富裕層を中心に、プライベートバンクに注目が集まっています。「普通の銀行と何が違うの?」と思われるかもしれませんが、プライベートバンクならではの魅力や強みで顧客を惹きつけています。プライベートバンクについて正しく知り、うまく活用する方法を考えることは有益です。

プライベートバンクの魅力とは

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(写真=William Potter/Shutterstock.com)

プライベートバンクは、もともと経営に無限責任を負うプライベートバンカーが経営する銀行を指していました。スイス発祥の銀行の一形態として知られ、主な業務は資産運用・資産保全で、顧客は日本円で1億円以上の金融資産(不動産を除く)を持つ富裕層が中心です。

しかし現在では、総合的な資産管理を支援することを目的とした金融機関が提供する富裕層向けの金融サービスを指して使われることが多くなっています。

そんなプライベートバンクの魅力とは、顧客それぞれに合った「オーダーメード」とも言えるサービスを提供してくれること、さらに長期的な関係構築ができることです。

お金の事情は、収入や資産、家族関係、年齢などによってさまざまです。資産運用の目的も同じではありません。プライベートバンクは、そんな顧客の相談にじっくりと耳を傾けてくれます。

そして、子どもや孫の留学を含む教育費や結婚資金、自身の老後資金、保険、相続、税金など多岐に渡り、顧客の事情や考えを理解したうえで相談に乗ってくれます。つまりご自身の「人生設計」を考える上で、資産運用面での心強いパートナーというわけです。

プライベートバンクの利用方法と選び方

プライベートバンクの利用方法ですが、日本国内であれば、メガバンクなどのプライベートバンキング部門に口座を開くことでサービスを受けることができます。

一方、海外のプライベートバンクはどうでしょうか。日本プライベートバンク協会は、ホームページで海外のプライベートバンクの選出基準について説明しています。経済協力開発機構(OECD)加盟国または同程度の国のプライベートバンクを選ぶのが良いとしており、さらにそれぞれの国の税制などを含めて分析する必要があると指摘しています。

中でも欧州のプライベートバンクは信頼度が高いとされ、金融先進国と呼ばれるスイスに加え、リヒテンシュタインやルクセンブルクなどのプライベートバンクを高く評価する専門家も多くいます。ただしスイスのプライベートバンクについては、このところ「守秘性」に陰りが出てきているとの指摘もあります。

これに対してアメリカのプライベートバンクは、守秘性の高さや利便性、手数料などのコストが低いといった実用性が評価されています。とりわけ守秘性の評価が高く、日本プライベートバンク協会も守秘性についてアメリカのプライベートバンクを推奨しています。

別の選択肢としては、シンガポールがあります。東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で目覚ましい成長を実現したシンガポールは、「アジアのスイス」を目指す金融センターであることから、法制度やインフラ、サービスなどで評価が高まりつつあります。

しかし最近では規制強化の動きもあり、最低預け入れ金額が300万ドルから500万ドル以上などとされるケースもあります。また、日本人富裕層の対応に業務を特化させていた日本人スタッフの数を減らしている金融機関もあります。

海外でプライベートバンクを利用する場合には、それぞれの国の状況や金融機関ごとの特徴をよく分析することが必要です。

プライベートバンクを利用する上での前提条件

プライベートバンクで口座を持つためには、その前提となる条件があります。まず問題になるのは、どの程度の金融資産を保有しているかということ。

プライベートバンクによって違いはありますが、一例として、不動産を除いて1億円以上または100万ドル以上の金融資産を有することが基準となっているケースが多いです。しかし、数億円あるいは数十億円が最低ラインというケースもあるなど、条件はさまざまであることは覚えておきましょう。

信頼性や相性、人生設計も加味して選ぶという視点

顧客の立場として考えると、それぞれの金融機関のプライベートバンクのサービスとの相性も重要なポイントになるでしょう。大事な資産の運用を任せるわけですから、その金融機関が信頼に値するかを確認するとともに、本人の意向に十分な理解を示してくれるかどうかも判断基準となります。また海外のプライベートバンクを利用する場合、英語などの語学力が壁となる可能性もあることにも留意すべきです。

大事な資産の運用方法は、人生における重要なテーマです。ご自身の資産運用や人生設計と照らし合わせながら、プライベートバンクの利用を検討したいものです。 (岡本一道、金融・経済ジャーナリスト / d.folio