益を圧縮
  • 航空機リース(オペレーティングリース)等で利益を圧縮
  • 役員退職金で利益を圧縮
  • 投資不動産の購入で資産及び利益の圧縮

4.株価を引き下げた後にやるべきことは1つ

前述の方法で、株価を引き下げた後にやるべきことは1つです。その株式を親から子へ贈与若しくは売買で移転をさせます。評価額や移転株数にもよりますが、贈与税を支払って贈与するケースや相続時精算課税制度を使って贈与するケース、また子供が設立した会社に銀行から融資を受けて買い取るケース等が想定されます。

この株式の移転を終えて、はじめて事業承継対策が完了します。

5.まとめ

事業承継対策をすることで相続税を引き下げる方法を解説してきました。 ここでは事業承継対策のごく一部、そして概略しかお伝えしていません。事業承継対策を自信をもって行える税理士は日本でも数えるほどしかいないでしょう。一方で、この事業承継対策は方針を誤ると思わぬ損失を被ってしまうリスクもあります。顧問税理士が、相続税・事業承継に詳しくなさそうな場合には、専門の税理士にセカンドオピニオンをとるようにしましょう。

(提供:税理士が教える相続税の知識