(本記事は、平野敦士カール氏の著書『世界のトップスクールだけで教えられている最強の人脈術』KADOKAWA、2018年9月29日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「富を生み出す資産」は株式・不動産投資?

世界のトップスクールだけで教えられている最強の人脈術
(画像=MinDof/Shutterstock.com)

未来がどの方向に動くのか、ということを正確に予測するのは簡単ではありません。

しかし、間違いなく一つだけ自信をもっていえることがあります。

それは、この正解も処方箋もない現代を生き抜くために、私たちにはこれまでにはない「武器」が必要だ、ということです。

武器とは資産と言い換えてもよいでしょう。

そこでいう資産とは、何でしょうか?何があっても頼りになる「お金」でしょうか?

もちろん、人生において「お金」が頼りになる存在であることは、いうまでもありません。「富を生み出す資産」といえば、株式投資や不動産投資をイメージされるかもしれません。

株式投資で得られる利益は、配当金などの「インカムゲイン」と、売却時の価格が購入時の価格を上回る場合の「キャピタルゲイン」の2つです。

あるいはマンション投資やアパート経営などの投資用不動産も収益を生み出す資産の代表格ですが、そこで得られる富も、毎月の賃貸収入などの「インカムゲイン」と、売却時の価格が購入時の価格を上回る場合の「キャピタルゲイン」の2つに分けられます。

とはいえ、株式投資や不動産投資の場合には、リターンを得られる可能性もあると同時に、損失を被るリスクもあります。

実際に株価が暴落したり、不動産価格が下落したりすることは、それほどめずらしいことではありません。

私が興銀に入行した1987年、銀行の先輩たちはワンルームマンションなどの運用によって、凄まじい利益をあげていました。

しかしバブルが弾けたとき、彼らの手元には借金だけが残りました。

私が中学・高校時代に通った学校の通学途中にあったマンションは、バブル当時、なんと20億円もしていましたが、いまやその値段はざっと10分の1の2億円。

そのマンションを購入するために頭金1億円を支払った人がいたならば、おそらくいまでもその人は借金を返済し続けていることでしょう。

必死にお金を貯めることの「機会損失」

やはり運用はリスクがある。貯金がいちばん─。

そう感じた人も少なくないかもしれません。

しかし、日本人とお金の関係を研究し続けてきた世界的経営コンサルタントの大前研一氏はずばり、次のような指摘を行なっています。

「日本人の平均寿命は男性80歳、女性86歳だから、リタイア後のセカンドライフの期間は15~20年ほどあるわけで、このセグメントの人口が今後は最も多くなる。

ところが日本の場合、政治的・行政的には、シニア市場は介護が必要になってからしか始まらない。

定年退職後、介護を受けるようになるまでの元気なアクティブシニアの期間は“行政の空白地帯”なのである。

しかも、政府が年金制度や高年齢者の雇用制度などをくるくると変えるため、これからリタイアする人たちは、いったい何歳まで働けるのか、いつからいくら年金をもらえるのか、よくわからない状態になり、老後のプランが立てられなくなっている。

問題は、日本のシニアたちが、いま持っているお金を使いたがらないことである。

戦後の貧しい時代に育っているため、お金を手元に置いておかないと気が済まないのだ。その結果、彼らは平均3000万円以上のお金を残して死んでいくのだ。」(『週刊ポスト』2012年9月21・28日号)

もちろん私も、お金の力や、お金がもたらす安心感そのものを否定しようとは思いません。

とはいえ、いくらお金を貯めたところで、それがたんなる「安心材料」にしかならないのなら、しかも結局のところ、そのお金を使わずにあの世に行ってしまう「機会損失」を鑑みるならば、必死にお金を貯めること自体を目的にするのは、あまりに割が合わないとは思われませんでしょうか?

