平成29年度税制改正の大綱において、広大地の評価について、その評価方式及び適用要件を見直すこととされました。
改正案では、現行の広大地の評価(評価通達24-4)は廃止され、これに代わるものとして、地積規模の大きな宅地の評価(同通達20-2)が新設されるものとされています。これにより、現行の広大地について、改正以後は、各土地の個性に応じて形状・面積に基づいて評価することとなります。「地積規模の大きな宅地」の判定については、地区区分や都市計画法の区域区分等に応じて、適用要件を明確化しています。
なお、適用開始時期は平成30年1月1日以後の相続、遺贈または贈与とされ、経過措置は設けられておりませんので注意が必要です。
1.現行制度における広大地評価
広大地(以下①から③の適用要件に該当するものをいう)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価します(評価通達24-4)。
①その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地であること
②開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものであること
③大規模工場用地に該当するものでないこと及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものでないこと
1-1.その広大地が路線価地域に所在する場合
その広大地の面する路線の路線価に、評価通達15((奥行価格補正))から20-5((容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価))までの定めに代わるものとして次の算式により求めた広大地補正率を乗じて計算した価額にその広大地の地積を乗じて計算した金額
広大地補正率※=0.6-0.05×広大地の地積/1,000㎡
※下限0.35
1-2.その広大地が倍率地域に所在する場合
その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を路線価として、上記1-1.に準じて計算した金額
2.改正案
2-1.改正案及び評価の算式
評価通達24-4は廃止され、これに代わるものとして、同通達20-2((地積規模の大きな宅地の評価))を新設します。
地積規模の大きな宅地の評価
地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上、それ以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地で、一定のものを除く)で、一定の地区(評価通達14-2((地区))の定めにより普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区として定められた地域)に所在するものの価額は、評価通達15((奥行価格補正))から前項までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じて、以下の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価します。
算式
規模格差補正率=(A×B+C)/地積規模の大きな宅地の面積(A)×0.8
上記算式中のB及びCは、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じ、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
(注1)上記算式により計算した規模格差補正率は、小数点以下第2位未満を切り捨てます。
(注2)「三大都市圏」とは、次の地域をいいます。
イ)首都圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯
ロ)近畿圏整備法に規定する規制と市区域または近郊整備区域
ハ)中部圏開発整備法に規定する都市整備区域
2-2.該当地が倍率地域に所在する場合
倍率地域に所在する地積規模の大きな宅地の評価については、本項本文の定めにより評価した価額が、その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額を路線価とし、かつ、その宅地が普通住宅地区に所在するものとして、20-2((地積規模の大きな宅地の評価))に準じて計算した価額を上回る場合には、20-2に準じて計算した価額により評価します。
3.改正案の効果と影響
今回の改正案では、算式が変わったため個々の納税者にとって不利となる場合も生じます。しかし、一方では適用要件が明確になったことで、これまで適用できなかった宅地等であっても、新たに「地積規模の大きな宅地の評価」の対象となるものが増えることが想定されます。
これらを併せ考えると、全体としてバランスが図られた改正であるといえます。
(提供:チェスターNEWS)