人脈ネットワークこそ「最強の資産」

ならば、そうした激動の時代を生き抜く最強の資産とは、いったい何でしょうか?私は次のように断言します。

「人脈ネットワークこそ、最強の『資産』である」

人脈?唐突にいわれても……と驚かれるかもしれません。

それもそのはず、おそらく日本における「人脈」といえば次のような、ともすればネガティブなイメージが思い浮かぶかもしれないからです。

「人脈をつくるためには頑張って異業種交流会に出なければならない」「とにかく自分の名刺をいろいろな人と交換しなければならない」「まずはSNSの友だちの数を増やさなければならない」……。

そうした行動には「根性」という言葉が似合いますし、「はじめに」で述べたように、著名人と写真を一緒に撮ってSNSにアップすることで自分の「人脈」をアピールする人たちを見て、何ともいえない気分になった方もいるでしょう。

私も独立したてのころ、何度か異業種交流会に参加したことがありました。

そうした場所でもときに素晴らしい方と出会い、会食の誘いを受けることなどがあります。ですから異業種交流会すべてを否定しているわけではありません。

私が有益だったと思えたのは、自らと同じ興味や価値観をもっている方との会合です。

人間は、共通点を相手に見出したときに話が弾むものです。

逆にいえば、名刺交換をすること自体が目的のような、何の脈絡もない異業種交流会に参加しても、得られるものはほぼ何もありませんでした。

あるいは有名人と一緒に撮った写真をSNSにアップしている人を見たとき、一緒に写っている人もすごい人なのだろうか?と思ってしまう方もいるかもしれません。

しかし当たり前ですが、どれだけ有名人を知っていようが、その人が自分にとって「ビジネス上の人脈ネットワーク」になってくれるかどうかは、まったくの別問題です。

会計学用語における「資産」とは、「会社に帰属し、貨幣を尺度とする評価が可能で、かつ将来的に会社に収益をもたらすことが期待される経済的価値のこと」を指しますが、私が資産という言葉を使うとき、それはビジネス上の価値を生み出すものである、という意味をもっています。

あなたにとっても、相手にとっても、相互にビジネス上の価値をもたらす可能性があるネットワークを「人脈ネットワーク」と呼ぶのです。

これから述べる「人脈」は、間違いなくあなたにとって「最強の資産」になります。

それはあなたが会社に所属しているときにはその存在を際立たせ、不透明な世の中で転職を志すときの力になり、定年後にもう一つの人生のスタートを切るときにも、とてつもない力を授けてくれることでしょう。

つまりここで私のいう「人脈」とは、現役のビジネスパーソンにとってはもちろん、学生からいわゆるアクティブシニアといわれる高齢者層まで、すべての人たちが学ぶべき究極の考え方ともいえるのです。

じつは、そうした「人脈」が最強の資産となることは、すでに世界のトップスクールの学者の科学的な理論によって証明されています。

人脈という資産に税金はかからない

私は大学卒業後に興銀に入行し、その後に転職して、45歳で独立しました。

独立後は、「自分の得意なこと、好きなことだけ」をして生きてきたつもりです。ややこしい人間関係からは解き放たれ、朝の通勤ラッシュで消耗することもなくなりました。

旅行なども土日や連休などの混雑する時期ではなく、平日に出かけられるようになり、現在では、都内の自宅と熱海の会社所有の研修施設の2ヵ所を仕事と生活の拠点にしています。

まだまだ精進の身ですが、独立してから十余年のあいだの収入は、それまでに比較すれば数倍になっています。

現在の仕事は経営コンサルティング、講演、企業研修、個人向け研修、本の執筆、ブログをはじめとするインターネットビジネスなど、多岐にわたっています。

じつはこの十余年間、営業らしい営業はほとんどやったことがありません。基本的に自分から売り込むことが苦手で、どちらかというと面倒くさがり屋。

それでもビジネス誌では「人脈の達人」と紹介され、仕事のご依頼が舞い込みます。知り合いの方からの紹介であったり、会社のInfoメール宛だったり、ブログやSNS経由だったりします。

大前研一氏が学長を務めるBBT大学でも教授を務めさせていただきましたが、大前氏との出会いもブログがきっかけです。

なぜ、営業をしていないにもかかわらず、仕事の依頼が絶えないのか?

それは別に私が特別な能力をもっているからではありません。

なぜなら私は「世界のトップスクールが証明した科学的な人脈理論」に依拠しているからです。

あらゆる仕事の「情報」は、この人脈ネットワークからもたらされます。

それは一度構築してしまえば勝手に情報が流入し、そのままビジネスにつながっていくのです。

さらにこの「資産」のすごいところは、税金が一切かからないということです。

「人脈ネットワーク」はモノではありませんから、目には見えません。目に見えないものは課税のしようがないのです。

そしてこの人脈ネットワークの構築には、コストもかかりません。サラリーマンでも、独立事業者でも、誰でもつくることができます。

しかも、通常の資産は他の会社や人によって奪われることがありますが、この人脈ネットワークをあなたから奪うことは誰もできません。それはあなただけの固有の財産となります。

ほぼ無料で構築可能であり、しかも非課税で限りなく富を生み出してくれて、なくなることもない。

それこそが「人脈ネットワーク」の真髄なのです。

USPと「人脈ネットワーク」構築は無関係

ここではまず、「人脈」の特徴について、もう少し説明を続けたいと思います。

日本の「人脈本」ではよくUSP(Unique Selling Proposition=独自の販売条件)をつくりなさい!という議論があります。

USPはもともと、アメリカの広告代理店テッドベイツ社の会長だったロッサー・リーブス氏が提唱した広告制作の原則のことです。

リーブス氏は、広告には「他社と差別化できる、自社や自社製品だけの提案」が必要だとしました。その製品、あるいはサービスがもっている独自の強みがUSPです。

その定義を彼は次のように表現しています。

(1)広告は消費者に向けて提案すべき点がなければならない。言葉を並べるだけの広告やショーウインドー的な広告ではいけない。広告の読み手に「この製品をお買いなさい。そうすればあなたはこんなによいことが得られるはずだ」と呼びかけるべきだ。
(2)広告で提案することは、競合他社が主張していないものか、主張しようとしてもできないことでなければならない。
(3)広告で提案することは、パワフルであり、多くの消費者を自社製品に引き寄せるものでなければならない。

USPの代表例としてよく使われるのは、ドミノ・ピザの「できたてのピザを30分以内にお届けします」という売り文句です。

ピザの宅配事業者は多数ありますが、ドミノ・ピザは他のピザ業者とは異なり、スピードを最優先にしてアツアツのできたてピザを届けることを顧客と約束しました。

さらに、30分以内にピザが届かなかった場合には代金を払わなくてもよいともいいました。

ともかく早くアツアツのピザを食べたい顧客にとっては、心に響くフレーズだといえるでしょう。

このUSPを個人に当てはめて、「パーティーなどで、自分が他人といかに違うか?私はあなたの役に立ちます!とアピールするために、他人との差別化を行ないなさい」と多くの人脈本は説くわけです。

もちろん、USPの重要性については私も同意します。

とはいえ、そう聞いたとき、多くの方は「自分の強みなんてないよ……」と落胆してしまうのではないでしょうか。

ご安心ください。

これから説明していく「人脈ネットワーク」構築と、このUSPは何の関係もありません。

ここで紹介するネットワーク理論(分析)という学問は、人と人とのつながり方、つまり、その関係性自体が重要であると考えるのです。

逆にいえば、その人に属する特徴や能力などは関係ない、ということです。

重要なことは「あなたは他人とどのような付き合い方をすればよいのか」ということであり、そこであなたが素晴らしい人かどうかということは、まったく関係がありません。

一例だけ挙げておきましょう。

たとえば、あなたの会社が他社のある人物にアプローチしたいと考えていたとします。

そのときもし、その人物があなたの大学時代の同級生だったとしたら?たとえ社命を伝えなければならないとしても、他の社員よりも気軽にあなたはその人物にアプローチできるはずです。

そうした役割の人のことを、ネットワーク理論では「ブリッジ(橋)」と呼びます。

ブリッジの力については第2章で詳しく説明しますが、もしあなたがブリッジというポジション(位置)にいれば、それだけであなたはあなたの会社にとって欠くことのできない人になるはずです。

繰り返しますが、そこであなたが優秀かどうかということは、まったく関係がありません。

なぜなら人脈ネットワークにおいては、あなたの立ち位置こそが、あなたの価値を高めてくれるからです。

すでに手にしている資産を活用せよ

もう一つ、「人脈」の特徴を述べておきましょう。

人脈というからには「そもそもたくさんの名刺をもっている人、人間関係が豊かな人でなければスタート地点にすら立てないのではないか」と思う人もいるかもしれません。

しかし、どれだけ多くの人を知っていても、それがビジネスに結びつかないのであれば、ここでいう人脈とは何の関係もないのです。

もちろん、人として魅力がある、あるいは人気のある著名人ということなら友人が多いのは当然でしょうし、それ自体はよいことでしょう。

とはいえ、有名人はすべからくビジネスがうまくいっているかといえば、そんなことはありません。たとえば、かつては一世を風靡したのにいまでは……というテレビ番組はすっかり定番です。

つまり、そこで人脈の人数は関係ないのです。

大切なのは、信頼感をお互いに抱くことができ、仕事を一緒に進められる、自分の仕事を頼める、自分の知人をその人に紹介できるというような人脈を築くことであり、それは、あなたのいまの人脈を無理に増やすことではありません。

逆にいえば、すでに多くの人はそうした大切な人脈をもっているにもかかわらず、それを活かせずに宝の持ち腐れになっている可能性もあります。

自分の人脈をビジネスに活かすというと、何だか友だちからお金を巻き上げる、というようなネガティブさを抱くかもしれませんが、そうではありません。

お互いがメリットを得られるように助け合うというイメージが近いでしょう。

たとえば、今度家を建てたいけれど、誰に相談したらいいだろう?と思ったとき、信頼できる建築士の友人がいれば、どんなに心強いでしょうか?

あるいはそうした人を直接知らなくても、適任者を知っている友だちがいれば、きっと友だちはあなたにその建築士を紹介してくれることでしょう。

そのとき、あなたは建築士の人となりや評判をもう知っているわけですから、安心できるわけです。

何も事前情報がない状態よりも、桁違いの信頼度があるはずです。

その一方、じつはそのタイミングで、あなたも評価されているのです。

その友人があなたの存在を真剣に受け止めてくれていて、たとえば資金面でもある程度は信頼できると考えていないかぎり、自分のリソース(資源)である建築士を紹介してくれることはありません。

あなたがいつも誰かに借金をしていて、自身も何度か「お金を貸してくれ」といわれたことがある人なら、怖くて紹介などできないはずです。

そこで何か不測の事態が起こった場合、あなただけではなく、その紹介者の評価も一緒に下がってしまうからです。

私はよく自分の友人を別の友人に紹介します。

それはまさにいま述べたように、お互いに助け合う関係を築き上げたい、と考えているからで、「三人寄れば文殊の知恵」という諺があるとおり、人と人が出会うことで化学反応が起こり、その化学反応が人を成長させると実感しているからです。

たとえば楽天の三木谷浩史社長と私は興銀時代、同じ投資銀行グループで働いていました。

その三木谷氏をマネックス証券の松本大社長に紹介するため、ホテルオークラでランチをしたことがあります。

当時、楽天は上場前でしたし、マネックス証券は存在すらしておらず、松本氏が青写真を描いているという段階でした。

松本氏からその場で事業の構想をお聞きした記憶が、鮮明に残っています。

いまから振り返るとすごい人たちを引き合わせたものだと思いますが、私は別に彼らから恩恵を得たかったわけではありません。

しかし、はるか昔にそうした経験があるからこそ、彼らが超一流の経営者になったいま、結果として自分にとってもビジネス上のポジティブなフィードバックがある、ということだと思います。

世界のトップスクールだけで教えられている最強の人脈術
平野敦士カール(ひらのあつしカール)
アメリカ合衆国イリノイ州生まれ。経営コンサルタント。株式会社ネットストラテジー代表取締役社長、社団法人プラットフォーム戦略R協会代表理事。東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行、NTTドコモiモード企画部担当部長をへて、現職。楽天オークション元取締役、タワーレコード元取締役、ドコモ・ドットコム元取締役。著書に、『プラットフォーム戦略』(共著、東洋経済新報社)、『カール教授と学ぶビジネスモデル超入門!』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『カール教授のビジネス集中講義シリーズ「経営戦略」「ビジネスモデル」「マーケティング」「金融・ファイナンス」』(朝日新聞出版)などがある。
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